PS-LTE

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PS-LTE

PS-LTEとは、公共安全LTE(Public Safety LTE)のことで、警察や消防などが利用する公共LTE専用網です。Public Safetyは警察や消防、救急などですが、これに電気、ガス、運輸、鉄道、空港など公共性のある民間も含めてPublic Safetyと広義にとらえることもあるようです。日本では2017年末から「電波有効利用成長戦略懇談会」でPS₋LTEの検討が始まっています。

現在日本では、警察や消防などの組織ごとに通信設備を整備し、その電波を独占的に運用しています。例えば消防では、以前は150MHz帯のアナログ無線を使っていましたが、平成28年5月以降は260MHz帯のデジタル無線を使用しています。警察ではデジタル化は以前から行われており、車載通信系、携帯通信系、署活系などの通信システムがあります。

しかし、こうした通信システムは、第2世代移動通信相当の古い技術であり、音声通話が主体であること、各機関の独立した仕様のため連携がとりにくいことなど、様々な課題があり、こうしたものをPS-LTE に集約しようというわけです。

ちなみに、どのくらい古い技術なのかというと、欧州を中心に使われている最新の「TETRA」でも伝送速度は700kbps程度だそうです。LTEカテゴリー5 でDL 300Mbps、UL 75Mbpsとなっていますから、これでは高画質の動画の伝送などは難しいわけです。

日本では、具体的な検討はまだ始まったばかりのようですが、実は、平成26年12月に発表された「電波政策ビジョン懇談会 最終報告書」の中で、PS-LTEの検討を早急に始めるよう求めています。

・・・LTE 方式の導入による共同利用型の防災無線ネットワークの構築を促進することにより、災害現場の映像を伝送し救助活動を適切に実施できるようにしていくべきである。この際、災害時における防災目的だけではなく、平時から様々な目的にも利用できるようにすることにより普及を後押しすることを検討すべきである。公共ブロードバンド移動通信システムについては、関係者間において、公共分野における利用拡大に向けた具体的な検討を早急に開始することが望ましい。

(電波政策ビジョン懇談会 最終報告書~世界最先端のワイヤレス立国の実現・維持に向けて~ 電波政策ビジョン懇談会 平成26年12月 より)

各国の状況

日本では現在検討が行われている状況ですが、アメリカでは9.11の教訓を受けて、比較的早くからデータや画像などの伝送もできるブロードバンド化を検討していたとのことです。2012年には「First Responder Network Authority(FirstNet)」が設立され、700MHz帯のLTE Band Plan 14免許を割当てています。そして、警察、消防、救急やその他の公共安全機関が使用する全国公共安全ブロードバンド 網(Nationwide Public Safety Broadband Network:NPSBN)を構築しています。昨年にはAT&Tが、PS-LTEシステム(FirstNet)の構築と25年間の管理を受託しており、2021年までに全米で整備が完了する予定になっています。

アメリカだけでなく、イギリス、オーストラリア、韓国などでもPS-LTEの導入が進められています。イギリスでは当初の予定より遅れているようですが、2020年中にすべての地域でPS-LTEへの移行が完了するとのことです。韓国も当初の予定より遅れているようですが、2020年には全国の整備が完了する予定になっています。フランスは2020年までにパリで導入し、2024年のパリオリンピックまでには完了させたいようです。その他、中国では警察や鉄道で試験運用中、カタールはすでに運用中、ブラジルやメキシコは周波数の割り当てが終わっているようです。世界の多くの国でPS-LTE導入の準備が進められています。

PS-LTEのネットワーク整備方法には3通りがあるようです。一つは携帯電話事業者の商用ネットワークを利用したもの、二つ目は整備主体が自ら構築する自営ネットワーク、三つ目は商用と自営を合わせたハイブリット型のネットワークです。イギリスやオーストラリアなどは商用ネットワークを利用したものです。アメリカやフランスはハイブリッド型です。

日本での運用については、電波有効利用成長戦略懇談会の「公共用周波数等ワーキンググループ中間とりまとめ」の中で次のように述べています。

警察、消防・救急、国土交通、防衛、防災などの関係省庁・関係機関が共同で利用できる「公共安全LTE」(PS-LTE)に ついて、2020年までの実現可能性を含め、関係省庁・関係機関が参画した検討の場を総務省に設ける。

(公共用周波数等ワーキンググループ 中間とりまとめ平成30年3月19日http://www.soumu.go.jp/main_content/000555154.pdf より)

PS-LTEの利点

PS-LTEについて話し合われている国の「電波有効利用成長戦略懇談会」や「規制改革推進会議」等の資料を見ると様々なメリットがあるようです。

災害時などでは公衆網はアクセスが集中して輻輳するということがおきますが、非常時にも輻輳しにくい通信システムで安定した通信が可能であるということ、バックホール回線断時も同一基地局エリア内で通信可能であること、インフラ設備が共同利用であることやLTEは世界標準であるため高機能チップセットなどが低コスト調達できるなど経費が抑えられること、通常業務でも使いやすいスマートフォンタイプの移動端末であること、全国エリアで通信が可能であること、静止画や動画など円滑なデータ通信が可能であり、GPSや高度なサービスが利用可能であること、さらに運用面では、組織間にまたがる情報流通も容易になることなどがあげられています。

また、PS-LTEには大規模災害などでLTE の基地局であるeNodeBがダウンした状況でも通信手段を提供できることが求められます。そこでeNodeBを介さないD2D(Device to Device)の直接通信の利用も想定されているようです。

 

(第9回投資等ワーキング・グループ議事概要http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/toushi/20171116/gijiroku1116.pdf 参照)

(公共用周波数等WG(第6回)資料:日本電気株式会社説明資料「公共安全分野における共同利用型業務用無線のご提案2018年2月5日」http://www.soumu.go.jp/main_content/000533331.pdf 参照)

(NPSTG Communications Report:「Public Safety Broadband Push-to-Talk over Long Term Evolution Requirements 7/18/2013 」http://www.npstc.org/download.jsp?tableId=37&column=217&id=2813&file=PTT_Over_LTE_Master_130719.pdf 参照)

 

 

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