AIと無限の猿定理

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人工知能と哲学的問題

今、NHKのEテレでAIを取り上げた「人間ってナンだ?超AI入門」という番組が12回シリーズで放送されています。なかなか面白い番組です。第1回目は「会話」を取り上げていましたが、そもそも人工知能は人の発言をどこまで理解しているのか?理解しているようにふるまっているだけなのでは?といったことが話題になっていました。第2回目は「感じる」というテーマで、考える前に反応する人間のすごさが話題となっていました。3回目では,AIの創り出す作品が創造と呼べるのかということから創造性・発想するとは何かということが話題となっていました。

コンピュータの性能の向上と深層学習の技術の発展によって、人工知能を実現する試みは近年大きく進展しました。日常の会話の中にもAIということが頻繁にでてくるようになりました。一般にも認知されてきたAIですが、一方で、前述のNHKの番組のように、「知能」や「知性」とはそもそも何か、知能は人工的に実現可能なものなのか、AIは自我を持ちうるのかという古典的な哲学的問題について改めて語られる機会が増えてきているようにも感じます。

AIと思考実験

何をもってAIに知能があるとみなすのかというというとき、よく有名な思考実験(※1)が引き合いに出されます。例えば次のような思考実験があります。

・チューリングテスト

イギリスの数学者アラン・チューリングが発表した思考実験で、人間がチャットをする相手が人間かコンピュータかを判断できなかったときコンピュータには知能があるとするものです。

・中国語の部屋

アメリカの哲学者ジョン・サールが1980年に発表したチューリングテストに反論する思考実験です。
英語しかわからない人が、中国語の質問に中国語で答えることができる説明書があって,中国語の受け答えができたとしても中国語が分かるということにならないように、知能があるような受け答えができるかを調べるというチューリングテストに合格しても本当に知能があるかは分からないというものです。

・トロッコ問題

トロッコ問題は、暴走しているトロッコが、分岐点で一方の先には5人が、もう一方では1人の作業員が作業をしている中でどのような行動を取るべきかというものです。自動運転車が運転手を助けるべき、歩行者を助けるべきかということを考える際に取り上げられます。イギリスの哲学者フィリッパ・フットによって提起された倫理学に関する思考実験です。

・フレーム問題

人工知能の研究において必ず出てくる難問で、1969年にジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズが指摘したものです。有限の情報処理能力しかないAIには、現実に起こりうる世界の全ての問題を処理することはできないというものです。

・メアリーの部屋

オーストラリアの哲学者フランク・キャメロン・ジャクソンが、1982年の「Epiphenomenal Qualia」という論文で発表した思考実験です。
白黒の部屋で生まれ、白黒のテレビのみをみて育ち、生まれてから1度も色を見たことメアリーですが、神経生理学についての専門的な知識を持っており、色に関する情報がどのように神経を伝わり、脳に伝達され、目で赤い色を視認できるか熟知しています。マリーは視覚の経験からさらに何かを学べるのかという問題です。

(※1)思考実験(Gedankenexperiment, thought experiment)は、実際に実験を行わず、実験の対象、条件、測定などを理想化して頭の中で想像する実験です。

無限の猿定理

AIの書いた小説や絵画、音楽、映画の脚本などが話題になることがあります。そうしたとき、それは創作物なのか、AIの発想なのか、創造性とは何なのかということが議論となります。

AIと創造性の関係を考えるとき引き合いに出される思考実験に「無限の猿の定理(infinite monkey theorem)」があります。

「無限の猿の定理(infinite monkey theorem)」というのは、猿が「十分に長い(永遠に)」時間かけて、タイプライターを打ち続ける、あるいはAからZまで出るサイコロを振り続けたとすると、その内、シェイクスピアの作品が生まれるはずだというものです。
猿がランダムにタイプライターを打ち続けるとどんな文字列もいつかはでき、そうして書かれた猿のシェイクスピアは、猿の創造性によるものと言えるかというわけです。
2004年に確認されたコンピュータシミレーションでは、「シェイクスピアの作品『ヴェローナの二紳士』の冒頭と一致する19文字が打ち出しました。

アーティストは意図をもって作品を制作します。その限りにおいては創造性が表出されていると言えます。しかし、あまり意図もなく作品をいくつも作る中で、たまたまその中のある作品がヒットしたとすると、それはランダムにタイプライターを打ってシェイクスピアを書いた猿の行動とあまり違わないのではないかという指摘があります。

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