エネルギーハーベスティングデバイスとしての色素増感太陽電池への期待
![]() リコーが開発した色素増感太陽電池 |
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IoT、M2Mでは多くの無線センサー端末をあらゆる場所に設置しますが、課題の一つにそれらセンサの電源をいかにして供給するかということです。数個のセンサであれば、数年の寿命の電池でもメンテナンスにさほどのコストもかからないかもしれません。
しかし、社会に膨大なセンサネットワークを張り巡らせるトリリオンセンサともなると、電池だけでもコストがかさみますし、数年に一回とは言え、その交換も大変な労力となります。そこで、これを解決する技術として注目されているのが、エネルギーハーベスティングです。エネルギーハーベスティングは、太陽電池、圧電素子、熱電素子などの発電素子を使い、身の回りの光、振動、熱などのエネルギーを電気に変換し、有効利用します。
そうしたエネルギーハーベスティングの一つとして、注目されているものに「色素増感型太陽電池」と呼ばれる新しいタイプの太陽電池があります。色素と言うぐらいですから花や果実の色素で太陽光を電気に変えることができます。注目されている理由としては、安価で入手しやすい材料を使い、特別な設備がなくても量産が可能であること、曇天や朝夕の弱い光でも効率よく発電できるなどの特長を持っているからです。
太陽電池の種類
太陽電池には使われている材料によって、おおまかにはシリコン系、化合物系、有機系の3つに分類できます。
シリコン系太陽電池の単結晶シリコン太陽電池は最も古くからある太陽電池です。高価ですが高性能で、特に変換効率が求められる用途に使われます。多結晶シリコン太陽電池は現在もっとも広く使われている太陽電池です。単結晶シリコンよりも安価に製造でき、変換効率も良い太陽電池です。薄膜シリコン太陽電池はごく薄いシリコン膜を使う太陽電池で、変換効率では劣りますが、大量量産しやすいという特徴があります。
化合物系のCIGS系太陽電池は省資源でなおかつ多結晶シリコンに近い性能が出せる太陽電池です。CdTe太陽電池は毒物のカドミウムを使い、価格が安く、欧米などで使われています。
有機系太陽電池には、有機半導体や色素増感型太陽電池がありますが、色素増感型はシリコン系と比較して製造が容易であり、軽くデザイン性の高いものが製造可能などの特徴から実用化に向けて研究が行われています。有機半導体太陽電池は今世紀に入ってから開発が本格化した太陽電池で、寿命と変換効率の向上が課題です。
(国立研究開発法人産業技術総合研究所 https://unit.aist.go.jp/rcpvt/ci/about_pv/types/groups.html より)
その他に、量子ドット太陽電池の研究も進められています。これは量子効果を利用して性能を向上させる技術です。
色素増感型太陽電池の原理
色素増感型太陽電池は、次のような仕組みで、太陽光を活発に吸収する色素が光を吸収して電子を放出することにより発電します。
① 光が当たると電池中の色素が励起状態となり、電子を放出する。
② 電子は酸化チタン(TiO2)を通って透明電極に達し、外部に流れる。
③ 電子を放出して陽イオンになった色素がもう一方の電極から供給される電子を電解液中のヨウ素(I)を通じて受け取り、元の状態になる。
酸化チタンは紫外線しか吸収することができません。そこで、光電変換効率を高めるために、可視光を吸収する色素を加えて広い波長範囲の光を利用します。
(株式会社バイノスhttp://www.binoscorp.com/binos_project/taiyoukou/ より)
色素増感型太陽電池の特徴
色素増感型太陽電池には次のような特徴があります。
① 従来のシリコン系太陽電池、化合物系太陽電池と比べて色彩性、デザイン性の自由度が高い。
(例)赤や青、緑といった様々な色の電池が製造可能
円形、星型など自由に切りぬくことが可能
透明な電池、絵柄の電池も可能
② 折り曲げ・薄膜化が可能
③ 低入射角依存性、低照度条件での発電量が従来太陽電池より優れている。
④ 大掛かりな設備を必要としないため製造コストを抑えることが出来る。
⑤ 構造が単純なため量産しやすい。
⑥ プラスチック基板を用いるため軽量化が可能
(独立行政法人中小企業基盤整備機構http://j-net21.smrj.go.jp/develop/energy/introduction/2012011601.html より)
色素増感型太陽電池の活用
各社では、色素増感型太陽電池の特徴を生かしたさまざまな活用が試みられています。
① 工場やプラント関連装置の異常監視や環境データセンシングのワイヤレスセンサネットワーク製品の電源
② 誘導等や地下道の照明
③ 局面(柱など)での広告
④ 建築物の窓ガラスや内外壁、自動車のサンルーフや外板、携帯電話のカバー
(国立研究開発法人産業技術総合研究所http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2013/pr20131206/pr20131206.html より)