Bluetoothは携帯情報機器の接続に使われる短距離無線通信技術で、IEEEによってIEEE 802.15.1(※1)として標準化されています。免許の必要がない2.45GHz帯の電波を利用し、最高24Mbpsの速度で通信を行うことができます。
現在、Bluetoothのバージョンは1.1、1.2、2.0、2.1、3.0、4.0、4.1、4.2とあり、「Bluetooth Low Energy(BLE)」と呼ばれる省電力機能は、バージョン4.0の最大の特長で、バージョン3.0と比べて約60%の省電力化を実現しています。
バージョン4.0にはBluetooth SmartとBluetooth Smart Ready(デュアルモード)の2種類の規格が存在し、Bluetooth Smart Ready対応機器同士でのみ、Bluetooth Low Energy(BLE)による低消費電力モードでの通信が可能です。
※1:IEEE 802.15.1はbluetoothですが、WifiはIEEE 802.11規格です。ZigBeeの規格はIEEE 802.15.4、Wi-SUNの規格はIEEE 802.15.4gとなっています。
目次
バージョンと特徴
ver1.1 | 普及バージョン |
ver1.2 | 2.4GHz帯域の無線LAN(11g/b)との干渉対策が盛り込まれた |
ver2.0 | 「EDR」対応ならver1.2の約3倍のデータ転送速度(最大3Mbps)を実現 |
ver2.1 | ペアリングが簡略化されたマウスやキーボードのバッテリー寿命を最大5倍延長できるSniff Subrating機能(=省電力モード)が追加 |
Ver3.0 | 従来の約8倍のデータ転送速度(最大24Mbps)を実現電力管理機能を強化し、省電力化を向上 |
Ver4.0 | 大幅な省電力化を実現する低消費電力モード(Bluetooth Low Energy=BLE)に対応、 通信速度1Mbps |
Ver4.1 | LTEとの干渉抑制、IPv6対応 |
Ver4.2 | セキュリティ強化(FIPS対応)、転送速度の高速化(最大2.5倍) |
Class
Classは3種類あり、それぞれのClassに電波到達距離の目安が規定されています。
Class | 電波到達距離 |
Class1 | 最大100m |
Class2 | 最大10m |
Class3 | 最大1m |
プロファイル
「できること」を表すプロファイルは、機器ごとに様々。スマホとヘッドセット、パソコンとマウスなど、接続するBluetooth対応機器同士が、同じプロファイルに対応していることで、その機能が利用できます。
プロファイル名 | 機 能 |
---|---|
DUN | 携帯電話・PHSを介してインターネットにダイヤルアップ接続 |
FTP | パソコン同士でデータ転送 |
HID | コンピュータにマウスやキーボードを接続する |
OPP | 名刺データの交換などをおこなう |
HSP | ヘッドセットと通信 |
HFP | 車内やヘッドセットでハンズフリー通話 |
A2DP | ヘッドフォン・イヤフォンに音声伝送 |
AVRCP | AV機器のリモコン機能(再生、一時停止、音量調整など) |
バージョン4で使えるプロファイルの名称と機能
プロファイル名 | 機 能 |
---|---|
Battery Service Profile | バッテリー残量情報を提供 |
FMP | 見失ったデバイスを探す |
TIP | 時刻の修正 |
ANP | 音声/メール着信を通知 |
PASP | 電話着信を通知 |
HOGP | 低消費電力で機器を接続 |
SPP | Bluetooth機器を仮想シリアルポート化 |
BPP | プリンターへ転送、印刷 |
HCRP | ファイルの印刷・スキャン |
BIP | 画像の送受信・印刷 |
PAN | Bluetooth経由でネットワーク接続 |
VDP | ビデオデータをストリーミング配信 |
PXP | 接続機器間の距離をモニタリング |
Bluetooth 4.2の特徴
〇転送速度の向上
Bluetooth 4.2では、Bluetooth Smartデバイス間のデータ転送速度と信頼性を向上させ、既存の4.1に比べBluetooth Smartパケットの容量を10倍に増やしたことで、デバイスのデータ転送速度を最大2.5倍高速化しています。速度とパケット容量が増えたことで、送信エラーの発生を減らし、電力消費量を削減するため、より効率性の高い接続性を実現します。
〇プライバシーとセキュリティの強化
FIPS(Federal Information Processing Standard)」に準拠し、不正なトラッキングを防ぎ、プライバシーの制御をユーザ自身で管理できるようにしています。例えば、ビーコンを使用している小売店で買いものをする際、ビーコンからの通知をあらかじめデバイス側が許可しない限り、トラッキングはされません。
〇インターネット接続
IPv6(※2)での接続が可能になり、IPSP(Internet Protocl Support Profile)をサポートしたことで、IPv6通信をそのままBluetooth 4.2対応機器で伝送できるようになります。Bluetooth 4.2機器が固有のIPが割り当てられるため、外部との連携も行えるようになります。
※2:IPv6とは、Internet Protocol Version 6の略です。これまでのIPv4が32ビットであったのに対し、IPv6は128ビットであるため、事実上無限の数のIPアドレスが可能です。
Bluetooth Low Energy(BLE)
Bluetooth4.0の拡張仕様として策定された超低電力で通信が可能なもので、BLEとも呼ばれています。2.4GHz帯(ISMバンド)の電波を用い、最大1Mbpsの通信が可能で、ボタン電池一つで数年稼働するとされています。従来のBluetoothでは同時接続は最大7台でしたが、BLEでは制約がありません。通信距離は2.5mから50mです。Bluetooth Low Energy対応の製品は「Bluetooth Smart」というブランド名で呼ばれています。
Bluetooth4.0に統合されたBluetooth LEは、Bluetooth3.0までの技術とは異なる技術のため、互換性がないと見た方がいいようです。Bluetooth LEだけに対応した周辺機器(シングルモード)は、Bluetooth3.0までの対応機器とは接続できません。
Bluetooth LEの使い道としては、低頻度の通信、必要な時だけに通信する分野に向いています。例えば、テレビのリモコンのようなデバイスです。他にも、ヘルスケアの分野では歩数計や心拍数、体温などをセンサデバイスからスマホなどに送信するような場面での活用も考えられます。AV機器、車体センサー、ホームオートメーションなど様々な分野での活用が想定されています。
Bluetooth LEデバイスは、「アドバタイズメント・パケット」というID情報を発信します。このパケットの受信信号の強度から、デバイスとの距離がおおまかに算出できます。また、パケットには、20バイト程度の任意のバイト・データを入れられることから、これを屋内測位や位置ビーコンに応用できます。いわゆるiBeaconです。
BeaconとBluetooth
Beaconとは、一つひとつのBeaconを識別するIDや、電波強度を示す識別子などを発信するデバイスであり、Bluetooth Low Energy(BLE)を使ってスマートフォンの位置情報を特定し、ロケーションに合わせて必要な情報を配信する仕組みも指します。Beaconが直接、情報を発信するのではありません。顧客が近づくと、スマートフォンのアプリがBeacon信号を受信し、専用サーバーに問い合わせます。専用サーバーからアプリに表示する仕組みになっています。Beacon及びiBeaconについては、こちらのページでも詳しく扱っています。