ロボット新戦略とは

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ロボット新戦略

政府は、「日本再興戦略」改訂2014で掲げられた「ロボットによる新たな産業革命」の実現に向けて、ロボット革命実現会議で審議してきたまとめを「ロボット新戦略」として2015年1月の末に公表しました。

これは、米国が2011年に「国家ロボットイニシアティブ」を発表し、人工知能や音声、画像の認識分野を中心としたロボットの基礎研究に毎年数千万ドル規模の支援をしていること。欧州委員会が民間企業・研究機関と共同で28億ユーロ規模のプロジェクトを立ち上げて、実用ロボット開発を推進していること。また、中国では「智能製造装置産業発展計画」で、産業用ロボットの国内売り上げを20年までに10倍の3兆元にする目標を掲げ、2013年のロボット導入は3万7000台で世界一になったことなど、世界の追い上げが激しく、このままでは日本の強みとされてきたロボット分野においても世界から遅れをとるのではとの危機感から、取りまとめられたものと言えます。

ロボット大国日本に忍び寄る危機

報告書では「ロボット大国日本に忍び寄る危機」として、日本が、ロボット開発における着眼点や、ビジネスモデルの検討の視点において、世界の潮流を見誤った場合には、ロボット分野においてもガラパゴス化し、ものづくりでは勝ってもビジネスで負けるということが起きかねないと指摘しています。

今、世界のロボット開発においては、グーグルに代表されるような新たなビジネスモデル構築、生産プロセスの開発やサプライチェーン全体の最適化を目指す取組が本格化しています。しかし日本は未だに生産の安定と省力化を動機とした生産プロセス自動化のためにロボットを活用することが多く、量産化技術に長けた一部の製造業分野を中心に、個々のロボットを造り込みつつ活用するという方法が主流であると懸念を示しています。

世界的な潮流に対抗するためには、システムの構築・立上げ・プログラミングをこなす人材、デジタルデータの活用やAI開発等に携わるソフト分野の人材が不可欠ですが、日本ではこれらの分野の人材の育成・活用が十分ではないことや、ロボットをシステムとして活用するために鍵となるシステムインテグレーター(SIer5)も、一部大手企業への対応を中心とした事業にとどまっており、SIerが質・量ともに不足していることを指摘し、早急に対応する必要があると危機感を表しています。

ロボット革命

ロボット革命とは何を指すのでしょうか。報告書は次の3点を挙げています。

① センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化する(例えば、自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボットの一つとなる。)、

② 製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用される

③ 社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する

そして、ロボット革命に向けて、ロボット自体が「自律化」「情報端末化」「ネットワーク化」により、単なる作業ロボットから自ら学習し行動するようになるとともに、自らデータを蓄積・活用する新たなサービス提供の源泉となり、ロボットが相互に連携する方向に向かって劇的に変化しつつあると分析しています。

Easy to use

ロボット革命を実現するためには、誰もが使いこなせる「Easy to use」を実現し、多様な分野の要請に柔軟に対応できるロボットに変えていくことが必要であるとしています。では、具体的にどのようなロボットなのでしょうか。報告書では、これから求められるロボットは、三品産業(食品・化粧品・医薬品)などの、より幅広い製造分野や多種多様で非定型なプロセスの多いサービス分野、人手に依存する中小企業などで活用できるものであり、より小型で汎用的な費用対効果に見合うロボットとしています。

そして「誰もが使える柔軟なロボット」は、共通プラットフォームの下、モジュールを組み合わせて多様なニーズに応えていくモジュール型のロボットが主流となり、「自律化」、「データ端末化」、「ネットワーク化」といった世界的な潮流をリードしていくようなロボットを作りを推進していけば、データ駆動型のイノベーションを活発化していくことが出来るとしています。

