人工知能と経済成長(アクセンチュアの報告書から)

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ベースラインシナリオとAIシナリオ

2016年11月にaccenture(アクセンチュア)が公表した「Why artificial intelligence is the future of growth(人工知能はいかに経済成長をもたらすのか)」と題する報告書は、「人工知能によって、2035年には経済成長率が倍増し、労働生産性は最大で40%向上する」と予測しています。
この調査はアメリカ、フィンランド、イギリス、スウェーデン、オランダ、ドイツ、オーストリア、フランス、日本、ベルギースペイン、イタリアの先進12か国を対象にして行われたものです。

報告書は初めに、設備投資と労働力の増加による経済の成長の押し上げは先進諸国ではなくなったとしています。しかし、悲観することはなく、人工知能(AI)が資本と労働の物理的限界を克服し、価値と成長の新しい源となる可能性を秘めた時代に今はあるとしています。そして「THE NEW FACTOR OF PRODUCTION(生産の新しい要因)」として、GDPの成長率の鈍化、TFP(Total Factor Productivity, 全要素生産性)の低下、資本効率の低下、労働年齢人口の成長率の低下などについて資料示して述べています。

日本はいずれにおいても悲観的な数字が示されています。例えば、2016年~2030年にかけての労働年齢人口の年間平均成長率は、前述の12か国の中でもっとも低くマイナス0.73となっています。ドイツがマイナス0.7、スペインがマイナス0.6と続いています。

このような従来の経済成長の要素、つまり資本、労働、全要素生産性から示された経済成長を「ベースラインシナリオ」とし、2035年粗付加価値(gross value added:GVA)の成長率を見ると、アメリカが最も高く2.6、次いでイギリスの2.5、フィンランドの2.1、スウェーデン、フランス、スペインの1.7となっています。日本は12か国中で最も低く0.8となっています。日本の次に低いのはイタリアの1.0です。しかし、この3つの要素に人工知能(AI)を加えた「AIシナリオ」になると2035年のGVA成長率は、アメリカが4.6で最も高く、日本は2.7となってベルギーと並んで9番目にです。

ベースラインシナリオとAIシナリオでの成長率を比較すると、ベースラインシナリオに比べて日本が3倍以上、フィンランド、スウェーデン、オランダ、ドイツ、オーストリアがおよそ2倍になる可能性を示しています。

報告書では、日本がAIシナリオで成長率を加速させる要因について、洗練された研究ネットワーク、特許出願の優位性、ロボットのような分野での長年の誇りなど、AIが幅広い成長インパクトを刺激する好都合な状況にあることを挙げています。

また、AIはより速い経済成長の道を開くとして、経済規模が倍増するまでの期間を2035年を起点として下図のように示しています。グレーはベースラインで紫はAIです。1周(完全な円)が100年です。日本の場合、ベースラインシナリオでは、経済規模が倍増するのにおよそ80~85年かかっていますが、AIシナリオではおよそ25年ほどとなっています。ただし、この年数というのは、技術革新を幅広い経済インフラに普及させることによってもたらされるとしています。

growth2016_001_r(Why artificial intelligence is the future of growth https://www.accenture.com/ro-en/_acnmedia/PDF-33/Accenture-Why-AI-is-the-Future-of-Growth.pdf より)

AIと労働生産性

このように、AIによって経済規模が倍増するのに必要な年数が劇的に短縮する要因の一つは、AIが生産性を向上させることによると報告書では述べています。
ベースラインシナリオと比較した場合の2035年時点でのAIによる労働生産性の向上率は、最も高いのはスウェーデンの37%で、ついでフィンランドの36%、アメリカの35%、そして日本の34%と続いています。

growth2016_003_r(Why artificial intelligence is the future of growth https://www.accenture.com/ro-en/_acnmedia/PDF-33/Accenture-Why-AI-is-the-Future-of-Growth.pdf より)

ちなみに、日本生産性本部の労働生産性の国際比較2016年版によると日本の労働生産性はOECD加盟国で22番目となっています。2010年から2015年の実質労働生産性上昇率は0.4%で28位です。日本の生産性が低いということは見方を変えれば、それだけ伸びシロがあるということもできます。

growth2016_002_rhttp://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2016.pdf より)

ところで、生産性向上に関して、平成28年版情報通信白書によれば、職場に人工知能(AI)が導入された場合、アメリカの場合は業務効率・生産性が改善するとする回答の割合が高く、人工知能(AI)への期待が高いが、日本の場合は「これまでと変わらない」という回答が最も高く、人工知能の導入による生産性の向上への期待感に開きがあるようです。
一方で、仕事のパートナーとしての人工知能(AI)への抵抗感については、日本の方が抵抗感が小さく、人工知能(AI)と一緒に働くことへの心理的ハードルが低くなっている。

報告者では最後にAIシナリオの実現に向けて、「Prepare the next generation for the AI future(次世代に備える)」「Encourage AI-powered regulation(AIに対応した法規制を導入する)「Advocate a code of ethics for AI(AIのための倫理規定を策定する)「Address the redistribution effects(AIの再分配効果に対応する)」の4つ問題に対処すべきとしています。

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