MSSアライアンス

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コンピュータが嗅覚を持つ?

2012年12月にIBMが、「今後5年間で人々の働き方、生活、関わり方を変える可能性を持った一連のイノベーション5つの予測」IBM 5 in 5の中に「コンピューターが嗅覚を持つ」という予測がありました。コンピューターや携帯電話に埋め込まれたごく小さなセンサーで、風邪などの病気の前兆を検出できるようになり、さらに呼気の匂いで肝臓疾患、腎臓疾患、など様々な病気の発症を診断できるようになるというものでした。

5年後ですから、まだ2年先の予測ではありますが、2015年11月、C2Sense社が、コンピューターに嗅覚を与える小型チップを開発したとのニュースがありました。ニュースによれば、人間が嗅ぎとれないような微量のエチレンを検出することで腐りかけの食品を嗅ぎ分けることができるチップのようです。またエチレンガスだけでなく、肉から放出されるアミンやアンモニアのようなガスも検出でき、1つのチップで4種類までのガスを検出できるようです。こうした検出器はこれまでもありましたが、価格や精度の点で難点がありました。C2Sense社が開発したセンサは、低レベルのガスでも検出できるほど感度がよく誤検出もなく、かつ手頃な価格であるという点で画期的なようです。

最終的には、買い物をしながらスマートフォンでスキャンして、その商品の新鮮さを知ることを可能にすることのようです。

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(http://www.c2sense.com/ より)

五感とセンサ

人には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5つの感覚器があります。この感覚器と同じような働きを機械で行うのがセンサですが、比較的開発が進んでいるのは、視覚、聴覚、触覚に関するセンサです。さらにセンサは物理センサーと化学センサーに大きく分けられます。物理センサーは、光や音、圧力、加速度、流量などの物理量を測定するセンサーで、視覚、聴覚、触覚に関するセンサーが該当します。化学センサーとは、化学物質の種類や濃度を検知対象とした感覚に対応するセンサで、味覚や嗅覚などのセンサが該当します。

味覚・嗅覚のセンサは対象となる物質の種類が無限であること、濃度が低いこと、曖味な感覚であることなどの理由から定量的・客観的に測定する技術の開発が他の感覚センサに比べて遅れていました。

MSSアライアンスの設立

2015年9月末に、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)が中心となり、MSSの普及やビジネス化を目指して、京セラ、大阪大学、NEC、住友精化、スイスの顕微鏡メーカー・ナノワールドと「MSSアライアンス」が結成されました。

MSSとは、「Membrane-type Surface stress Sensor」の頭文字をとったもので、日本語では「膜型表面応力センサー」と呼んでいる嗅覚センサのことです。住友精化が計測に用いる基準となるガスを提供し、京セラとNanoWorldが計測モジュールの開発、NECと大阪大学はデータ解析を担当します。

MSSについてプレスリリースには次のように記されています。

・・・・ニオイの元となるガス分子から、DNA、たんぱく質など生体分子にいたるまで、多様な分子を大気中あるいは液体中で測定できる、汎用性の高い超小型・超高感度センサー素子です。従来のカンチレバー型センサーと違い、レーザー光が必要無いため小型化が可能となり、かつ従来型に 比べて約100倍の感度を有するなど飛躍的に性能が向上しました。人々の生活、医療等を改善するための要因を把握し、人間や機械が理解できる情報に変換するセンサーシステムの開発に大きく貢献することが期待されています

(国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)http://www.nims.go.jp/news/press/2015/09/201509290.html より)

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(http://www.kyocera.co.jp/news/2015/0905_isgo.html より)

また、その特徴については次のようにまとめています。

高感度 (感応膜次第で、ガス分子に対してppm以上、生体分子に対してnM以上の感度)

超小型 · 集積化 (1チャンネルが1m㎡以下、つまり1c㎡に100チャンネル以上集積可能)

低コスト(シリコン製のため大量生産可能)

高い多様性 · 汎用性 (有機 · 無機 · バイオ系など様々な種類のガスに利用可能)

低消費電力 (1 mW/ch以下、低消費電力化技術により更なる省電力化が可能)

リアルタイム計測 (感応膜やサンプル流量次第で、1秒以下の応答時間)

安定動作 (熱的 · 電気的 · 機械的に安定)

(国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)http://www.nims.go.jp/news/press/2015/09/201509290.html より)

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(http://www.kyocera.co.jp/news/2015/0905_isgo.html より)

MSSは、センサー素子表面の感応膜に空気中の分子が吸着することで対象の分子を検知するわけですが、一つの感応膜で複数の物質を検知できるそうです。反応膜を複数組み合わせることで、さまざまな匂いを判別することができ、16種類の反応膜を用いると、ほぼ自然界に存在する匂いの素となる物質の班別ができると言います。さらに従来型のレーザー光を使ったものと比べ100倍の感応度という優れものです。また、素子は小さくシリコン製であるため量産化すればチップ1枚が100円程度も可能とのことです。早ければ2017年にも事業化を目指すそうですが、当面、個人のヘルスケア分野での健康管理デバイスの実用化を目指しているようです。

IBMの「コンピューターが嗅覚を持つ」という予測の2017年に、本当にスマートフォンに息を吹きかけて体調を把握したり、食材に近づけて鮮度を測ったりといったことが実現しそうです。

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