柔軟なロボットの概念

次世代のロボットにおいては、これまでの「センサー、知能・制御系、駆動系の3要素を備えた機械」というという定義は通用しなくなるだろうとしています。

それは、デジタル化の進展や、クラウド等のネットワーク基盤の充実、AIの進歩や、IoTの世界が進化し、アクチュエーター等駆動系のデバイスの標準化が進めば、知能・制御系のみによって、多様なロボット機能が提供できるようになるであろう将来の姿からです。

さらに、日常的に人とロボットが共存・協同する社会、いわゆる「ロボットバリアフリー社会」を実現することがロボットの能力を最大限活かす上で重要であり、社会の様々な場面でロボットが活用されるようになれば、ロボットと連携した様々な新たな産業分野(メンテナンス、コンテンツ、エンターテインメント、保険等)も次々と創出されてくることとなると提言しています。

ロボット革命を実現するための戦略

ロボット革命を実現するための日本の戦略の柱を次の3つに集約しています。

① 世界のロボットイノベーション拠点-ロボット創出力の抜本的強化

・産学官の連携やユーザーとメーカーのマッチング等の機会を増やしイノベーションを誘発させていく体制の構築する

・人材育成、次世代技術開発、国際展開を見据えた規格化・標準化等を推進する。

② 世界一のロボット利活用社会-ショーケース(ロボットがある日常の実現)

・ものづくり、サービス、介護・医療、インフラ・災害対応・建設、農業など幅広い分野で、真に使えるロボットを創り活かすために、ロボットの開発、導入を戦略的に進める

・その前提となるロボットを活かすための環境整備を実施する。

③ 世界をリードするロボット新時代への戦略

・IoTの下のデータ駆動型社会の到来によるロボット新時代を見据えた戦略を構築する。

・ロボットが相互に接続しデータを自律的に蓄積・活用することを前提としたビジネスを推進するためのルールや国際標準の獲得を進める

・セキュリティや安全に係るルール・標準化

・2020年までの5年間について、政策的呼び水を最大限活用することにより、ロボット開発に関する民間投資の拡大を図り、1000億円規模のロボットプロジェクトの推進を目指す。

・「人と補完関係にあり、人がより高付加価値へシフトできるようなパートナーとしてのロボット」という視点

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ロボット革命実現の方策

一つ目の柱(ロボット創出力の抜本強化)

① ロボット革命全体の強力な推進母体として、「ロボット革命イニシアティブ協議会(Robot Revolution Initiative)」を設立し、プロジェクトにおけるニーズ・シーズのマッチングや国際標準の獲得、セキュリティへの対応、国際連携等を推進する。

② 新たなロボット技術の活用を試みる実証実験のための環境整備や人材育成を実施する。

③ 福島県において「福島浜通りロボット実証区域」(仮称)を設け陸上、水中、空中のあらゆる分野におけるロボット開発の集積拠点とする。

④ ロボットシステムを組み立てていく上で中核となるシステムインテグレーターやソフトウェアを中心としたIT人材の育成を強化する。

⑤ データ駆動型社会において活躍できるロボットのためのコアテクノロジー(AI、センシング・認識、駆動・制御)について研究開発を強化する。

⑥ 国際的な展開を見据えたミドルウェア(ロボットOS)等のソフトウェア・インターフェイスや通信等の機器間連携に関する規格化・標準化に取り組む。

二つ目の柱(ロボットの活用・普及(ロボットショーケース化))

① ものづくり、サービス、介護・医療、インフラ・災害対応・建設、農林水産業・食品産業の5分野を特定し、2020年に実現すべき戦略目標(KPI)を設定する。

② 目標実現までのアクションプランを決定し、集中的に政策資源を投入する。

(例:ものづくり分野・サービス分野では)

・サービスロボットのベストプラクティス100例を選定・公表するなど導入を促進する。

・ものづくりにおける段取りや組立プロセス、サービス業における物流や飲食・宿泊業等の裏方作業へのロボット導入を重点的に進め、2020年には製造業で市場規模を2倍、非製造業で20倍にする。

