東ロボくんと読解力

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東ロボくん

そろそろ受験シーズンです。東大入試突破を目指して開発が進められてきた「東ロボくん」ですが、新聞などでは「東ロボくん、東大合格を断念」といった見出しで、「読解力」の不足が壁となったことを伝えていました。正確には「断念」ではないそうです。開発を全試験科目から重要な要素技術に絞り込み、論述試験は引き続き受ける方向とのことです。

このプロジェクトは、国立情報学研究所(NII)などが人工知能の可能性を探ろうと2011年から始めたものです。「東ロボ」では、2016年までに大学入試センター試験で高得点をマークし、2021年に東京大学入試を突破することを目標にしています。
下表はこれまでの模試での偏差値と合格可能性80%以上の大学の数です。

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(NII国立情報学研究所報道発表よりキビテク作成)

表を見ると、年度によってばらつきがありますが、数学や物理は進歩が見て取れます。しかし、英語と国語にはそれほど向上が見られないようです。5教科の偏差値も2015年とほぼ同じで、東ロボ君くんが伸び悩んでいるように見えます。

特に国語や英語が苦手な原因は、東ロボくんの「読解力」のなさのようです。現在のAIは一見すると人間と上手に会話をし、人間の意図を汲み取っているように見えます。しかし、AIが文章を読んだり書いたりする仕組みは、膨大なデータの中から統計的に選び出しているのであって、人の書いた文章や話した言葉の意味を理解して答えを返しているわけではないといことに根本的な要因があるようです。

リーディングスキルテスト

東ロボくんは国語が苦手といっても偏差値がほぼ50点ですから、東ロボくんよりも国語の問題が解けない高校生がかなりいることになります。東ロボくんの苦手の要因が文章の意味を理解できないという「読解力の欠如」だとすれば、東ロボくんにかなわない生徒も「読解力」に課題があるのではないかという推測がでてきます。

そこで国立情報学研究所(NII)では、文章の意味や意図を、どれほど迅速かつ正確に読み取ることができるかを測定するためリーディングスキルテストを中高生を対象に行っています。
リーディングスキルテストの問題は主に中学、高校の教科書から採ってあります。例えば次のような問題が出されています。

(例題1)オーストリア、次いでチェコスロバキア西部を併合したドイツは、それまで対立していたソ連と独ソ不可侵条約を結んだうえで、1939年9月、ポーランドに侵攻した。
ポーランドに侵攻したのは、(    )である。
A オーストリア
B チェコスロバキア
C ドイツ
D ソ連

(例題2)Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
Alexandraの愛称は(   )である。
A  Alex
B Alexander
C 男性
D 女性

(例題3)仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。
小瀬兄広がっているのは(   )である。
A ヒンズー教
B キリスト教
C イスラム教
D 仏教

(例題4)下記の文の内容を表す図として適当なものをすべて選びなさい。
四角形の中に黒でぬりつぶされた円がある。

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(例題5)
下記の文の内容を表す図として適当なものを、A〜Dのうちからすべて選びなさい。
原点Oと点(1, 1)を通る円がx軸と接している。

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(教育振興基本計画部会(第8期~)(第5回) 配付資料http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo14/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2016/07/04/1373986_3_1.pdf より)

予備調査の結果からは、約5割の生徒が教科書の内容を読み取れていないとのことです。例えば、例題3の場合、中学生は半分ぐらい、高校生は2割ぐらい間違って答えています。例題2の場合も同じような結果です。例題5になると中学生で半数以上、高校生で約4割が間違っています。

まだ本調査の結果は出ていないようですが(?)、こうした結果から、センター模試で東ロボくんに敗れた高校生も、文章の意味が理解できていない可能性があり、問題を解くとき、意味を理解せずAIのような統計的判断をしていることなどが疑われているようです。

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