全固体電池

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革新型二次電池

リチウムイオン電池(LIB)は、実用化された当初から比べるとエネルギー密度が約3倍になっています。しかし、近年の容量増加カーブは鈍化傾向にあるといわれています。また、安全面で自動車などの車両や住宅での使用には必ずしも万全ではないとの指摘があります。さらに、素材になるリチウムやコバルト、銅といった希少資源は高価なため製造コストが下がりにくく、すべて南アフリカや南米から輸入していることから、将来的な原材料の確保に不安があります。
こうしたことからリチウムイオン電池に代わる次世代二次電池・革新型二次電池が期待されています。

NEDOが2010年に取りまとめたロードマップ「Battery RM2010」では、革新型二次電池が実用化されるのは2030年以降としています。

all_solid_battery_001_r(平成27年度 NEDO『TSC Foresight』セミナー(第2回)『TSC Foresight 車載用蓄電池』 概要平成27年10月30日 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 スマートコミュニティ部http://www.nedo.go.jp/content/100765865.pdf より)

革新型二次電池とは、「Battery RM2010」では「高エネルギー密度のものの場合、金属-空気電池や多価カチオン電池などが考えられ、また長寿命・低価格な電池では、全固体リチウムイオン電池などが考えられる。」としています。「Battery RM2013」では、「革新電池系についての明確な定義はない」としながらも、「現行の電池系では到達し得ないような高い性能を達成し得る可能性がある電池系」としています。例として、金属-空気電池、リチウム硫黄電池、金属負極電池等を挙げています。

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(独立行政法人 経済産業研究所(RIETI)BBLセミナー プレゼンテーション資料 2014年9月18日 「知的財産を巡る近年の動向」 -特許行政年次報告書2014年版及び特許出願技術動向調査からー内山 隆史http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/14091801_uchiyama.pdf より)

全固体電池

ポストリチウムイオン2次電池の有力候補として、全固体電池が最近注目されているようです。開発も急速に進んでいるようで、2015年3月の日経エレクトロニクスは「・・・NEDOが掲げる開発ロードマップを、約10年も前倒す動き」と報じています。

全固体電池は、液体を使わず、構成される要素の全てが固体でできているバッテリーです。そのため液漏れはなく、揮発成分もほとんどないため安全性が高いとされています。また、電池内部の電池の構造を非常に小さくすることが可能であること、電解質は、マイナス40℃でも凍結せず、100℃でもガスにならないため、幅広い温度環境で温度調整装置を使わずに利用できることなど、すぐれた特性があります。
一方、イオンが流れやすい固体の材料(高いイオン伝導性の電解質)、製造時の加圧などの量産のための技術的な課題もありました。

しかし、最近になってこうした問題点を解消し、リチウムイオン電池の性能を上回る開発が相次いでいます。

オハラが開発した全固体リチウムオン電池は、酸化物系材料を用いたもので、マイナス30度の低温下においても駆動し、200度という高温環境でも燃えることがなく、大きな変質劣化も起きないほか、安価に製造できるメリットもあるそうです。

トヨタと東京工業大学が共同で開発した全固体電池は、エネルギー密度がリチウムイオン電池の2倍出力密度が3倍以上になるそうです。

日立造船が開発した全固体リチウムイオン電池は、プレス技術を生かして電解質を加圧成型することでイオン伝導性を向上したため充放電時の加圧が不要になりました。そして、一般的な使用法では、90%以上の容量維持率を7年間保つことができそうです。

他にも、旭化成、出光興産、ソニー、積水化学工業、太陽誘電、村田製作所など多くの企業が開発にしのぎを削っています。

日本だけでなく欧米でも全固体電池のベンチャー企業を傘下に収める動きが活発になっています。

Appleは2016年3月に全固体電池開発に携わる技術者の公募を始め、Dysonは2015年10月に全固体電池の開発で最先端を走るミシガン州のベンチャー企業「Sakti3」を取得したことを発表しています。2015年9月にドイツBosch社が全固体電池の開発ベンチャーの米Seeo社を買収しています。

ところで特許庁の「平成25年度 特許出願技術動向調査 -次世代二次電池-」には、2011年までの全固体二次電池に関する日米欧中韓台加への特許の出願状況が載っています。それによると出願件数3,336 件のうち日本国籍出願人の件数は60.4%を占めており、この数字からは、全固体二次電池では世界をリードしているように見えます。

all_solid_battery_002_r(平成25年度 特許出願技術動向調査 -次世代二次電池- 平成26年2月特許庁 https://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/gidou-houkoku/25_jisedai_battery.pdf より)

しかし、日本の場合、その特許の出願の多くが日本への出願になっています。また、2003年から2012年までの全固体二次電池に関する論文は600件あったようですが、うち日本の発表は34%になっています。日本の場合、特許出願は多いものの論文数のシェアはそれほど高いとは言えません。日本の得意な分野で安泰などと悠然と構えてはいられないようです。

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(独立行政法人 経済産業研究所(RIETI)BBLセミナー プレゼンテーション資料 2014年9月18日 「知的財産を巡る近年の動向」 -特許行政年次報告書2014年版及び特許出願技術動向調査からー内山 隆史http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/14091801_uchiyama.pdf より)

 

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