AIと創作物

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知的財産戦略本部

政府の政策会議「知的財産戦略本部」において、AIの創作物の著作権に関する検討が行われています。検討を行っているのは「知的財産戦略本部」の「次世代知財システム検討委員会」です。2月18日には第6回の会合が行われています。

ここでの協議の論点は大きく「新規ビジネス創出と知財制度(イノベーション創出と知財保護のバランス)」、「技術革新により新たに生じる情報の取扱い(AIによって生み出される創作物等の取扱いや3Dプリンティングによるものづくりのオープン化と知財制度)」「国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応(現実世界を前提とした既存の法制度での適用可能性や実効性の限界)」の3点です。

メディアでは特にAIによる創作物の著作権上の取り扱いの議論が注目されているようです。人工知能による創作物が、人間の創作物と質的に変わらなくなった時に、人工知能による創作物を知財制度上どのように取り扱うかということです。

検討委員会の初期には、「コンテンツが膨大になってしまい著作権制度が崩壊する」「全く人の手を介さないのは稀であり、AI 創作物を一括りにするのは疑問」「AI が人間より面白いコンテンツを作成できるようになったときのクリエーターのケアについても論じるべき」「AI 創作の前提となるビッグデータについて、日本がデータリッチになるようにすることも必要」「コンピューターによる自動生成物に対しては、動機付けのための仕掛けや権利は基本的には不要」など、様々な意見が出されていたようです。

(知的財産戦略本部 次世代知財システム検討委員会(第4回)配布資料参照)

現行の知財制度においては、AIの創作物について「人間の作った物が著作権保護の対象であり、それはデータを保護するということではなく、クリエーター、人を保護するということなので、AIが道具といえる範囲で作ったものは保護の対象となるが、そうでないと著作権では保護されない。」という理解のようです。その上で「AI創作物に権利を付与することの是非」「AI創作物に権利を付与する場合」などについて議論を進めているようです。さらに、3Dプリンティングによるものづくり革新と知財制度については、「知財権で保護されているものを3Dデータ化した場合」「知財権で保護されていないものを3Dデータ化した場合」「応用美術の取扱い」「プラットフォーマー」などについて検討を重ねているようです。

(知的財産戦略本部次世代知財システム検討委員会(第5回)配布資料参照)

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(AIによって生み出される創作物の取扱い(討議用)平成28年1月内閣官房知的財産戦略推進事務局資料―人による創作物とAI創作物の境界の考察― より)

AI創作物に著作権を認めると、ビジネスの面では次々に新しい創作物が世に出され活性化されるかもしれませんが、一方で人間の作品が凌駕され、創作活動が萎縮してしまうということや、クリエイターを守るという著作権保護の制度そのもの、さらに著作権ビジネスが崩壊するというリスクもあります。人間とAIの立場が逆転することも懸念されます。人の創造した作品が、AIによってすでに作られていた作品に似ているというようなことです。検討委員会では、このような創作物の権利保護、人間のクリエーター保護、コンテンツ産業の振興という3者をうまく満足させることの難しさが浮き彫りになっているようです。

AIの創作物の保護をめぐっては、賛成するにしろ反対するにしろ難しい問題が横たわっているようです。内閣官房知的財産戦略推進事務局の討議用資料にも、例えば、著作権と同等の保護を付与すると考えた場合、「権利のある創作物が爆発的に増える」ということ、一方、知財権が発生しないと考えた場合、「AIの関与を減らし人手をかけることになり、AIの利活用が進まなくなる」「権利があるように見える創作物が増加する」と言った懸念される問題が示されています。

今年度中には議論をまとめるとのことですが、今後の行方が気になるところです。

人工知能による創作の事例

〇Beyond the Fence

Beyond the Fenceは2016年2月22日より上映されるミュージカルです。このミュージカルは、ケンブリッジ大学の研究グループが、ゴールドスミス・カレッジが開発するソフトウェア(What-If Machine)を使ってあらすじなどを書き出し、スペインのコンプルテンセ大学が開発するストーリージェネレーターPropperWryterを使ってストーリーに深みを与えて仕上げたものです。さらに音楽はイギリスのダラム大学にある作曲コンピューターシステム(アンドロイド・ロイド・ウェーバー)を使っています。世界初のコンピューターが創作したミュージカルです。

〇きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ

公立はこだて未来大学の松原仁教授が中心となり、2012年9月から始まったプロジェクトで、作家星新一氏のショートショート作品を解析し、人工知能に面白いショートショートを創作させることを目指すものです。2015年9月に、同プロジェクトを通じて作成された作品を、第3回星新一賞に応募しています。

〇オルフェウス

Orpheus(オルフェウス)は明治大学教授・東京大学名誉教授の嵯峨山茂樹教授が開発したシステムで、入力した歌詞に合わせて自動で作曲し、合成音声で出力してくれるものです。

〇ラムス(lamus)

スペインのマラガ大学の作曲をする人工知能です。アルゴリズムによりわずか8分で楽曲を自ら作成します。すでに作曲された楽曲をオーケストラが演奏したり、それを収録したCDや音源の販売もされています。

〇Tailor

テイラーブランド社(米)が提供するサービスで、人工知能でロゴを自動的にデザインします。ロゴの文字や色、何をしたいか、ロゴのタイプ、デザインの好み、営んでいるビジネスの種類等の情報を入れると利用者に合ったロゴをわずか数分で生成します。

〇Narrative ScienceとAutomated Insights

ナラティヴ・サイエンス(Narrative Science)はシカゴ、オートメイテッド・インサイツ(Automated Insights)はノースカロライナ州ダーラムのベンチャーです。両社は、生データから自動的に記事を作成するプログラムを開発しています。ナラティヴ・サイエンス社は、数字の多い金融やスポーツのニュースを自動的に作成するAIを開発し、単なる数字の羅列ではなく、人情味のある書きぶりができるとのことです。また、オートメイテッド社の技術はAP通信などに使われ、企業が発表する業績情報をニュース記事として配信しているとのことです。

 

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