長距離無線LAN
日本電業工作が、長距離無線LANシステムを使って海上20kmの伝搬試験を実施し、無線伝送最大伝送レート13Mbpsで映像伝送などの運用に成功したというニュースが最近ありました。
室内などで使っている無線LANはせいぜい数十mですが、20kmも届く無線LANとはどういうものなのでしょうか?
無線を使ったネットワーク
無線LAN(Wireless Local Area Network)は無線を使ったネットワークの一つで、他にも通信可能な距離によって下図のような規格があります。
Bluetoothなどのあまり電波の届かない無線PAN(Wireless Personal Area Network)、WiMAXなどの数kmから数十kmの範囲で通信可能な無線MAN(Wireless Metropolitan Area Network)、さらに数十km以上の無線WAN(Wireless Wide Area Network)や無線RAN(Wireless Regional Area Networks)などです。
(http://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/507/Default.aspx より)
無線LANはIEEE802.11委員会でその通信規格が策定されており、業界団体として「Wi-Fi Alliance」があります。
IEEE 802.11j
長距離無線LANで使用されているのは、4.9GHz帯でIEEE 802.11jとして標準化されているものです。あまり聞きなれない規格ですが、米国電気電子技術者協会(IEEE)によって策定された無線LANの規格の1つです。
IEEE80211b | IEEE80211g | IEEE80211a (W52/W53/W56) | IEEE80211n | IEEE80211j | |
利用周波数帯 | 2.4GHz | 2.4GHz | 5.2/5.6GHz | 2.4/5.2/5.6GHz | 4.9/5GHz |
変調方式 | DSSS/CCK | OFDM | OFDM | OFDM | OFDM |
最大伝送速度 (理論/実効) | 11Mbps/約5Mbps | 54Mbps/約20Mbps | 54Mbps/約20Mbps | 300Mbps/約100Mbps | 54Mbps/約20Mbps |
最大伝送距離 | 約10m | 約10m | 数10m | 数10m | 数km |
チャンネル数 (設定/同時利用可能) | 14ch/4ch | 13ch/3ch | 19ch/19ch | 2.4GHz:14ch 5.2GHz:19ch | 7ch/7ch ※地域による |
チャンネル幅 | 20MHz | 20MHz | 20MHz | 20MHz or 40MHz | 20MHz |
屋外利用 | ○ | ○ | △※W56のみ可 | △※周波数帯による | ○※申請制 |
接続対象 | 無線局・端末 | 無線局・端末 | 無線局・端末 | 無線局・端末 | 無線局 |
((株)高文http://www.takabun.co.jp/wireless/wireless03/ より)
もともとこの周波数帯は、データ通信利用としては認められていませんでした。しかし、2002年に電波法が一部改正されて4.9~5.0GHz と 5.03~5.09GHz を屋外でも利用可能として開放されたのをきっかけに、IEEE802.11j 規格として 2004 年 11 月に策定されたものです。802.11aで規定されたOFDM方式を用いる物理層をベースに、日本の電波法で定められている送信出力、チャネル調整、スプリアスエミッションレベルなどの基準を満たすように定められています。
当時、この周波数帯の利用に関して欧米の間で統一が図られていなかったため、先に使用可能となった日本向けに優先的に仕様を「IEEE802.11j」として決めました。なお、「j」は802.11ワーキング・グループのタスク・グループj(TGj)からきていてJapanの頭文字ではあありません。
IEEE802.11jには電波法上、免許・登録を必要するものと必要としないもののがあります。免許・登録を要する IEEE802.11j 規格のものは出力が通常の無線 LAN に比べて大きく(空中線電力が最大250mW以下)、遠距離通信用です。免許・登録と言っても、要件審査のみで技術検査はありません。短期間で無線局の開設が可能となっています。
(総務省高速無線LAN技術等を活用した観光情報支援システムに関する調査検討会 報告書より)
802.11jの使用する4900MHz~5000MHzの帯域には、現在干渉対象となるシステムがありません。従って電波干渉が殆どなく、高品質で安定した通信ができます。さらに、無線機を構成するチップセットは802.11aと同じハードウエアが使えますので、デバイスなどの新規開発が不要です。
(執筆中)