(例:介護・医療分野では)

・ロボット介護機器開発の重点分野(ベッド等からの移し替え、歩行支援、排泄支援、認知症の方の見守り、入浴支援)に関する機器開発を進める。

・介護保険適用種目追加の要望受付・検討等の弾力化、地域医療介護総合確保基金による職場環境構築支援を通じて導入を促進する。

・2020年において、ロボット介護機器市場を500億円に拡大する。

・介護ロボット等を活用し介護者が腰痛を引き起こすハイリスク機会をゼロにする。

・新医療機器の審査を迅速化するとともに、2020年に向けてロボット技術を活用した医療関連機器の実用化支援を5年間で100件以上実施する。

(例:インフラ・災害対応・建設分野では)

・国が率先してロボットを活用する「モデル事業」の実施する。

・民間での保有が難しい特殊ロボット等についての公的機関における計画的な配備など、導入を促進する。

・2020年までに情報化施工技術の普及率3割、国内の重要・老朽インフラの20%においてロボット等の活用を目指す。

(例:農林水産業・食品産業分野では)

・トラクター等の農業機械の夜間や複数台同時の自動走行

・収穫物の積み降ろし、除草、植林・育林、養殖網・船底清浄ロボット、弁当盛りつけ、自動搾乳・給餌等の機械化・自動化

・ロボットと高度なセンシング技術の連動による省力・高品質生産システム

・2020年までに、自動走行トラクターの現場実装を実現する

・農林水産業・食品産業分野において省力化などに貢献する新たなロボットを20機種以上導入する

③ ロボットの実社会における活用を拡大していくため、規制緩和、ルール整備の両方の観点からバランスのとれた規制・制度改革を推進する。

(例)

・ロボットに関する電波利用システム(電波法)、

・ロボット技術を活用したものを含む新医療機器の審査期間(医薬品医療機器等法)

・ロボット介護機器に係る介護保険適用種目追加の要望受付・検討等の弾力化(介護保険制度)

・搭乗型支援ロボットや自動走行に関するルール(道路交通法・道路運送車両法)

・無人飛行型ロボットに関するルール(航空法等)

・公共インフラ・産業インフラ維持・保守におけるロボット活用方法(公共インフラ維持・保守関係法令、高圧ガス保安法等)

・消費者保護のための枠組み(消費生活用製品安全法、電気用品安全法)

④ 世界に向けてロボットショーケース化した日本を発信する場として、2020年にロボットオリンピック(仮称)を開催する。

⑤ 2016年までに具体的な開催形式・競技種目を決定するとともに、2018年にプレ大会を開催し、本大会に着実に繋げていく。

三つ目の柱(世界を見据えたロボット革命の展開・発展(高度IT社会を見据えて))

① IoTが進展し、データ駆動社会が到来しつつある。こうした実社会のモノのデータを巡るグローバル競争が激化する中において、この国際競争を勝ち抜くためにロボットを鍵とするイノベーションのプラットフォームをつくり、世界のロボット革命をリードしていくことが重要である。

② ものづくり分野におけるIndustry 4.0(独)やIndustrial Internet(米)という世界の潮流も踏まえつつも、ものづくり以外の分野も含めて国際的な協調協力によって国際標準や様々なルール構築に貢献していくことが必要である。

③ ロボットの利活用を一つの核としつつも、サプライチェーンマネジメントやマーケティングなども含めた幅広い生産システム全体の高度化や、さらに情報化を通じたモビリティ、ヘルスケア、エネルギー等の多様な分野における社会変革の動きへと発展させていくことが必要である。

④ 産業競争力会議、総合科学技術・イノベーション会議、規制改革会議など政府内の様々な機関とも幅広く連携していくとともに、諸外国とも柔軟に連携しつつ取組を進めていくこととする。

(経済産業省 http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150123004/20150123004.html より)

(ロボット新戦略http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150123004/20150123004b.pdf より)

 

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