ここでは、特に熱画像カメラの専門ではないシステムエンジニアの目から見た熱画像カメラの性質を解説します。
とある開発の打診があり1週間ほど熱画像カメラ(サーモカメラ)を評価していたことがありました。これはその時得られた知見です。主に評価させていただいたのはFLIR社の中程度のランクの熱画像カメラです。
目次
サーモグラフィ(熱画像カメラ)の基本的な使い勝手
1.得られる生の値は各画素に温度値の値が入った画像です
表示のダイナミックレンジを後からビューワで設定して、観察対象の観測がしやすいようにして観察します。デジカメで撮影する場合のRAWファイルとbmpファイルとの違いのようなものです。
2.温度値はドリフトするため条件を統一するには撮影前にキャリブレートが必要です
設定によっては一定時間間隔でキャリブレートが自動的になされるばあいがあります。温度の時間的な推移を記録する必要がある場合は、記録したい時刻になったらまずはキャリブレートをしてから撮影を行うべきです。
3.したがってレファレンスとなる被写体と一緒に撮影するべき場合があります
温度の測定を行いたい場合は、基準となる、温度のわかっている物体が撮像領域内に写るようにする必要があります。
そのような使い勝手のもので、人体の温度測定をどこまでできそうかを検討していました。
人体はサーモカメラでどのように見えるか?
夏物の半そでの衣類を着ている様子を撮像したところです。肌の露出しているところは赤っぽく(高い温度)に映り込み、衣類の隅っこや髪の毛は環境とあまり変わりません。頭髪でも、少しめくって内側の付近は下図のように赤っぽく映ります。
衣類ごしだとどのように見えるのか?
衣類が肌に近いと体温が移って赤っぽく見えますがこれは薄手の衣類ではかなり急激に変動します。例えば、下図のような姿勢をとっていたとして、
次の瞬間にこのような姿勢に移った場合、
胸の中心の箇所が赤いい色に変化しているのが見て取れると思います。このように衣類の温度は変動します。
衣類の厚みごとにどのような見え方になるか見てみると、この厚手だと、
この程度で、下記の厚み(1枚のみ着ている状態)だと、
この程度で、脱いだ状態だと、
このくらい赤くなります。