自動運転車の事故をめぐる報道

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自動運転車の事故をめぐる報道

テスラモーターズの「モデルS」で、「自動運転モード」作動中に死亡事故が起き、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が調査に入ったとのニュースを7月1日、新聞やテレビなど多くのマスコミがこぞって報道していました。
事故は、5月7日に起きたもので、自動運転モードで走行中、大型トレーラーがモデルSの前方を横切る形で起き、ブレーキが作動しないまま、トレーラーの下に潜り込む形で衝突したものです。
マスコミは事故の事実を伝えるとともに、様々な評論・コメントを述べています。

〇 自動運転車開発への影響

NHKはテスラの自動運転車のことや事故の状況などを伝える中で次のようなコメントを載せています。

「・・・自動車メーカー各社が自動運転の開発にしのぎを削る中で起きた今回の事故は、メーカー側に安全対策を求める議論にも影響を与えそうです。」(NHK NEWS WEB 7月1日)

ハフポストは安全対策の面から

「今回の事故で、自動運転車に対する規制が強化される可能性も考えられる。」

と述べています。(ハフポスト7月1日)

産経新聞は2020年を目指して日本でも自動運転の実用化に向けた整備にかかわり、今回の事故が及ぼす影響について次のように述べています。

「自動運転技術の開発を進める各社の戦略にも影響を及ぼす恐れがある。」
「・・・2020年の東京五輪にあわせ、実用化に向けた法整備などを進める考えだが、事故が影響する恐れもある。」(産経新聞7月1日)

日刊工業新聞のニュースイッチは、WSJの報道を引用し、テスラ社のリコールについても言及しています。

「・・・自動運転技術そのものや運用手法などをめぐって、見直しを迫る世論が強まってくるかもしれない。実際、WSJの報道によれば、調査結果にもよるが、今回の事故で2万5000台のテスラ車がリコールされ、当局から画像処理・検知ソフトウエアの変更を求められるかもしれないという。」(ニュースイッチ7月3日)

毎日新聞は、日本の自動車メーカー幹部の「今後は一層気を引き締めて安全を確保する」との声を紹介しながらも、今後の開発について次のようにコメントしています。

「・・・事故によって自動運転技術に対する消費者の不安が高まれば、加速している開発競争にブレーキがかかる可能性もある。」(毎日新聞7月2日)

〇 事故の原因についての報道

事故の原因については、多くの報道は「当日は晴天でトレーラー車体の白い色をセンサーが感知できずブレーキが作動しなかった可能性がある」と伝えていますが、マスコミよってその伝え方のニュアンスが微妙に異なるようです。

朝日新聞は「米テスラ、自動走行で初の死亡事故 相手車の色が原因か」や「自動走行技術、特殊条件で対応できず?テスラ死亡事故」というタイトルで、トレーラーの車体の色や事故が特殊な条件下で起きたことが原因かと疑問符をつけています。そうしてうえで、テスラ社の下記のコメントを載せています。

「トレーラーの車体が高かったことに加え、当日は晴天でトレーラーの車体の白い色をセンサーが感知できず、ブレーキが作動しなかった可能性がある」(朝日新聞7月1日)

読売新聞は、朝日新聞よりさらに原因を「人工知能誤判断?テスラ、自動運転中に死亡事故」と人工知能の誤判断にまで突っ込んだ見出しを付けています。

「・・・人工知能がトレーラーの下をくぐり抜けられると判断したとみられ、ブレーキをかけた跡はなかった。」(読売新聞 7月1日)

AIの誤判断についてはBLOGOSも述べていますが、下記のように少々慎重な書きぶりです。

「搭載されていたAI(人工知能)が、下を潜り抜けられると判断した、という報道もあります。 詳しいことは、調査結果を待たねばなりません」
(BLOGOS7月1日)

こうした報道のあと、運転手がDVDを鑑賞していたことが事故の要因の一つではないかといった報道がされるようになりました。Engadget日本語版はドライバーの不安全行為(DVD鑑賞)の可能性を指摘しつつも、Model Sの半自動運転モードにも問題がなかったとはいえないと述べています。そして次のように述べています。

「・・・「360°感知できる12の長距離超音波センサー」と「高精度のデジタル制御式電動ブレーキ アシスト システム」が正常に機能していたのかも気になるところです。 」
そして、テスラにセンサー技術を提供するMobileyeのコメントを紹介しています。もちろんそのことへのテスラの反論も載せています。
「今日の衝突回避支援システム、自動ブレーキシステムは、前方に位置する車や物体に対して機能するよう設計されているが、側面からの衝突は考慮していない」
(Engadget 7月2日)

このように、事故の原因を特殊な条件下であったことや人工知能や各種システムに原因を求めようとする報道に対して、GIZMODOは下記のように事故を起こしたのは人間であるとしています。

「・・・実際には「半」自動で、男性はいつでもブレーキを踏めました。つまり人間が起こした事故であるという点は慎重に区別が必要です。」
(GIZMODO7月2日)

〇 テスラのマーケティング戦略に関する報道

日経新聞は、事故に対するテスラの姿勢やマーケティング戦略について論調しています。

「テスラは・・・つまり、自動運転モードの安全性を強調しているわけだ。しかし、この強気の姿勢には、リスクがあるかもしれない。少しでも誤解を招けば、米国の消費者から強い反発を受けかねないからだ。」
「自動運転と高らかにうたうマーケティング戦略は、時に顧客を惑わせるのではないか。・・・最先端技術の使い方をより丁寧に説明していく努力がメーカーに求められるはずだ。それは、テスラだけでなく、他の自動車メーカーも同じである。」(日本経済新聞2016年7月1日)

「テスラの自動運転モードはマーケティング上「自動運転」をうたっているが誇大広告の面があり、実際には運転補助機能にすぎないのが実情。(日本経済新聞2016年7月4日)

詳しい事故原因は今後の調査で明らかになってくるでしょうが、こうした事故の場合、運転者と自動運転技術の責任の割合がどう判断されるのかということも難しい問題ですが、その他にも例えば、「ベータ版のテスト段階」のものを公道で行うことの是非、インフォームドコンセントなどについても問題提起されているようです。
また、アメリカのメディアでは、グーグルの自動運転車が公道でのテスト走行中に起こしたこれまでの事故の教訓が生かされていなかったとの批判もあるようです。

 

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