IEEE802.11ax

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IEEE802.11ax

無線LAN機器の普及とともに、通信できる時間の減少、パケットの衝突などの通信効率の低下といった問題の発生が心配されています。そこでこうした問題の解決のため、ユーザーごとあるいはエリアごとのスループットの向上を図る新たな干渉回避、周波数選択技術の次世代無線LAN標準規格がIEEE802.11axです。

現在、IEEE802.11ax TaskGroup(TG)で策定が進められており、「2018年に正式版のリリース」とか「規格の承認は2019年以降」「2019年5月に標準化が完了」などいろいろ情報があるようです。日本としては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、競技会場などの特定の場所で無線通信の利用者の集中が予想されるだけに、通信接続性能の向上やエリアスループットの確保の有効な技術として、できるだけ早い策定が望まれるところかもしれません。

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(無線インフラ・サービスの動向について 平成28年1月http://www.soumu.go.jp/main_content/000397391.pdf より)

少々古い資料ですが、平成27年3月に特許庁から出された「平成26年度 特許出願技術動向調査報告書(概要)次世代無線LAN 伝送技術」の中に、2007年~2012年に出願されたIEEE802.11ax 技術と関連のある技術区分毎の国籍・地域別特許件数という資料があります。それを見ると、下記の通り日本が他の国よりも特許出願数が多いことが分かります。そのことは、日本が標準化に向けて優位に活動を進めていける可能性があるとも言えますが、実際には中国HUAWEIが主導的な役割を果たしていると言われています。

ax2017_002_r(平成26年度 特許出願技術動向調査報告書(概要)次世代無線LAN 伝送技術 より)

次世代無線LAN規格802.11axの標準化がTaskGroup(TG)で始まったのは2014年5月ですが、その1年前から新たな規格に求められる機能についてHigh Efficiency Wireless LAN StudyGroup(HEW-SG)の活動が開始されています。

そこでは1GHzから6GHz帯を11ax 標準化スコープとすることや、AP が高密度に設置されたエリアにおいてもユーザースループットの4倍以上の実現、従来端末との後方互換性確保などを定めています。これらに基づいて、現在、MAC、PHY、Multi-User、Spatial Reuseの4つの専門家班(ad hoc group)で標準化の検討が行われています。

802.11axでは、物理層・MAC層ともに大幅な機能追加がなされるとのことです。OFDM シンボル長を従来の2倍から8倍程度に拡張、FFTサイズは拡大されサブキャリヤ間隔は狭くなり78.125 kHz に、さらに、下りリンクおよび上りリンクでのOFDMA(※3)の適用、上りリンクMU-MIMO(※4)の適用、DSC(Dynamic Sensitivity Control)(※5)の適用などがあります。まとめたのが下記の表です。

ax2017_003_r(日本ナショナルインスツルメンツ株式会社 ホワイトペーパー「高効率な無線LAN規格、IEEE 802.11axの概要」http://www.ni.com/white-paper/53150/ja/ より)

(※1)スループットは単位時間あたりの処理能力を指します。通信回線の場合は単位時間あたりの実効転送量などを意味し、通信のスループットは、ビットレート(bps)で表されます。
(※2)スコープ(scope)は「視野」や「範囲」といった意味です。あるプロジェクトで実施すべき内容の範囲、プログラム・ネットワークなどでは動作などの対象となる範囲・領域を指します。
(※3)OFDMA(Orthogonal Frequency-DivisionMultiple Access)は、日本語では直交周波数分割多元接続と言われています。同一の周波数の電波を複数のユーザーで共有する「多元接続」方式の一種です。電波資源を周波数とミリ秒単位の時間で細かく分割して、ミリ秒単位で電波資源の再配分を繰り返す仕組みにです。多元接続にCDMA(code division multiple access) という方式もありますが、これは複数のユーザーの信号に異なる「符号」を付けて、同一の周波数の電波に複数ユーザーの信号を合成して載せ、受信側は、自分の「符号」の付けられた信号を取り出すというものです。音声通話用に開発された技術です。
(※4)MU-MIMO(Multi User MIMO)は複数のユーザへ同時に送信する技術で、802.11ac Wave2で新たに実装された技術です。それ以前のIEEE802.11nや802.11ac Wave1ではSU-MIMO(Single User-MIMO)で、APと端末は1対1の関係でした。802.11ac Wave2では最大4台の端末と同時に通信が可能になりました。IEEE 802.11axでは、最大8台の端末に対するMU-MIMO伝送が可能となります。
(※5)DSC(Dynamic Sensitivity Control)は日本語では「動的信号感度制御技術」とも言われています。キャリアセンス閾値を環境に応じて適切に切り替えることで面的周波数利用効率を高めるものです。

「802.11axに対応したチップやアクセスポイント」が「CES 2017」に登場するのではという報道もありましたが、「CES 2017」は1月8日まででしたがどうだったのでしょう?最新動向が気になるところかもしれません。

参考文献
・無線LAN 関連システムの国際標準化動向:通信ソサイエティマガジン No.38 秋号 2016
・インターネット白書2016 第5 部製品・技術動向
・無線インフラ・サービスの動向について 平成28年1月:総務省
・ますます拡大するWi-Fiの現状とこれから~IoT、4K・8Kまで広がる活用領域~2016年5月26日  無線LANビジネス推進連絡会 小林 忠男
・グローバルスタンダード「最前線次世代高効率無線LAN規格「IEEE 802.11ax」の標準化動向」:NTT技術ジャーナル 2016.11

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