ロボットと法

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ロボット法学会

robot_law_004_R今、ロボット法学会設立の準備が進められているそうです。世界中で競うかのように多種多様なロボットの開発が進められ、私たちの暮らしの中にも入ってきています。今はまだ、ロボット掃除機のように賢い機械といったところかもしれませんが、人工知能を持ち自ら学習していくロボットが普及してきたとき、ロボットと人間との間で起きたトラブルの責任をどう判断するのか法的な根拠はありません。先日のドローンの事件のように法整備が現実に追い付かない状況がロボットでも起きつつあるように感じます。過剰な規制はロボット産業の発展を阻害します。しかし、野放しでは人間に危害が及んだとき十分な対応ができません。そうしたことから、ロボットの普及が進む前にロボットに関する法を整備していく必要があるとしてロボット法学会の設立に向けて準備が進められているようです。

ロボットに活用の法整備

ロボット革命実現会議が2015年1月に発表した「ロボット新戦略 Japan’s Robot Strategy―ビジョン・戦略・アクションプラン―」においても、ロボットが能力を発揮できる環境づくりのために法整備が必要性だとしています。報告書では次のように述べています。

ロボットを社会に導入しようとする場合、そのロボット等が関連するであろう既存の法令等に適合することが要求される。その法令等が、社会経済情勢や既存の法律等に照らしてそぐわないと解釈される場合、法律の改正や特区の認定、新たな法律の制定など規制の整備が求められる。

・・・・日本全国でロボット導入・活用を加速させるためには、今後、ロボットの活用を前提とした規制緩和及びルール整備の両面の観点からバランスのとれた規制改革を推進すると共に、消費者保護の観点からロボットの安全性を確保するためのルール作りが必要不可欠である。

報告書では、「ロボットを効果的に活用するための規制緩和及び新たな法体系・利用環境の整備」と「消費者保護の観点から必要となる枠組みの整備」の二つに分けて法整備することが述べられています。前者は産業発展のための作る側の規制緩和であり、後者は使う側から見た規制あるいは使う側の心構えと捉えることが出来そうです。

前者の「ロボットを効果的に活用するための規制緩和及び新たな法体系・利用環境の整備」では、次のような法整備が具体として示されています。

(ア) ロボットの利活用を支える新たな電波利用システムの整備

ロボットの操縦(制御)、ロボットからの画像等のデータの伝送、ロボットが障害物等を検知するためのセンシングなど、ロボットにおける電波の利用は、従来の汎用的な電波利用形態とは異なるため、新たな電波利用システムとしてのルール作りを行う必要があるとしています。

(イ) 医薬品医療機器等法

医薬品医療機器等法に基づく承認審査の迅速化を図り、新医療機器の申請から承認までの標準的な総審査期間を短縮することを目指しています。

(ウ) 介護保険制度

現行3年に1度となっている介護保険制度の種目検討を技術革新に迅速に対応できるように見直し、ロボット技術を活用した介護機器の普及を加速化させる必要があるとしています。

(エ) 道路交通法・道路運送車両法

移動ロボットが公道を移動できるように規制緩和を行うほか、自動運転や無人トラクターなどについても国際条約との整合性を図っていくことが示されています。

(オ) 無人飛行型ロボット関係法令(航空法等)

小型無人機についてはルールや法令の検討を進めるとともに、遠隔操縦による無人機システム(大型無人機)については、国際民間航空機関(ICAO)での国際基準改定の検討に参画し、2019年以降に想定されている国際基準の改定を踏まえ国内ルール化を進めるとしています。

(カ) 公共インフラの維持・保守関係法令

現行法令では「目視」による点検が求められていますが、「次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員会」現場実証結果等を踏まえて、ロボットの活用方法を定めるとしています。

(キ) 高圧ガス保安法

目視等の人間を前提とした点検作業に対し、人間の代替となるようロボット活用ルールを整備していく必要があるとしています。

「消費者保護の観点から必要となる枠組みの整備」については、次のように述べています。

ロボットに起因する重大製品事故等が発生した場合の情報収集、原因究明のあり方や、技術開発や個別具体的な製品化の動向を踏まえた、電気用品として取り扱われる機器に関する技術基準のあり方、製造事業者等の責任の範囲について、ロボットを前提としていない現行制度での取扱いについて検討が必要である。

ロボットを使う側から見た想定される問題

〇 自動走行車が事故を起こしたら責任は?

