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アンドロイド・ロボット
人は鳥のように空を飛びたい、魚のように海の中を自由に泳ぎたいと思っても、鳥に似せたり、魚のようにヒレをもった乗り物を作ったりはしませんでした。鳥や魚に似せなくても、それと同等の機能があればよいと考えるからなのでしょう。
ロボットの場合も、人と会話をする、人のように働く、人のようにふるまうというのであれば、必ずしも人に似せた姿かたちである必要はないのかもしれません。ですが、ロボット研究の分野では、旧約聖書の「神は、自らに似せて人間を造った」の一節のように、人に似せたロボット、アンドロイド・ロボットの研究が真剣に行われています。特に、欧米よりも日本の方がアンドロイド・ロボットの研究が盛んなようです。ちなみに、欧米では「人型ロボット」は「ヒューマノイドロボット」と呼ぶことが多いようです。
アンドロイド・ロボットの研究における欧米と日本の違いは、宗教観の違いからきているということがよく言われます。人が神と同じような行為、つまり、人が人に似せたものを作ることは神への冒涜だというキリスト教的な考えの影響です。
アメリカの映画に出てくる人を癒してくれる優しいロボットのベイマックスが雪だるまのような非人間的な姿なのに対して、悪役ロボット「ターミネーター」は人に近い姿で描かれているところにもそうした宗教観が表れているのかもしれません。
今もそうした考えが根強く存在しているのか分かりませんが、最近は、アメリカのボストンダイナミクス社のように、欧米においても優れたアンドロイド・ロボットが開発されてきています。
アンドロイドではよく話題になるのが「不気味の谷」という問題です。ロボットが人間らしくなるにつれて、好感や共感を覚えるが、ある時点で強い嫌悪感に変わり、さらに人間の外観や動作と見分けがつかない程になってくると、また親近感を覚えるというものです。これは対象がロボットに限らず人間であっても感じるようで、2012年に赤ちゃんに母親と他人の顔を半分づつに合成した顔を見せる実験で不気味の谷の存在を明らかにしています。
この不気味の谷を越え、人なのかロボットなのか区別がつかなくなり、様々な倫理上の問題やそもそも自分とは何かというアイデンティの問題まで生じてくるという指摘もあります。が、そうなるまでには克服すべき技術的課題がたくさんあり、当分はそうした問題は起きないような気もするのですが・・・?
日本のアンドロイドについては、よく紹介されていますので、ここでは、日本以外のアンドロイド・ロボットのいくつかを取り上げてみます。
iCub(アイカブ:イタリア工科大学(IIT))
「iCub」はイタリア工科大学(IIT)が開発した4歳の子ども(身長104cm、体重22kg)がモデルのロボットです。
53個のモータを搭載し、頭、腕、手、腰、足を動かし、四つん這いではったり、起き上がってバランスを取ることができます。人間との会話の中から自ら学習し、顔の部分の目とライトによって喜びや悲しみなど6つの感情を表現します。体全体は人工皮膚で覆われています。
(https://www.iit.it/research/lines/icub より)
FACE(イタリア:ピザ大学)
FACEはピサ大学の学際研究センター「E.Piaggio」によって開発されているアンドロイドです。頭部は、Hanson Roboticsによって開発されたFrubber TM(最大70%の空気を含有するシリコーンエラストマー)というスキンで覆われています。
ロボットの作動システムは、32個のサーボモーターを備えたSSC-32シリアルサーボコントローラーによって制御され、怒り、嫌悪感、恐怖、幸福、悲しみ、驚きといった感情を表現します。また、HEFES(表情合成のためのハイブリッドエンジン)で、あらゆる感情による顔の表情を作り上げるそうです。
(http://www.faceteam.it/research/the-face-andorid/ より)
Sophia(ソフィア)/HAM(ハム)/ALICE(アリス)(Hanson Robotics社)
ソフィアは2015年に開発されたロボットで、Frubberという特殊なシリコン素材で覆われており、人の皮膚とほとんど同じ質感があるそうです。人とアイコンタクトを取りながら、62種類の表情と自然な会話でコミュニケーションが取れます。
このロボットを有名にさせたのは、昨年CNBCで放送されたソフィアとHanson Robotics社のDavid Hanson博士との会話で、「オーケー。私は人類を滅亡させます(OK, I will destroy humans.)」といったことです。
HAM(ハム)は人体上部を模したアンドロイドで2015年に公開されました。ソフィアと同じように相手の表情に合わせて、自分の表情を変えて会話することができ、アイコンタクトもとることができます。
人と見分けがつかないほどの表情は 、ソフィアと同じFrubberと呼ばれる特殊な弾力性のある素材で作られています。肌の質感、毛穴まで本物そっくりに再現しているとのことです。
Hanson Robotics最新のロボットでは、女性のALICEで、ジュネーブにあるMIRA Labsで開発されています。
(http://www.hansonrobotics.com/ より)
ナディーン
シンガポールの南洋理工大学(Nanyang Technological Universit)のナディア・タルマン教授らが開発したロボットです。現在は研究室の受付に座っていますが、将来は高齢者の手助けや介護での活躍が期待されています。
肌質や髪までタルマン教授そっくりに作られています。また、一度会った相手のことを認識し、以前話を忘れないそうです。
(南洋理工大ニュースリリース http://media.ntu.edu.sg/NewsReleases/Pages/newsdetail.aspx?news=fde9bfb6-ee3f-45f0-8c7b-f08bc1a9a179 より)
Jia Jia(ジアジア(佳佳):中国科学技術大(University of Science and Technology of China))
中国科学技術大(University of Science and Technology of China)が開発したアンドロイドです。話すときの口の動きや、周囲を見回す視線など本物そっくりで、カメラを向けると、ポーズをとったり、確度のよって嫌がったりするそうです。まだ、喜怒哀楽といった表情まで再現していないとのことです。
(中国科学技術大学 NEWS「Cameron and Jia Jia Together Lookout 2017 at UBS Conference」 http://en.ustc.edu.cn/news/201701/t20170115_267260.html より)
EveR(エバー:Korea Institute of Industrial Technology(KITECH))
韓国生産技術研究院が開発しているアンドロイド・ロボットです。身長は167cmで、顔、上半身、下半身に51の関節を持ち、12種類以上の感情表現、アイコンタクト、自然な会話などができるそうです。
EveRのFacebookによればアラブ首長国連邦のドバイ関税庁に供給されアラート対象者をX線通過に移動指示する役割などを行うそうです。