Passive Wi-Fi

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Passive Wi-Fi

Passive Wi-Fiは、アメリカのワシントン大学Shyam Gollakota、Joshua R. Smith博士の研究グループが開発したWi-Fiに関する技術です。Passive Wi-Fiはデータ伝送速度が11Mbps、伝送距離は最大約20mとのことですので、「IEEE802.11b」に相当します。そして、極めて消費電力が少なく、発表では「端末の無線送信時の消費電力を通信速度に影響を与えることなく最大で従来の1万分の1程度にすることができる」としています。

ではどれぐらい消費電力が少ないのかというと、論文では「既存のWi-Fiチップセットよりも10000分の1、Bluetooth LEとジグビーよりも1000分の1という低い消費電力」とあり、下表の数値が示されています。表ではデータ伝送速度が11Mbpsの場合にトータルパワーが59.2μWとなっています。Wi-Fiでおよそ300mWですから、かなりの省電力といえます。

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(PassiveWi-Fi: BringingLowPowertoWi-FiTransmissions http://passivewifi.cs.washington.edu/files/passive_wifi.pdf より)

ちなみに、各規格のおおよその消費電力は下図のようになっています。

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(「Bluetooth LE入門スマホにつながる低消費電力無線センサの開発をはじめよう: スマホにつながる低消費電力無線センサの開発をはじめよう」鄭立著 秀和システム より)

Ambient Backscatter

今回開発されたPassive Wi-Fiは一般的なWi-Fiとは少し異なり、飛び交っているWi-Fiの電波を「反射」させることで通信を行うという技術です。周囲(ambient)の電波を反射(backscatter:後方散乱)することでデータを表現するという意味で「Ambient Backscatter」とか単に「Backscatter」と表現しているようです。

このグループは、2013年にデバイスを通じて、テレビや携帯電話、時計などで使用されているものと同種の通信を、バッテリーなしで行う通信システム「Ambient Backscatter」を開発しており、当時の実験では、屋内で約46センチ、屋外で76センチの距離で、1kbpsの伝送速度を実現しています。また、2014年には約2メートルの距離に最大1kbpsの速度を出すことができる「Wi-Fi backscatter」の開発を行っています。そうした中で、今回は伝送速度が11Mbps、伝送距離が20mと飛躍的に技術が向上したことになります。

「Backscatter」という技術そのものはそれほど目新しいものではなく、これまでもこの技術を利用した開発が行われてきています。

2011年にルネサス エレクトロニクス株式会社がBackscatter技術を用いて消費電力5μWという微弱な電力でBluetoothや無線LANなどの一般的な無線通信規格対応機器に約1mの距離でデータ送信できる無線端末を試作しています。

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(http://japan.renesas.com/press/news/2011/news20110614.jsp より)

2015年にスタンフォード大学のDinesh Bharadia氏らのグループが、「BackFi: High Throughput WiFi Backscatter」という論文で同様の開発を行っています。(http://conferences.sigcomm.org/sigcomm/2015/pdf/papers/p283.pdf より)

ただ、これまではデータ伝送速度、伝送距離、Wi-Fiとの互換性などで課題がありましたが、今回は一昔前のWi-Fi規格とはいえ、速度、距離、互換性のいずれにおいてもかなり実用の範囲に近づいたという点で注目されているのではないでしょうか。

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(PassiveWi-Fi: BringingLowPowertoWi-FiTransmissions http://passivewifi.cs.washington.edu/files/passive_wifi.pdf )

 

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