2025年問題

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2025年問題

2025年問題というと、一般には団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者 (75歳以上)に達し、それによって介護・医療費等社会保障費が急増することによって生じる問題を指しことが多いようです。ちなみに、現在1,500万人程度の後期高齢者人口が、あと10年もすると約2,200万人まで膨れ上がり、全人口の4人に1人が後期高齢者という社会になります。

他にも2025年問題があります。昭和100年問題とも言われているものです。日本の公文書では年号を元号で記載するのが一般的です。ところが昭和から使っていたものが、2025年に昭和100年となり、昭和0年と認識されてしまう恐れがあるというのです。以前の2000年問題と同じ問題です。ただ、昭和が終わって随分立ちますから、昭和期のコンピュータシステムがどれだけ稼働しているか疑問ですので、大きな問題にならないのではという意見もあります。

まだ2025年問題があります。固定電話やISDNなど既存の公衆交換電話網(PSTN)が交換機の寿命によって2025年までに廃止されるという問題です。交換機はすでに製造が停止されており、現在ある機器は長くてもあと10年の寿命と言われています。NTTによれば、2020年ごろから使えないものがでてくるとのことです。予備の交換機を使ったとしても2025年が限界とのことで、それまでに現在の公衆交換電話網(PSTN)をIP(インターネットプロトコル)網へ移行してことになっていますが、なかなかスムーズにはいかないのではないかとの見方もあります。

固定電話の状況

2015年7月に総務省が公表した「通信利用動向調査」によると、下図のように固定電話の世帯保有率は75.7%で、その割合は年々減っています。

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(総務省 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/150717_1.pdf より)

固定電話の保有率を世帯主の年齢で見ると、20代世代では11.9%と極端に低くなっています。30代世帯でも50%にしかなりません。

tel_003_R(総務省 通信利用動向調査(世帯編)データhttp://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05b1.htmlより作成)

また、総務省情報通信政策研究所「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」(平成27年5月)によれば、下図のように固定電話の利用時間や利用率がどの世代とも他のメディアに比べて少なく、10や20代に至っては固定電話をほとんど利用していないのが実態です。

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(総務省情報通信政策研究所「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」(平成27年5月)より)

IP網の必要性と移行時期

ブロードバンドサービスの利用環境を構築するには、アクセスだけ光化(=IP化)しても、コアネットワークがIP化していなければ実現できないことや、コアネットワークのIP化は世界的潮流であることなどを理由として挙げています。ユーザー側からすれば、通信サービスに求めるものが音声だけでなく、映像など多様になってきたこともIP化が必要な理由として挙げられます。そして、基盤となるネットワークもIP技術を使って、すべてのアプリケーションを扱えるように構築したほうが効率が良いということもあります。

では、いつから移行が始まるのでしょうか。公衆交換電話網(PSTN)のIP(インターネットプロトコル)網への移行(マイグレーション)について、2011年のNTTの報告では、切替に必要な期間は5~6年かかること、周知期間が必要なこと、他事業者との接続におけるIP網同士の接続や双方向番号ポータビリティあるいはシステム開発等にある程度の期間が必要なことなどから、具体的には2020年頃から開始する計画のようです。ただ、前倒しして実施すべきとの意見もあるようで早まる可能性もあります。

PSTN(コアネットワーク)のマイグレーションに向けたスケジュール tel_006_R

(電話網(PSTN)からIP網への円滑な移行について(2011年6月10日)西日本電信電話株式会社 東日本電信電話株式会社より)

移行に伴う課題は?

課題の一つとして、全国一律のサービスが義務づけられた「ユニバーサルサービス制度」があるようです。これは法令によってNTTが全国あまねく提供しなければならないサービスで、具体的には加入電話(基本料)又は加入電話に相当する光IP電話、第一種公衆電話(総務省の基準に基づき設置される公衆電話)、緊急通報(110番、118番、119番)です。毎年赤字を計上しており、2013年度の収支は下図のようにNTT東日本が約442億円、NTT西日本が約376億円の赤字となっています。しかし、法令で定められていますので勝手にやめることもできません。このユニバーサルサービスの提供に必要なコストは、NTTの他、NTT東西に接続する接続電気通信事業者等(負担事業者)が負担金を拠出しています。

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(総務省http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/universalservice/seido2.html より)

加入電話から加入電話への発着信は全体の14%程度しかなく、さらに事業は赤字であり、移行には多額の経費がかかることから、固定電話の維持に特化した現行のユニバーサルサービス制度の見直しを求める声もあるようです。

総務省の情報通信審議会は2014年12月に出した答申「2020 年代に向けた情報通信政策の在り方-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて-<平成26 年2月3日付け諮問第21 号>」では、ユニバーサルサービス制度について、当分の間維持していくことが適当であると述べつつも、次のように述べています。

・・・・固定電話の維持に特化した現行のユニバーサルサービス制度については、携帯電話やブロードバンドの未整備地域の解消やサービスの提供状況等を踏まえて、見直しの検討を行うことが適当である。なお、ユニバーサルサービス制度の対象となるサービス、地域、サービス提供のための技術、費用負担等の在り方の検討に当たっては、我が国の人口急減・超高齢化に直面していることを踏まえ、負担と受益の関係に留意する必要がある。

二つ目の課題とし、公衆交換電話網(PSTN)の機能やサービスをどこまで引き継ぐか、あるいは引き継げるのかということです。たとえば、他の通信事業者も利用するハブ機能をIP網で実現するには相応の投資が必要となることや緊急通報や公衆電話には単純に引き継げない機能があることなどです。

そういえば、昨年大雪で停電になりIP電話が使えなくなって安否確認ができなくなるということが生じました。光ファイバーネットワークを通じて家庭などへ電源を供給する「光給電」というしくみもあるようですが、そのための通信設備の増強には新たな投資が必要となりますし、無停電電源装置(UPS)だと利用者に負担を強いることになります。無停電電源装置(UPS)にしても数時間しか持ちません。こんなことから、IP電話は災害に弱いという印象を持つ人も多いようです。また、IP電話が他人に乗っ取られるということも起きました。こうしたユーザの理解を得ることも大きな課題と言えそうです。

また、企業においては、電話回線を利用したレガシーなEDI(商取引に関する情報を標準的な形式に統一して、企業間で電子的に交換する仕組み)をインターネットEDIへ移行させなければならないという問題があります。移行に伴っては、各企業は相手先に合わせて従来型のEDIシステムと次世代対応のシステムの2種を運用する必要が出てきます。当然ながら、そのための管理・維持・両者の統合に伴って今まで以上のコストがかかることになります。

さまざまな課題を抱えてはいるようですが、電話の2025年問題がどのように進展していくのか注視したいものです。

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