情報統合型物質・材料開発イニシアティブ

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情報統合型物質・材料開発イニシアティブ

最先端の情報科学・データ科学の材料開発への実装を図り、産業界における物質・材料に関する課題・ニーズに対する有効なソリューションを短期間で開発・提供することを目標としたプロジェクトがスタートしました。JST(科学技術振興機構)「イノベーションハブ構築支援事業」にNIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)が拠点実施機関として提案し、7月から運用が始まった「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」です。

これは、2011年に米国が発足させたプロジェクト「マテリアルゲノムイニシアチブ」に対抗するもので、予算は年間4億円で5年間のプロジェクトです。アメリカの「マテリアルゲノムイニシアチブ」にはすでに2億5千万ドルが投入されていることを考えると、何とも寂しい予算です。

マテリアルゲノムイニシアチブ

アメリカのマテリアルゲノムイニシアチブは、ヒトゲノムで行われたようにコンピュータを徹底的に活用して新しいマテリアルの研究開発を行おうというプロジェクトで、情報科学を駆使しすることで、優れた性能をもつ新材料を生み出す速度を従来の2倍に高めることを目指しています。

材料科学は、対象となる物質の組み合わせが膨大で、組み合わせのわずかな違いで特性が大きく変化します。そのため、新素材の開発と実用化に10年や20年といった長い期間かかるのは珍しいことではありませんでした。だからこそ、研究者の長年の経験がものをいう分野でもあります。そうした材料研究の分野にデータ駆動型アプローチという手法を取り入れし、材料開発期間を半分に短縮しようというのがマテリアルゲノムイニシアチブです。

日本版マテリアルゲノムイニシアチブの概要

アメリカのマテリアルゲノムイニシアチブでは、人工知能などの最先端の情報科学・データ科学を用いて、既存のデータベースから材料の組成や構造を割り出すというアプローチをしています。そして、こうした手法で導き出された新しい材料を特許申請するということが行われています。

データを活用した設計型物質・材料研究は「マテリアルズ・インフォマティクス」と言われ、材料合成、先端計測、理論・計算、データ解析の4手法をフル活用した研究開発がその特徴です。

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(科学技術イノベーションにおける統合化 ー研究開発・ものづくりにおけるパラダイムシフトー独立行政法人科学技術振興機構 理事長 中村 道治 より)

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(高効率に革新的な物質・材料を 探索・設計するための マテリアルズインフォマティクスの推進 平成26年8月1日文部科学省 研究振興局 参事官付(ナノテクノロジー・物質・材料担当 より)

このような多様で膨大なデータを駆使した物質機能の理解や材料開発はアメリカに限らず、欧州のComputational Materials Engineering(マルチスケール計算材料科学の確立)や 中国のChina MGI(中国版Material Genome Initiative) 、韓国のCreative Materials Discovery Project(2015年からを10年計画)など、各国で推進されており、日本においてもデータ駆動型の潮流に乗り遅れることのないように機械学習などの最先端の情報科学を駆使した解析と組み合わせた新規物質・材料を進めようというのが情報統合型物質・材料開発イニシアティブのようです。

日本のプロジェクトは、企業17社、14大学、7研究機関、5つの海外研究機関との多岐にわたる連携によって推進され、そのハブとなるのがNIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)です。また、プロジェクトは「データベースの整備」「ツールの開発」「応用研究」の3層からなります。

データベースの整備では、NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)が運営する世界最大級の物質・材料データベース「MatNavi」がありますが、ビッグデータ解析を前提として整備されていないため、マテリアルズ・インフォマティクス向けの使いやすいデータベース構築を進めるとともに、テキストマイニングを用いて研究論文の情報を自動的にデータベース化する技術の開発もの行うとのことです。ツールの開発では、データ科学を応用した材料研究のソフトウェアの実現やディープラーニングの研究などが行われるようです。具体的には、結晶・フォノン構造、電子構造、ミクロ組織、界面、材料特性等の使いやすいデータベースの構築を進めるとともに、データ検索・可視化、機械学習、統計解析、シミュレーション等のデータ科学的なツールの開発を行うそうです

応用研究では、社会的に波及効果の高い「磁性材料」「蓄電池材料」「伝熱制御材料」などの開発・実装を目指すそうです。

少ない予算の中で、先行する米国にどこまで追いつけるか、他の国との競争で優位に立てるのかプロジェクトの行方と成果が注目されます。

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(科学技術振興機構報 第1107号 http://www.jst.go.jp/pr/info/info1107/besshi2.html より)

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