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DaaSとは
前回、IaaS 、PaaS、SaaSについて書きましたが、今回はDaaS(ダース)について書いてみます。
DaaS は、Desktop as a Serviceの略で、その言葉のとおり個人用のデスクトップ環境をクラウド上に構築し、ネットワーク越しにその環境を呼び出して利用することを提供するサービスです。基本ソフトをはじめ全てのソフトやデータがネットワーク上のサーバーにあります。ユーザの端末は画面を表示する機能とキーボードなど操作に必要な機能だけあればよく、OSやアプリケーションソフトなどはすべてサーバ上で動作します。
(新日鉄住金ソリューションズ http://www.absonne.jp/service/m3daas/ より)
このサービスでは、他の端末からも利用することができます。例えばノートパソコンやスマートフォン、タブレットPCでも利用できるわけです。
ちなみに、デスクトップ環境とは、ウィキペディアではコンピュータのグラフィカルユーザインタフェース (GUI) を提供するソフトウェアで一般にアイコン、ウィンドウ、ツールバー、フォルダ、背景画像、デスクトップウィジェットなどで構成されると定義しています。簡単にいえば、ユーザインタフェースといったところでしょうか。
このように、物理的なコンピュータとデスクトップ環境が切り離され、どのコンピュータからでも自分用の画面・環境を呼び出して使えるという利便性、手元のコンピュータにデータやプログラムを保管しないため、ウイルス感染やセキュリティに強いというメリットからDaaSは注目されているようです。
DaaSサービスの例として、microsoft社のMicrosoft Virtual Desktop Infrastructure(VDI)、VMware社のVMware ViewやCitrix(シトリックス)社のXenDesktop、富士通のワークプレイスLCMサービス、tuCloud社のhosted virtual desktopサービス、日本IBM社のSmart Business Desktop、インターネットイニシアティブ(IIJ)社のIIJ GIO 仮想デスクトップサービスなどがあります。
(http://mikilab.doshisha.ac.jp/dia/monthly/monthly2013/mlm143/skashiwagi/skashiwagi.pdf より)
DaaSの3つの形態
DaaSの形態は大きく次の3つがあります。
① プライベートクラウドDaaS
ある特定の企業だけに構築されたコンピューティング環境で、構築された環境はその企業専用のものとなります。メリットとしては、物理的に独立しているため、セキュリティ面での安全性が高いことや快適で安定した操作、自由なカスタマイズが可能と言った点が挙げられます。自由にカスタマイズでき、より安定した仕組みを作ることができるのでセキュリティ面にも優れています。課金形態としては月額モデルなので、初期投資が少なく済むというメリットもあります。
② バーチャルプライベートクラウドDaaS
サービス事業者が自身の提供するIaaSもしくはPaaS上に仮想デスクトップ環境を載せて提供するものです。
③ パブリッククラウドDaaS
その名の通り、その言葉通り誰でも使えるクラウドサービスで、アプリケーションも含めたサービス事業者のITリソースを複数のユーザ企業で利用する形態です。
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)とDaaS
デスクトップ仮想化には例えば次のような方式があります。
① サーバー共有デスクトップ
1つのサーバーOSを複数ユーザーで仮想デスクトップとして共有する
② VDI
クライアントOSをサーバー仮想環境で稼働させユーザー毎に配信を行う
③ リモートPC
外部のPCからオフィスにあるPCへ1対1で接続し、画面を転送する
④ ネットブート
「リモートPC」。OSやアプリケーションイメージ化し、ネットワーク経由でブート、実行する
⑤ クライアントハイパーバイザー
デスクトップ仮想化環境をオフラインでも実行可能にする
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)とは、サーバ上で稼働する仮想マシンにクライアントPCが接続するためのリモートアクセス機能を提供するサービスで、デスクトップ環境をサーバー側で実行するかクライアント側で実行するかでリモートデスクトップ方式とクライアントハイパーバイザー方式に分かれます。インターネット越しにクラウドから提供した場合はDaaS (Desktop as a Service)であり、DaaSはVDIの技術を使用していると捉えることが出来そうです。
資料:ヴイエムウェア
DaaS VDI メリット 〇IT担当者はリソースのプロビジョニング、ロードバランシング、ネットワークなどのインフラを管理する必要がない 〇初期のインフラ調達費用を必要としない(初期コスト/運用コスト/運用負荷を削減できる)
〇一般的に導入速度が早い(短期間で利用開始できる)
〇柔軟にユーザー追加が可能(ユーザタイプに応じたデスクトップ環境が選択できる)
〇ITインフラの全てを管理しているのでコントロール、カスタマイズが可能 〇実際にユーザーが利用する画面等のエンドポイントのカスタマイズも可能
デメリット ●アプリケーションの互換性を検討する必要がある●大容量のデーターをやり取りする場合にパフォーマンスが問題になる場合がある ●多額な先行投資が必要●デスクトップからハイパーバイザーまで多様な知識を有しているIT管理者が必要
(ナレッジコミュニケーション http://recipe.kc-cloud.jp/archives/4940 参照)
DaaSの導入に当たって
DaaSの導入に当たっては、次のようなことが重要なってくると考えられます。
① 現在のデスクトップ環境の利用状況を把握する
・ 全社プロジェクトとしてDaasを展開した場合に、エンドユーザからかえって不便になったとか、本来の目的が達成されなくなってしまうことにならないように、事前にユーザタイプ、使い方、この先のスペックやアプリケーションが必要性などを把握することが重要と考えられます。
② 現在のネットワーク環境の把握
・既存のネットワーク環境が脆弱なためレスポンスタイムが低下し、エンドユーザの業務効率も低下してしまうということが起きないように社内のLAN環境も含めて既存システムとの接合性を調査しておくことが重要になります。
③ 費用対効果(サービス導入によるコスト削減効果)の把握
・利用年数や必要とするスペックの進化なども考慮に入れて、オンプレミスとDaaSとのコスト比較を行うなどの費用対効果を確認するとともに、DaaS利用による業務効率の向上以外の目に見えない部分のコスト効果といった投資対効果も視野に入れて導入による効果を算定することも重要と考えられます。