Cyborg Insects(昆虫サイボーグ)

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昆虫サイボーグ

2016年8月7日付けの朝日新聞に昆虫と機会が融合した「昆虫サイボーグ」の記事が載っていました。シンガポール南洋理工大のグループが、オオツノカナブンの背中に電子回路や充電式電池を載せ、無線でドローンのように自由に操作さすることに成功したという昨年3月の発表についてその内容を紹介し、現在の研究の状況を解説した記事です。

半導体回路の小型化と微細加工技術の進歩によって、とても小さな飛行ロボットを作る研究が以前から盛んに行われていました。オランダのデルフト工科大学では2008年に重さ3gの翼長100mmの「デルフライ・マイクロ(Delfly Micro)」を発表しています。ハーバード大学のマイクロロボティクス研究所は、重さ0.06gの昆虫ロボットを発表しています。
しかし、昆虫ロボットには長時間稼働させるだけの小型電池がないという問題がありました。そんなことから、生きた昆虫を飛行ロボットとして利用するというアイディアが注目されるようになってきたようです。昆虫は自分自身の力で飛行し、昆虫の神経筋肉系に埋め込まれた回路に飛行の命令を出すことで操るいわゆる昆虫サイボーグです。

昆虫サイボーグの研究が盛んになったのは、アメリカ防総省国防高等研究事業局(DARPA)が2006年に公募した研究計画HI-MEMS(Hybrid Insect Micro-Electro-Mechanical Systems)によると言われていますが、それ以前から東大先端研では「生物-機械融合システム研究」としてよく似た研究が行われていました。

DARPAのHI-MEMSプロジェクト

2009年にカリフォルニア大学バークレー校の研究グループは、生きたカブト虫の脳と筋肉に6つの電極を接続し、無線回路、マイクロコントローラ、バッテリーに信号を送る回路を組み込んだモジュールを取り付け無線制御することに成功しています。

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(http://www.infiniteunknown.net/2012/04/17/darpa-hybrid-insect-micro-electromechanical-systems-hi-mems/ より)

ミシガン大学は2008年にカナブンの離陸や着陸,上下左右への飛行方向の変更などといった飛行の制御に成功しています。
ジョージア工科大学では、幼虫の蛾に小型マシンを埋め込んで、遠隔操作可能な成虫にまで育てることに成功しています。
ボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)の研究グループは、2008年に生きている蛾を生体超小型無人航空機として活用する研究に着手し、蛾の神経細胞に電極を埋め込むことにより蛾の羽ばたきを外部から自由に操作する実験に成功しています。
ミシガン大学工学部の研究チームは2011年に、昆虫の羽が振動するときの運動エネルギーを電気に変換することにより、昆虫の体に埋め込まれたセンサ(カメラ、マイク、ガスセンサなど)の電源として使うという実験を行っています。

日本の昆虫サイボーグ

大阪大学大学院工学研究科・森島研究室ではゴキブリの体液を使ったバイオ燃料電池を発表しています。昆虫の体内に電極を挿し込み、血リンパ中の糖分の酸化還元反応で発電を行う「imBFC」という技術です。最大電圧は0.75 V、電力は333μVになり、これまでの埋め込み型の昆虫型電池よりも強力とのことで、これによってゴキブリにセンサーを載せて調査が難しい狭い隙間や危険箇所の取得データを無線転送させるワイヤレスセンシングが考えられています。

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(東電記念財団ニュース№47 http://www.tmf-zaidan.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/04/news_vol47.pdf より)

東京大学先端科学技術センターでは、ロボットに匂いを検知するセンサーを取り付け、カイコガと同様の匂い探索行動を行なわせることによりそのアルゴリズムを検証するという実験が行われています。つまり、カイコの頭を体から完全に分離させ、頭はカイコ体はロボットというサイボーグ昆虫です。カイコガのような匂い源探索行動を実装したロボットが出来れば、災害救助、麻薬探知などに応用できると期待されています。

ロボット工学においては、昆虫を生体模倣(バイオミミクリー)の対象とした研究は数多く行われていますが、昆虫サイボーグは、生きた昆虫の行動を制御するメカニズムの開発だけであるため、バイオミミクリーより実用化が近いと言われています。

また、昆虫サイボーグの応用面としては、軍事、農地の監視(環境モニタリング)、原発などの人の踏み込めない場所の偵察、さらには潜伏しているテロリストや犯罪者の人数や個人を特定するということ、あるいは被災地で瓦礫の隙間に入り込み、生存者を捜索するということなど様々な用途が考えられています。
ただ、生物を「改造」して自在に操るという行為が倫理に反しているなどの批判もあります。

 

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