研究開発の俯瞰報告書から

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科学技術俯瞰情報報告書

科学技術振興機構(JST)は4月17日に、エネルギーや環境、生命科学、ナノテクノロジーなどの研究領域についての国内外の研究動向をまとめた「研究開発の俯瞰報告書(2017年)」を公表しました。
報告書は2年ごとに公表されており、今回は、「エネルギー分野」「環境分野」「システム・情報科学技術分野」「ナノテクノロジー・材料分野」「ライフサイエンス・臨床医学分野」の5つの専門分野の168の研究開発領域についてまとめられています。

科学技術振興機構(JST)のプレスリリースによれば、

①世界の技術革新の潮流としては、「情報技術の進展が各分野における研究開発のパラダイムシフトを起こしている」「持続可能な開発目標への科学技術の貢献の期待が増している」「膨大な知識の蓄積を社会にどう生かせるかというシステム化の考え方が重要になっている」といったことが把握されたとしています。

②科学技術における日本の位置づけについては、日本が世界にリードする研究・技術開発として、「蓄電池燃料電池、耐熱材料、温室効果ガス観測衛星、情報セキュリティーにおける暗号技術、物質創製・材料設計技術や計測・分析技術、免疫研究やiPS関連研究」などを挙げています。

③日本の挑戦課題としては、「AI/IoTの技術革新や計算・データ科学系の研究者の育成」などを挙げています。

(科学技術振興機構報 第1251号 http://www.jst.go.jp/pr/info/info1251/index.html より)

システム・情報科学技術分野の俯瞰

〇 技術革新の潮流

システム・情報科学技術分野における世界の技術革新の潮流については、

「システム・情報科学技術が急速に進歩した一方で、ムーアの法則の限界、コンピューティングアーキテクチャの行き詰まりが顕在化」「ビジネス、他の科学技術分野、および社会への適用が進み、米国が主導的」「中国、韓国でも社会適用が進展」「新たな科学技術に対するELSI への対処など国際的整備の重要性」

(研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2017年)http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2016/FR/CRDS-FY2016-FR-04.pdf 参照)

などを挙げています。

〇 日本の位置づけ

科学技術における日本の位置づけについて、強みとして次のようなことを挙げています。

①量子コンピューティングの基礎理論の構築
②セキュリティーにおける暗号技術の研究開発
③ビッグデータやAIにおける独自の機械学習アルゴリズム
④ロボット、言語処理へのアルゴリズムの適用

(研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2017年)http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2016/FR/CRDS-FY2016-FR-04.pdf 参照)

一方弱み・不十分なものとしては、次のようなことを挙げています。

①新たな技術を生かした新規事業の創出
②ビッグデータの蓄積・利用
③規制緩和、法的整備、ビジネスモデルの創出
④国際的制度の枠組みの構築などに対する日本の参画

(研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2017年)http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2016/FR/CRDS-FY2016-FR-04.pdf 参照)

〇 挑戦課題

システム・情報科学技術分野では、基盤レイヤーと戦略レイヤーという2 層で俯瞰を捉えています。基盤レイヤーというのは、学問分野として確立された区分で、基盤技術として世界に通用するものを生み出すための研究開発に着眼したもので、戦略的レイヤーはその上位層に位置し、社会的価値として大きなインパクトを生み出す研究開発領域です。具体的には、基礎レイヤーは「人工知能」「ビジョン・言語処理」「通信とネットワーク」など12の領域が挙げられています。

birdeye_001_R(研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2017年)http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2016/FR/CRDS-FY2016-FR-04.pdf より)

戦略的レイヤーは「知のコンピューティング」「CPS/IoT/REALITY 2.0」「社会システムデザイン」「ビッグデータ」「ロボティクス」「セキュリティー」の6領域からなっています。

birdeye_002_R(研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2017年)http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2016/FR/CRDS-FY2016-FR-04.pdf より)

日本の挑戦課題として、この戦略的レイヤー設定が重要であるとしています。そして、①知のコンピューティングでは「合意形成とELSI 対応」、②CPS/IoT/REALITY2.0では「サービスコンポーネント化とプラットフォーム構築技術」、③社会システムデザインでは「実システムの分析に基づく課題抽出」、④ビッグデータでは「実問題に対応する人工知能技術と新計算原理の確立」、⑤ロボティクスでは「システム化技術とソフトロボティクス」、⑥セキュリティーでは「IoT に向けた対象の拡大、実課題に対応した国産技術の育成」などを日本の挑戦課題としています。

〇 CPS/IoT/REALITY 2.0では

ここでは、REALITY 2.0 に向けて必要となる研究開発領域を、①モノ・ヒト・コトのインターフェース、②CPS/IoT/REALITY 2.0 アーキテクチャー、③モノ・ヒト・コトのスマートなサービス化技術、④ソフトウエアデファインドソサエティーのサービスプラットフォーム、⑤REALITY 2.0 による社会デザインの5つにまとめています。そして、この分野において日本は、「企業や業界横断的な設計になっておらず、国際的な標準化が進めづらいという弱みがある」と述べています。一方で、個別企業における先進的な技術や産学官連携の様々な動きや研究開発などから業界横断的な取り組みの推進が期待できるとしています。

また、サービス化技術としてモノ、ヒト、コトのAPI 化や管理設計技術、サービスの仲介技術、サービスプラットフォーム構築技術として、ユーザーの需要動向把握、サービスのオーケストレーションや認証認可技術が重要と述べています。

CPS/IoT/REALITY 2.0での上記の①~⑤の国際比較(日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国)を見ると、ほとんどの国が「成果が見える」あるいは「ある程度の活動・成果が見えている」となっており、直近2年程度の取り組み状況も上昇傾向ないしは現状維持となっています。そうした中で日本だけが、「CPS/IoT/REALITY 2.0 アーキテクチャー」において、「下降傾向」となっているのが気になります。報告書には、「CPS/IoT/REALITY 2.0 アーキテクチャー」の基礎研究には「国際的存在感は希薄」「人材育成計画が示されておらず、不透明感が強い」とあります。応用研究・開発には「人材を育てられる大学教員が稀少」「企業では撤退して人材を減らす状況が続いている」と記されています。

(研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2017年)http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2016/FR/CRDS-FY2016-FR-04.pdf 参照)

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