革新型蓄電池

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革新型蓄電池とは?

最近、革新型蓄電池や革新的電池という言葉がよく聞かれるようになりました。「満電まで5分の超高速充電」「発火しない安全性」「形状自由な柔軟性」などの特徴を有し、リチウムイオン電池を凌駕する蓄電池といった形容もあります。

NEDOの「次世代電池・水素部」の「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発 基本計画」には、EVでガソリン車並みの走行距離を実現しようとした場合、エネルギー密度を現状の5倍程度まで高める必要があり、リチウムイオン電池(LIB)では難しく、電荷キャリア、材料及び構造等が全く異なった新原理の革新型蓄電池を開発する必要があると述べ、具体的には2030年に実用化を目指すEV及び電池パックの性能として例えば次のようなことを挙げています。

・車両走行距離(1回充電あたり)500km

・電池パックコスト40万円(容量あたりコスト1万円/kWh)

・電池パック容量40kWh

・電池パック重量80kg(重量あたりエネルギー密度500Wh/kg)

・電池パック体積70L(体積あたりエネルギー密度570Wh/L)

・電池パック寿命10年以上

・電池パック充電時間:普通充電6時間、急速充電30分

(「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発 基本計画」より)

革新型蓄電池は新しい言葉のようですが、2006年に「新世代自動車の基礎となる次世代電池技術に関する研究会」から出された「次世代自動車用電池の将来に向けた提言」において、2030年以降を念頭に、一回の充電で航続距離約500km、当時のリチウムイオン電池のエネルギー密度の約7倍、コスト1/40にするリチウムイオン電池に替わる新原理の電池開発について述べています。この目標値は、既存のガソリン車と遜色のない利便性を維持すること、10年間保有し続けた場合のトータルコストなどから算出されたものです。

この提言では、パックレベルで重量あたりエネルギー密度は700Wh/kg、体積あたりエネルギー密度は900Wh/L、カレンダー寿命15年となっています。前述の「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発 基本計画」に掲げるアウトプット目標より高い水準となっています。内閣府の「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)推進WG」の資料で示されているロードマップでは、2050年頃の普及として「電池パックの重量エネルギー密度700Wh/kg以上、価格1/10以下」とあり、提言の内容と近いものとなっています。

ちなみに、自動車メーカー、電池メーカー、材料メーカー、大学・研究機関が参加してオールジャパンで取り組む産学連携の全固体リチウムイオン電池の開発プロジェクトでは、2030年での目標を電池パックの体積エネルー密度が現在の3倍の600Wh/L、コストが3分の1の1万円/kWh、EVの急速充電時間が3分の1の10分を目指しています。ですので、2030年時点での性能は全固体リチウムイオン電池とほぼ同じ性能といえるかもしれません。

LIB、全固体LIBと革新型蓄電池

現行のLIBや全固体LIBなどと革新型蓄電池との関係は、経済産業省の「自動車新時代戦略会議中間整理(案)補足資料」の電池の技術進化の状況及び各国の目標を示す図や、同じく経済産業省の平成30年度概算要求資料「次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発」あるイメージ図から、それらの電池より性能が大幅に飛躍した電池といえそうです。

innovative_battery_001_R(自動車新時代戦略会議中間整理(案)補足資料 平成30年7月24日 経済産業省http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/002_01_00.pdf より)

 

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(経済産業省「次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発」 http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2018/pr/en/sangi_taka_22.pdf より)

革新型蓄電池の候補

内閣府の「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)推進WG」の資料には、次世代蓄電池としてリチウム硫黄電池、亜鉛空気電池、Li,Mg,Alなどの新型空気電池、その他の革新型蓄電池としてフッ化物電池, ナトリウム電池、多価イオン(カチオン)電池、新概念のレドックスフロー電池等を挙げています。

(エネルギー・環境イノベーション戦略に関するロードマップ(案)平成29年6月27日 エネルギー・環境イノベーション推進WG事務局 http://www8.cao.go.jp/cstp/nesti/suishin/3kai/siryo2.pdf 参照)他にも、RISINGプロジェクトでは、硫化物電池、ナノ界面制御電池なども上げられています。

それぞれ、特徴や課題があります。例えば、リチウム硫黄電池は、2450Wh/kgという理論重量エネルギー密度を有し、リチウムイオン電池が510Wh/kgですから、現行のリチウムイオン電池(LIB)の約5倍の理論エネルギー密度となります。理論容量も1675Ah/kgで、リチウムイオン電池(LIB)の220 Ah/kgと比べて格段の違いがあります。しかし、電極反応時に中間反応生成物の多硫化リチウムが有希電解液に溶出することや、低い電導性、充放電に伴う体積変化といった課題があります。

また、金属空気電池は、正極に空気中の酸素を利用する触媒材料、負極に亜鉛やアルミニウム、リチウムなどの金属を採用する電池で、小型化や軽量化できること、さらに高いエネルギー密度という特徴があります。A Polymer Electrolyte‐Based Rechargeable Lithium/Oxygen Batteryによれば、亜鉛空気電池は1090Wh/kg、リチウム空気電池は5200 Wh/kg、アルミニウム空気電池は4300 Wh/kgの理論エネルギー密度となっています。しかし、円滑な充電反応、電解質の長期安定性が課題となっています。(https://www.researchgate.net/publication/234902950_A_Polymer_Electrolyte-Based_Rechargeable_LithiumOxygen_Battery 参照)

多価イオン(カチオン)電池は、ひとつのイオンで複数個の電子が移動するため、体積当たりの電気容量は、リチウムイオン電池に比べてMgで約2倍、Alで約4倍になるということ、さらに、リチウムの融点が186℃に対してMgは650℃、Alは660℃で安全性も高いとされています。しかし、カチオン(プラス電荷を持った「陽イオン」)の移動制御が難しいという課題があります。

レドックスフロー電池は、充放電サイクル数に制限がなく電解液も裁量が可能であること、発火リスクも低く安全性が高いこと、運用や大型化・大容量化が容易といった特徴があります。しかし、重量エネルギー密度が小さく、リチウムイオン電池の1/5程度です。

こうした課題を克服して、前述の「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)推進WG」の資料では、リチウム硫黄電池や亜鉛空気電池は2030年頃から、電池パックの重量エネルギー密度500Wh/kg等の社会実装が、Li,Mg,Alなどの新型空気電池、その他の革新型蓄電池はそれよりやや遅れて社会実装というロードマップが示されています。

 

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