生体電池(発電)

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ムーアの法則が当てはまらない電池

様々な研究開発を進めているGoogleXですが、2015年4月のウォール・ストリート・ジャーナルによれば、電池の性能向上に向けた研究も行っているとのことです。半導体の性能向上により、スマートフォンやノートパソコンは飛躍的な進化を遂げていますが、そうした電子機器の依存する電池にはムーアの法則は当てはまらないようで、進化はスピードは遅く、電池の性能はよくても前年比較で数パーセント程度の向上ずつにとどまっているようです。

さて、電池の小型化、大容量化の研究の一方で、電波、振動、照明など周りの環境から電気を作り出すいわゆるエネルギーハーベスティングの研究をはじめ、様々なユニークな電池の研究が進められています。ここでは「生体電池」を取り上げてみます。

心臓の鼓動で発電

体内に埋め込む「ペースメーカー」はバッテリーが必要で、そのため無くなる前に手術で取り替えなければならなく、高齢になるにしたがって手術に伴うリスクも増大するという問題があります。スイスのベルン大学では「自動巻き腕時計」からヒントを得て、自動巻き腕時計の振動を電気に変換する部分を取り出し、心臓にペースメーカーのバッテリーとして取り付けることを考案しました。60kgのブタでの実験では52マイクロワットの電気を生み出すことに成功しています。ぺースメーカーの電気消費量は10マイクロワット程度ですので、十分人に応用できる電源を取り出すことができるようです。現在は小型化や感度を高めるための改良を行っているようで、実用化されれば、バッテリーの交換のための手術が必要なくなるかもしれません。

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(http://www.gizmodo.jp/2014/09/post_15494.html より)

臓器の運動によって発電

アメリカと中国の学者たちから構成された研究チームが開発された装置で、極めて細いチタン酸ジルコン酸鉛のリボンや、コンバーター、バッテリーなどを、生体適合性プラスチック内に収めた構造を持ち、圧電効果によって発電する仕組みとなっています。心臓・肺・横隔膜のように絶えず動き続けている場所に取り付けることで、常に電力を供給してくれます。すでに牛の体内へ埋め込み、動作させることに成功します。

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(http://tocana.jp/2014/01/post_3553_entry.html より)

 

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(http://www.designboom.com/technology/nano-ribbon-implant-produces-enough-energy-to-power-internal-devices-01-23-2014/ より)

ナノ発電機

ジョージア工科大学が開発した技術で、酸化亜鉛ナノワイヤを利用し、ワイヤーが張ったり緩んだりした時に発電する仕組みで、歩いたりする人間の動きや、心臓の拍動などでも発電することが可能です。

ナノワイヤは非常に細く、ナノワイヤ500本で髪の毛1本分にしかならないそうです。5つのナノ発電機を同時に動かすことで1マイクロアンペア、3ボルトの発電能力がありナノワイヤーの数を増やし、多くのナノ発電機をまとめることで、iPodやiPhoneのようなデバイスに対応できる発電能力を生み出すことができるとされています。

ナノ発電機の発電量は小さいが、間欠的に動作するだけでよい装置、例えば1分間に1秒だけデータを収集・伝送するセンサーなどには十分な発電量です。ですので、患者の身体に埋め込んで血糖値を常時監視するバイオセンサー、橋梁などの構造物に取りつける自律的な歪みセンサー、環境中のあちこちに配置して有毒物質を監視するセンサーなどへの応用が期待され、実用化されれば、電池交換なしに半永久的に使用可能となります。

biological_battery_006  (http://www.page-i.com/9144 より)

汗で電気を

汗の中の乳酸を電流に変えるタトゥーシール状の電池が開発されています。人間の身体は血液中のブドウ糖を分解してエネルギーを生産していますが、その際、血液中に乳酸を発生させて皮膚から発汗を行っています。この汗に含まれた乳酸から電子を選り分けて集め、酵素に反応させて弱い電流を発生させるというものです。

開発されたものはシール状で皮膚に貼るだけで機能するまさにタトゥー電池です。まだ、発生する電流は腕時計を動かすにも微弱ですが、今後、電子機器の電源になり得る程度に増強できると見込まれています。

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(http://u-note.me/note/47499166 より)

耳で発電

マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の研究チームが、内耳における蝸牛の生体電位を電源として利用するインプラント型医療用デバイスを開発しました。ほ乳類の内耳は、神経に信号を伝達するための電位を生成するためのイオンで満たされており、電気を生成する機能があることが60年前から判っていました。ですが内耳は聴力という重要は役割があるため、聴力を損なわずに耳を生体電池として利用するということに取り組もうという研究者はいなかったようです。

耳は音を、鼓膜の振動という力学的作用を通じて、脳に伝えるために電気信号に変換しています。この電気信号を生体電池として利用しようというわけです。この生体電池を使った技術は、将来的には聴力やバランスに障害を持つ患者の生体データをモニタするために、あるいは治療に利用することができるかもしれないと言われています。

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(http://sustainablejapan.net/?p=2754 より)

体表面の静電気で発電

切手サイズほどの小片シールで、体表面の静電気を集めるというものです。シンガポール国立大学で開発されました。このシールを皮膚に付けた状態で人が動くと電気を生み出します。摩擦帯電現象を利用しています。

デバイスでは厚さ50ナノメートルの金のフィルムを電極として使っていて、その皮膚側には薄いゴムシートのようなものが貼り付いています。ゴムシートにはさらに小さな支柱みたいなものが無数にあり、支柱と皮膚の間の摩擦が電力源になるわけです。支柱みたいなものを増やすと表面積が大きくなるので、その分発電量も増やせます。

研究チームの実験では、このデバイスを指でつつくだけで90V、0.8mWの電力が生成されました。将来的には、これを服の中に織り込んであらゆる身の回りガジェットを充電したりってことも可能になるかもしれませんよ。

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(https://antenna.jp/news/detail/814843 より)

 

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