Zero−rating(ゼロ・レーティング)

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Zero−rating(ゼロ・レーティング)

ゼロ・レーティングとは、従量制の通信サービスの課金対象から特定のサービスやアプリケーションを除外するもので、LINEモバイルなどでは「カウントフリー」と呼んでいます。

LINEモバイルの場合は、LINE、Twitter、Facebookという三つのサービスで発生するデータ通信料が非課金となっています。FREETELは、LINE、Whatsapp(アメリカ)、WeChat(中国)のデータ通信料を2016年3月から、ポケモンGOにかかる通信料を2016年9月から無料にしています。ポケモンGOについては1年間の期間限定です。

アメリカではT-モバイルがポケモンGO関連やMusic Freedomという音楽配信サービスの利用に係る通信トラフィックをデータ通信量に加算しないサービスを行っていますし、YouTubeやNetflixなどの主要動画サービスをゼロレーティング化する「Binge On」というサービスも行っています。AT&TもケーブルTVサービスの「DIRECTV NOW」をゼロレーティング化しています。

また、途上国のインターネットにつながっていない貧しい地域の人たちに、インターネットアクセスを提供することを目的に進めているFacebookのFree Basicsのような特定のアプリやサービスへのアクセスを無料で提供するものも、ゼロ・レーティングと呼んでいます。こちらの方はネット利用をこれまで行ったことがない層が主な対象と言えます。OTT(Over The Top)事業者が携帯事業者との共同事業として行っていることが多いようです。

2017年はIoT版のゼロ・レーティングが出てくるだろうと言われています。すでにそうしたIoT向けの低価格のサービスの動きがあります。京セラコミュニケーションシステムは2016年11月に2017年2月からIoT向け低価格通信サービスの提供を始めると発表しています。仏SIGFOXとの提携で、無料ではありませんが、価格は1デバイス当たり1日の通信回数が2回以下の場合、年額で100円とのことです。

DPI (Deep Packet Inspection)と通信の秘密

ゼロ・レーティングを実現するには、課金するものとそうでないものを区別しなければなりません。通信する時間や場所を識別するCDR(Call Date Record)、通信するアプリケーションの種類を識別するSPI(Shallow Packet Inspection)、Shallow とは「浅い」という意味で、通信の本体までは監視しませんが、DPI (Deep Packet Inspection)という手法は、Deep(深い、詳細に)というように、IPパケットの中身を深く検査するもので、プロトコル番号、ポート番号、ベイロードまでを検査します。このDPI((Deep Packet Inspection)が「通信の秘密」の侵害にあたるのではという議論があります。

DPI (Deep Packet Inspection)は、サードパーティー製のアプリケーションの場合は、パケット通信量をカウントしないアプリケーションとして特定することが難しいという指摘もありますが、技術の進歩で現在のDPI機器は1000以上のアプリやサービスのデータ通信を識別できるとも言われています。

「通信の秘密」について法規上では、電気通信事業法第4条に「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」とあるほか、日本国憲法第21条第2項には「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」とあります。また、秘密の具体的な事柄は、総務省のQ&Aに、通信内容だけでなく「通信当事者の住所、氏名、通信日時、発信場所等通信の構成要素や通信の存在の事実の有無を含む」とあります。通信の内容や通信している人がだれかということはもちろんのこと、通信があったかどうかも知ることはこの「通信の秘密」に抵触することになります。ただ、郵便局が配達のため個人の住所を知るのは、「正当業務行為」として認められているように、DPIによるアプリケーションの特定も「正当業務行為」とみなす見解もあるようです。

ネットワーク中立性

米連邦通信委員会(FCC)が、大手通信事業者「ゼロ・レーティング」提供の調査を終了するというニュースが2017年2月初めにありました。トランプ大統領によってFCCの新委員長にパイ(Ajit Pai)氏が新しく就任したことが影響しているようで、ニュースでは、「ネットワーク中立性規則」や低所得世帯向けのブロードバンドおよび電話サービスに補助金を支給する「Lifeline」プログラムなどが撤廃されるのではと報道していました。

「ネットワーク中立性規則」とは、ブロードバンド事業者が特定のコンテンツ、アプリケーション、サービス、デバイスへのアクセスを遮断したり、トラフィックを減速させたり、有料トラフィックを優先接続させたりすることを禁ずるものです。この原則の背景には、データに優劣をつけると自由競争が阻害され特定のプレイヤが有利になるということ、情報経路が選別されると表現の自由が保てないということ、革新的サービスが出現しにくくなるということ、インターネットへの自由なアクセスができなくなるということなど様々な懸念があるようです。

ゼロ・レーティングの対象となるコンテンツやアプリケーションの選択が携帯電話事業者によって恣意的に行われることはネットワーク中立性に反するとして、インドでは2016年にゼロ・レーティングを禁じるルールが定められました。チリ、スロベニア、イスラエル、ブラジルなどでもゼロ・レーティングは規制されているそうです。

アメリカでも消費者保護団体や権利擁護団体などがゼロ・レーティングに反対するなど、ゼロ・レーティングには賛否があり、FCCが情報収集を行っていました。しかし、前述のように政権交代によってその調査が打ち切られることになったわけです。

zerorating_002_R(IP化の進展に対応した競争ルールの在り方について ー新競争促進プログラム2010―  IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会 より)

通信の公平性

日本でのゼロ・レーティングに関する論議は、中立性よりも「通信の公平性」の方が問題点として取り上げられることが多いようです。

電気通信事業法第6条に「電気通信事業者は、電気通信役務の提供について、不当な差別的取扱いをしてはならない」という規定があります。特定のサービスやアプリケーションの通信を優遇するゼロ・レーティングはこの規定に反するのではないかというわけです。

しかし、この法律自体は、まだネットのない時代に電話を想定して作られたものだからゼロ・レーティングには適応されないし、電気通信役務は、電気通信を利用して提供されるサービスであって、その途中のMVNOが提供する特定サービスやアプリケーションはそれには該当しないという考えもあるようです。
ただ、利用者の負担の公平性という観点から見れば、ゼロ・レーティング分のコストの負担を誰がするかによっては、利用者間に不公平が生じるという意見もあります。

zerorating_001_R(IP化の進展に対応した競争ルールの在り方について ー新競争促進プログラム2010―  IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会 より)

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