Project Hecatoncheir

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なかなか進まないドローンの活用

ドローンの可能性が期待されながらも、現在は個人の娯楽あるいはテレビの撮影や災害現場などでの危険地帯の撮影、農業分野での種や農薬の散布作業、生育状況の監視といった活用に留まっているように思います。宅配作業をドローンが担うとかドローンを介して世界のどこからもインターネットを利用するという構想などが言われていますが、実用化までには至っていません。

なかなかドローンの活用が進まない大きな要因としては、法の整備が追い付かないことがあります。ドローンが犯罪やテロに使われることを警戒し、むしろドローンの利用を抑制する雰囲気もあります。ドローンの生活圏での利用を促進するには、犯罪に利用されないための法整備や車のような信号機などの制御を行う「交通管制システム」、航空機を円滑に飛行させるための「航空管制システム」のような管制システムの整備も必要となってくるでしょう。さらに上空からプライバシーが侵害されるということも想定した対応、事故時の責任の所在、さらには利用者へのルールやマナーの教習といったことも課題になるかもしれません。こう見てくると、ドローンの普及拡大への課題が山積しているといえるかもしれません。

しかし、こうした法整備やルールの確立という課題はあるものの、先の東関東での洪水では、国土地理院がドローンを使用し、決壊直後の堤防の様子を撮影していましたが、ドローンの活用を模索する動きは日本でも少しずつ始まっているようです。

Project Hecatoncheir(プロジェクト・ヘカトンケイル)

9月9日の「救急の日」に、「Project Hecatoncheir」(プロジェクト・ヘカトンケイル)が発表されました。これは、医療、ドローン開発、クラウド技術、行政などのプロフェッショナルを集めて、災害によって命の危険に直面している人をIoT、ウエアラブルで検出し、クラウドでコントロールされたドローンと連携し、救命の連鎖をハイテクで補完する自動無人航空支援システムの研究開発を行うプロジェクトです。

「Project Hecatoncheir」(プロジェクト・ヘカトンケイル)(※1)のサイトには、このプロジェクトの使命について次のように記されています。

現場で感じた、あと少しで救うことの出来ない命の存在。惜しくて悔しいあの感覚。

何年経っても覚えています。救急隊・消防隊員として現場活動するとみんな思うこと。

・・・・・(略)

しかし、まだ助からない命について、できることがあります。

・・・・・(略)

我々は、発見できなかった命の危機をIoT、ウエアラブルで検出し、クラウドでコントロールされた無人機と連携し、情報から航空支援を行うICTシステムを実現し、救命の連鎖をハイテクで補完します。

その新たなる「変革」の為に各分野のプロフェッショナルを集め 「Project Hecatoncheir」(プロジェクト・ヘカトンケイル「百腕巨人プロジェクト」)をスタートさせます。

ここから得られる最前線の知見を産業に、医療に、行政にフィードバックしていきます。

このプロジェクトが大切な労働人口の減少を食い止め、技術立国日本を再興し、活性化していく良循環に繋がるものと信じて、新たな第一歩を踏み出します。

(※1)Hecatoncheir(ヘカトンケイル)とはギリシャ神話に登場する100の腕と50の頭を持つ巨人族です。「人命を救う、人とモノを統合したひとつの大きなロボット」をイメージしてこのプロジェクトに命名したようです。

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(WirelessWire News 医療/ヘルスケア https://wirelesswire.jp/2015/09/45900/ より)

救命の連鎖(Chain of Survival)

サイトに「あと少しで救うことの出来ない命の存在」とありますが、東京消防庁の場合、救急の連絡が入ってから現場到着までに約8分かかっています。

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(東京消防庁 Tokyo Fire Departmentより)

hecatoncheir_005(東京消防庁http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/joukyu/oukyu-01.htm より)

当然のことながら、1分でも1秒でも早い救命措置が施されれば、命が助かる可能性が高まります。東京都の場合約8分で早いようにも思えますが、救命曲線では8分だと助かる可能性が10%ほどになってしまいます。仮に心臓マッサージなどの手当てをして救急車の到着を待っていても20%ほどです。

突然の心停止から傷病者を救命し、社会復帰に導くためには、(1)心停止の予防、(2)早期認識と通報、(3)早い心肺蘇生と除細動、(4)救急隊や病院での処置の4つが連続して行われることが必要で、これを「救命の連鎖(Chain of Survival)」とよんでいます。日本では(2)と(3)に課題があり、チェーンが(2)と(3)で切れているとさえ言われているようです。

プロジェクトリーダーの小澤貴裕氏(国際医療福祉専門学校 ドローン有効活用研究所 主席研究員)は、救急救命士としての活動の経験から、救命のための課題として「時間の短縮」を挙げておられます。8分ではやはり遅すぎるということのようです。

救命の連鎖(Chain of Survival)

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 (東京消防庁http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/joukyu/oukyu-01.htm より)

ドローン×loT×テクノロジー

プロジェクトでは、この8分をさらに短縮するために、ウェアラブルデバイスによる心拍数計測やスマートフォンの加速度センサーにより、事故や心停止が発生したことを検知し、位置情報を使用し119番に自動通報を行おうというわけです。さらに、アラーム等で近くの人に知らせたることもできます。2016年度には全てのキャリアで119番通報に位置情報が付与されることになるとのことなので、位置を把握することも容易になります。そうして、位置情報からAEDなどの必要な医療機器をドローンを使って現地に運ぶことようにしようとしています。さらに、救急隊が到着するまでの間に、同時に運ばれたタブレット端末を通して遠隔からの医師の指示に従い、現地いる人が蘇生措置を施すことができるようにしようと考えています。

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(http://www.hecatoncheir.com/ より)

課題

非常に画期的なプロジェクトであり、これが実用化されれば「あと少しで救うことの出来ない命の存在」も大幅に少なくすることができるのではないかと思います。しかし、越えなければならない壁がいくつもあるようです。一つは9月4日に可決された改正航空法です。これはドローンの取り扱いに関する基本的なルールを定め、国の許可なしに住宅密集地や空港周辺で飛行することを禁止したもので、違反には50万円以下の罰金が科せられます。

二つ目はAEDの重さを軽くすることです。プロジェクトリーダーの小澤氏は300g程度のAEDとしています。現在使われているものは約2.5kgです。軽くすることで、ドローンの飛行距離を伸ばそうというわけです。

三つ目は小型で拡張性の高いドローンの開発です。

こうした課題はありますが、プロジェクトリーダーの小澤氏によれば、実用化の第1段階を災害時のサーチ・アンド・レスキュー(※2)とし、遅くとも2年以内の飛行を目指すとのことです。

(※2)Search and Rescueは日本語では捜索救難と呼ばれ、その言葉のとおり危機的状況にある人物を捜索して救い出すことです。

 

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