自動走行運転の車が事故を起こした場合、その責任は車の所有者のか、あるいはメーカーなのでしょうか。事故の要因がどこにあるかるかによっても判断が分かれるかもしれません。道路に欠陥があれば道路の設置者かもしれませんが、そうした道路の瑕疵に対応するように車が造られていなかったとすればメーカーかもしれません。仮に責任を配分するとすれば割合はどうなるのでしょうか。

花水木法律事務所の小林正啓弁護士はこんな例も挙げています。

例えば自動運転車が急なパンクなどでコントロールを失ったとする。右にハンドルを切れば対向車線に運転手1人のトラック、左に切れば歩行者を2人はねるという局面で、どちらを選ぶようプログラムすべきか。(http://diamond.jp/articles/-/54283?page=2 より)

〇 テレイグジスタンスは入国か?

遠隔地にあるロボットを自分の分身のように操る技術「テレイグジスタンス」があります。テレイグジスタンスの活用には、自宅にいながら海外の観光地を実感するとか遠隔地の医療に役立てるとかいろいろ考えられています。ここで問題となってくるのは、日本にいて海外のロボットを操作した場合あるいは海外にいる人が日本のロボットを操作した場合です。慶応大学の舘暲教授は、制度的な問題として

「テレイグジスタンスの場合、ロボットは日本にあるが、操作するのは海外にいる人というケースもある。今は許されていることだが、そのロボットを操作することは『入国』にあたらないのだろうか」と述べています。

〇 ロボット兵士は許されるのか?

robot_law_005機械が暴走して人間を殺傷するということは今でもあります。しかし、人を殺すことを目的にロボットを作ることは許されるのでしょうか?仮に人間を介在する必要の無い殺人ロボットが開発されたとして、もしそのロボットが誤って味方の人間の兵士を殺してしまった場合、その責任は誰が負うべきなのか。

 

〇 対話ロボットはプライバシーを守れるか?

ロボットとのやりとりをクラウドに預けるというのは第3者から利用される可能性もないわけではありません。また、悪意のある「マルウェア」によって会話が漏洩する可能性もありえます。そうした時の責任問題もあるわけですが、そうでなくとも常にロボットに監視されているわけですからプライバシーのとらえ方を考え直していく必要が出てくるかもしれません

 

〇 犯罪に加担したロボットは裁けるか?

スタンフォード大学ロースクールでの人工知能と法律の公開講義の記事が日経新聞(5月20日)に紹介されていました。その中に「ロボットタクシーが犯罪に加担」した場合について、1990年に公開された映画「Total Recall(トータル・リコール)」を引用して、犯罪にかかわったそれぞれの当事者の主張が書かれていました。

ところで、映画のストーリーは「覆面をして拳銃を持っている乗客がロボットの運転するタクシーに逃げ込み、速く走るように指示します。映画ではロボットが制限速度を無視して速く走ると、乗客からチップをもらえる設定になっています。」銀行強盗にロボットの運転するタクシーが加担するわけです。被害に遭った銀行は、「無人タクシーは、犯罪を起こそうとする人を乗せるべきではない」という理由から無人タクシーを運用する会社を提訴します。一方、タクシー会社は「会社はマニュアル通りに運用しただけであり、責任は自動車メーカーにある」として自動運転車メーカーを訴えます。自動車メーカーはこの訴えに対し、自動運転車は安全に運行しており、犯罪が起こることは予期できなかったと主張するわけです。

(http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86505750Y5A500C1000000/  より)

 

使う側からの「ロボット三原則」

SF作家アイザック・アシモフが、作品の中でロボットが従うべきとして示した有名な3原則があります。「人間に危害を加えない」「命令に服従する」「自己を守る」の3つです。

第1条ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第2条ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第1条に反する場合は、この限りでない。

第3条ロボットは、前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 

この3原則に対して、「問題はロボットではなく、ロボットを使う人間の側にある」として、人間がロボットに対して負う責任を強調する3原則を提案する考えもあるようです。

第1条:人間は、人間の法律および職業上最高の安全・倫理基準を満たすシステムを備えていないロボットを配備してはいけない。

第2条:ロボットは自身の役割に即した形で人間に対応するよう設計されなくてはならない。また、ロボットは限られた数の人間からの特定の命令にしか応対できない。

第3条:ロボットは自身の存在を守れるだけの十分な自律性を持つべきだ。ただし、第1条、第2条に反せず、人間とロボットの間の意思決定の権限受け渡しがスムーズにできる場合に限る。

(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/27/news044.html より)

 

ロボットが家族同然のように感じ、ロボットに感情を移入しペット以上の存在となる日も来るかもしれません。そうした時、ロボットとの関係が要因となった犯罪や事故が起きたときにロボットに責任が問えるのか、ロボットの判断に道徳的価値観判断をどこまで織り込めるのか問題になってくるものと思われます。

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