人工知能と医療

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ホワイト・ジャック

「LSIメディエンス」や 「東芝メディカルシステムズ」などの医療機器メーカー5社と自治医科大は、患者の症状などを入力すると、「ホワイト・ジャック」と名付けられた人工知能が、患者の症状や過去の受診状況などをもとに、考えられる病名とその確率を計算し、適切な検査や治療法を提案するなど、医師の診療をサポートするすくみを開発したことをマスコミ各社は報道していました。このシステムは2016年度に自治医科大病院などで試験運用を始めるとのことです。

具体的には、「予診票」を「ペッパー」を相手に入力し、医師の問診でさらに患者の症状などを電子カルテに追加していき、それらの情報から人工知能が病名とその確率、必要な検査などが提示するのだそうです。

このシステムの特長は、人工知能が一つの病気についての治療法を見つけ出すのではなく、複数の病気を提示するというところで、将来的には、ロボットが診察室で医師と患者の会話を聞き取り、医師の代わりにカルテに記入することも考えられているようです。

Watsonと医療

人工知能の医療への活用に関してはIBM社のWatsonがよく取り上げられます。IBM社ではWatsonの能力を、医療・ヘルスケア分野においては「研究開発」「診断支援」「顧客サポート」で生かすことを目指しています。

研究開発では、例えば、がん抑制遺伝子を活性化または不活性化する有望なたんぱく質を見つけ出すことにWatsonを使って膨大な数の科学論文を分析することで成功しています。また、新しい治療薬の効果を試す臨床試験におけるマッチングを支援することにも使われています。

診断支援では、例えばアメリカのがん専門病院、Memorial Slone Kettering Cancer Centerにおいて、患者の治療にとって重要なポイントをWatsonが整理し、検査の提案をしたり、症例を示しながら治療方針を提案したりすることなどを行っているようです。

ですが今のところ、候補の中から実際の診断や治療を決めるのは医師であり、Watsonが判断するもとになる知識は人間が作成しており、人間の知見を超えるような診断や治療提案までは難しいようです。

グーグル・ディープマインド社と医療

2016年2月に、世界最高の棋士とされるイ・セドル(Lee Sedol)氏を破った「AlphaGo」を開発したグーグル(Google)傘下のディープマインド(DeepMind)社が医療・健康事業への進出を発表しました。とりあえずは、血液検査などのデータを医師がスマホで確認できるようにするアプリと、医師の業務管理をしやすくするためのアプリのようです。

ロボットと調剤

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のUCSFメディカルセンターでは、医師の処方箋に基づきロボットが薬品を調剤するというシステムを導入しています。このシステムのメリットは、調剤の人為的なミスを減らせること、さらに人件費の削減なることです。調剤については、人工知能が症状と薬の作用についての矛盾の発見、薬と薬の飲み合わせや副作用のチェックをすることでより正確で安全な薬の調合を行っています。その精度は人工知能が経験を積むほど高くなっていくそうです。

ディープラーニングと画像診断

サンフランシスコのEnlitic社は、ディープラーニングを用いて、ガンの悪性腫瘍を発見するシステムを開発しています。CTスキャン、MRI、顕微鏡写真、レントゲン写真などの画像からガン腫瘍の特性を解析し、遺伝子情報と組み合わせて短時間に診断するというものです。

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(http://www.enlitic.com/solutions.html より)

イスラエルのZebra MEDICAL VISION社も同じようにディープラーニング技術を用いて、データベース上のCTスキャンやX線写真などのデータベース上の大量な匿名医療画像データを基に、1枚のCTスキャンから病気を特定する技術を開発しています。

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(https://www.zebra-med.com/ より)

バーチャルナースMolly

仮想ナースMollyはサンフランシスコのベンチャーSense.ly社が開発しました。Mollyはナースのアバターとして音声でコミュニケーションをとり、患者はMollyの指示に沿って血圧を測定し、薬を飲み、テレビ会議で医師の診察を受けるというものです。

Mollyでは、音声アプリ「MindMeld」を開発したExpect Labsの人工知能技術が使われているそうです。る。

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(http://sense.ly/?page_id=1317 より)

人工知能と医療の課題

人工知能はデジタル的疾患には有効だがアナログ的疾患は苦手であるという意見があります。デジタル的とは、高血圧や糖尿病、脂質代謝異常など数字で異常か正常化が捉えられるような疾患です。アナログ的とは、うつ病や統合失調症、更年期障害や自律神経失調症といった病気や痛み、しびれ、めまい、疲れ、匂いといった症状など、数値で表すことが難しいものです。

そこで、人工知能の医療分野での活用は、まずはデジタル的疾患で広がるものと思いわれます。そして、前述のホワイト・ジャックの活用に関して、読売新聞に「まれな病気も提示してくれるので、重大な病気の見落としを減らせると期待できる。また、若手医師の育成にも役に立つだろう」と開発に関わった石川鎮清教授のコメントを載せているように、誤診や誤った治療などのミスを防ぐシステムの一つとして応用されていくだろうと見られています。

 

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