ロボット記者

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ロボットジャーナリズム

オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ研究員があらわした『雇用の未来』という論文が以前話題になりました。702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析し、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い、つまり、人間が行う仕事の約半分が機械に奪われるという内容でした。
野村総合研究所がオズボーン准教授と共同で日本について調査した報告書が2015年12月に発表され、そこでは、10~20年後には国内労働の49%が人工知能やロボットに取って代わられる可能性が高いとして、具体的代替可能性が高い職業、低い職業をそれぞれ100種あげていました。
しかし、いずれの報告書でも「新聞記者」が消える職業としては挙がっていませんでした。オズボーン准教授の「雇用の未来」では、残る可能性の高い140番目に「Editors」、177番目に「Reporters and Correspondents」という名前があり、野村総合研究所の代替可能性の低い100種の職業の中には「放送記者」がありました。
では、記者は人工知能に取って代わられる可能性はないのでしょうか。

Wordsmith

AP通信は2014年7月からオートメイテッド・インサイト社(Automated Insights)の「ワードスミス(Wordsmith)」という人工知能を使った記事を書いています。記事作成時間は1~2秒だそうです。短時間に書けるわけですから記事の量もそれまでの300本から4300本と14倍にも増えたとのことです。当初は企業業績の記事を書いていたようですが、今では大学スポーツの試合結果などのニュース配信も行っているとのことです。まだ、文章が比較的定型の分野に限られた運用のようです。
ワードスミスを利用している企業にはAP通信の他にヤフー、コムキャスト(Comcast)、オールステート保険(Allstate Insurance)など数多くあります。ワードスミスは新聞記事やニュース記事を書くという使い方だけでなく、前述の保険会社では、従業員にメールでアドバイスする用途に使用したり、中古車販売会社では、中古車の相場、性能、年式、燃費などをユーザーに紹介するために活用しているようです。
なお、Automated Insights社は2015年2月、投資会社のVista Equity Partners社に8000万ドルで買収されています。

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(https://automatedinsights.com/products/ より)

クウェークボット

クウェークボットはロサンゼルス・タイムズ紙で地震速報に使われているのもので、米地質調査所(USGS)から提供されたデータを分析し、アルゴリズムに従って自動的に記事を生成します。震動が記録されてから3分で記事を作成、同紙のウェブサイトに掲載するとのことです。

Qill(クイル)

FortuneやBig Ten Network、フォーブス(Forbes)などの一流メディアに使用されているナラティブ・サイエンス(Narrative Science)社製の自然言語作成の人工知能エンジンです。
ナラティブ・サイエンス社は、2010年にノースウェスタン大学の研究者たちが中心となって設立したベンチャーです。大学の研究の中で生み出したスタッツモンキーという自然言語のテキストを作り出すソフトをもとに、さらに改良を加え、はるかに強力かつ包括的な人工知能エンジン「クイル」を開発しました。
Narrativeとは日本語で「物語」というような意味がありますが、このクイルは単に事実を羅列して記事にするのではなく、まさに物語のような魅力的な文章を作りだすというものです。
この人工知能はフォーブス誌などの一流メディアに使用されるだけでなく、2016年5月には資産運用報告システムの英バーミリオン・ソフトウェアと提携し、クイルが異種情報源のデータを分析して顧客に関心のある文章を自動生成し、資産管理のコメント作成をそれまでの数週間から数秒に短縮できるようになるの発表がありました。

quill_001_R(https://www.narrativescience.com/quill より)

ドリームライター

中国のIT大手テンセントの運営するネットメディア「騰訊財経」が開発し、2015年9月に発表しました。今のところ情報を伝える原稿しか作成できないようです。ドリームライターを紹介する記事では、「計算法に基づき真っ先に記事を自動作成し、瞬時に分析と判断を行い、重要な情報と解説を1分以内にユーザーに送信する」としています。

快筆小新

新華社のスポーツ部と経済情報部、中国証券報で使われ、スポーツの様子を中国語と英語で伝えたり、金融経済情報の原稿を書いたりすることに使われているようです。

新聞記者という職業

前述のオックスフォード大学の報告書では、記者は生き残る可能性の高い職業になっていますが、米国の就職仲介会社CarrercCast社の「The Most Endangered Jobs of 2015 (最も絶滅が危惧される職業)」では、4番目に新聞記者が上がっています。ちなみに順位は1位:郵便配達人、2位:検針員3位:農業従事者、4位:新聞記者、5位:宝石職人、6位:森林伐採人、7位:フライトアテンダント、8位:ボール盤技師、9位:保険引受人、10位:裁縫師・仕立屋となっています。
また、同じくCarrercCast社の「The Worst Jobs of 2016」には、「While neither or those professions made CareerCast.com’s 28th annual Jobs Rated report’s 10 worst jobs list, Newspaper Reporter, Broadcaster and Pest Control Worker are ranked among the worst jobs of 2016.」として、新聞記者が挙げられています。
では、新聞記者は滅びゆく職業なのでしょうか?オートメーテッド・インサイト社は、コンピュータは事実を伝えることはできても、「なぜ」「どのように」といった分析はできないとみています。また、話を聞くというのは人間だけができる行為で、ロボットに本音や真実を語る者はいないという主張もあります。さらに、 例えば英国のEU離脱問題に関してロボットは投票結果を報じることはできても、どちらの結果が正しかったかという見解を書くことは難しく、仮にロボットにこのような重大な事実に対する見解を任せられるのかという意見もあります。こうした分野では記者は今後も生き残っていけるのかもしれません。
人間とロボットの棲み分けがなされていくのではないかと思われます。数字を羅列し、事実を正確に伝えること、膨大なデータから文章を生成すること、報告書のような長大な文章を作成するといったことはロボットが得意な分野かもしれません。そしてもう一つの使われ方は、読者一人一人に合わせた記事の生成です。広告の分野ではすでにそれに近いことが行われていますが、記事においても一人一人の趣味や求めてること、生活の状況などに合わせて記事の内容をパーソナル化したものを提供するということが進むのではないかとも言われています。ただ、そのことに関しては、読者の思考がタコツボ化していくと懸念する声もあります。

 

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