植物工場とテクノロジー

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植物工場の現状

植物工場とは、施設内の温度、光、炭酸ガス、養液などの環境条件を自動制御装置で最適な状態に保ち、作物の播種、移植、収穫、出荷調整まで、周年計画的に一貫して行う生産システムのことです。1年中安定的に生産できる、工業団地・商店街の空き店舗等農地以外でも設置できる、多段化で土地を効率的に利用できる、自動化や多毛作で高い生産性を実現できる、品質が揃うので加工が容易、栄養素の含有量を高めることが可能、無農薬で育てられるなどの特徴があります。
日本では植物工場のタイプを「人工光型」「人工光・太陽光併用型」「太陽光型」と分けているようですが、オランダでは太陽光型は「グリーンハウス(温室)」と呼んでいてプラントファクトリーとは呼ばないようです。日本の場合、補助金の関係があって3つのタイプに分けてとらえているとの話もあります。
ところでこの植物工場ですが、経営的には苦しいようです。2015年7月のBusiness Journalの記事に「倒産続出、75%が赤字、植物工場でビジネスは無理?放射能汚染地や昭和基地が適地?」というタイトルの記事が掲載されました。限られた空間で効率良く野菜生産ができる植物工場が、高コストに加え、栽培方法が確立されず、普通の野菜との差別化も曖昧という三重苦に悩んでいるとい内容でした。
また、2015年9月の日経ビジネスでは、「植物工場はまだ未熟な技術」とのタイトルで、第一人者の「未熟」「始まったばかり」との指摘を紹介しています。
一般財団法人日本施設園芸協会から出されている報告を見ても、人工光型に関しては黒字が20%余りで、半数以上が赤字の状態です。植物工場を建設するための初期投資は規模にもよりますが数億円が必要な場合もあります。さらに空調に電気代とかさみ、露地栽培の2倍のコストがかかるといわれています。

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(大規模施設園芸・植物工場実態調査・事例集 平成28年3月 一般財団法人日本施設園芸協会より)

そんな採算の合わない植物工場ですので、いったん進出したものの、早々に撤退するところもあるようです。しかし、全体としてみれば植物工場は年々増えています。

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(大規模施設園芸・植物工場実態調査・事例集 平成28年3月 一般財団法人日本施設園芸協会より)

農林水産省は2016年度から農地での植物工場の建設を認めることにしましたので、植物工場へ進出する企業は今後とも増えてきそうです。調査会社の富士経済(東京・中央)によると、企業による栽培ビジネスは、農作物の栽培にとどまらず、加工、流通、販売との連携を意識した取り組みが増加しており、六次産業化や農業をベースとした地域活性化、自らが生産から販売のバリューチェーンを繋ぐコーディネーターとなるような取り組みなど多様化していると分析、市場規模も2015年の151億円から2020年には263億円になると予測しています。

植物工場のテクノロジー

〇 Smart plant

コンピュータ通信機器販売、システム開発などを手掛けているスタンシステムが運営する植物工場は、温度センサ、湿度センサ、CO2センサ、水分センサ、pHセンサ、導電率センサ、LED光装置、ウェブカメラを配置して、各装置から作物の栽培環境に関するデータを自動収集し、IoTによりクラウドへ伝送されています。蓄積されたデータは、スマホ、タブレットからも確認できます。そうしたビッグデータは分析され、作物ごとの栽培レシピが作成され、栽培レシピに基づき、工場に配置した赤、青、緑のLED管のオン/オフを自動制御して、作物に照射する光力を調整します。
この工場の運用で得た実績とノウハウをベースに開発したLED植物工場用栽培環境最適化システムがSmart Plant(スマートプラント)と呼んでいます。

Smart Plantサービスメニュー

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(http://www.stansystem.co.jp/sol/smp より)

〇 昭和電工のSHIGYO

昭和電工は、植物育成用LED照明を用いた植物工場システム(SHIGYOファクトリー)の販売および高速栽培法S法(SHIGYO法)の栽培技術サポートを行っています。SHIGYOとは共同開発者の山口大学農学部の執行正義教授の名字を取って命名されたものです。LED照明SHIGYO灯は光合成用赤色LEDと青色LEDを組み合わせた植物育成用のLED照明です。
植物の光合成には光の3原色である赤色、緑色、青色のうち、赤色と青色の光が使われてます。SHIGYO法では、野菜に赤色の光のみを12時間、次に青色の光のみを12時間、交互に照射すします。そうすることで、野菜は従来の植物工場で使われていた蛍光灯に比べて成長速度が大幅に向上します。フリルレタスの場合、蛍光灯では収穫までに42日間かかるのに対し、SHIGYO法であれば32日間で収穫できるそうです。このLED照明と栽培ユニットのSHIGYOユニットおよび養液循環装置などで構成された大型植物工場システムが「SHIGYOファクトリー」です。

plant_factory_003_R(http://www.sdk.co.jp/products/49/13496/13495/14857.html より)

〇 井関農機の「植物育成診断装置」と「MINORI+(ミノリプラス)」

井関農機の「スマート農園」は栽培のあらゆる工程をデータで管理し、愛媛大学と共同開発した「植物生育診断装置」によって人の目には見えない「病」の兆候をチェックするというものです。
土は使用せず、岩を溶かして繊維状にしたロックウールを使用しています。これによって最適な水の管理を可能にしています。養液の量は天候によっても自動調整され、データで一括管理されていて無駄が生じないようにされています
また、複合環境制御装置MINORI+によって、農園内の各種設備の状況や生育環境などを画面上で数値化し、一覧にして「見える化」するとともに、植物にとって最適な温度・湿度・光環境・炭酸ガス環境になるように機器の制御、日射量に応じた給液量の自動調節制御。、パソコンやスマートフォンで遠隔監視などもできるようになっています。

plant_factory_007_R(http://www.iseki.co.jp/plant/ より)

〇 MITのCityFarm

CityFarmはマサチューセッツ工科大学の植物工場プロジェクトです。土を使わずに空中に吊り下げて栽培するエアロポニック(Aeroponics)(※1)と呼ばれる方法で栽培されています。
植物の葉に設置したセンサーのデータをもとに栄養素を含んだ水をスプレーする時間や量などの判断をしています。光合成に必要な赤色と青色の調整も行っています。
CityFarm では、従来に比べおよそ3~4 倍の速さで栽培することができ、約5.5 平方メートルの敷地から300 人分の野菜や果物を栽培できるそうです。
(※1)専用の土台の上に植物を設置し、下に伸びた植物の根に最小限の水と液体肥料をスプレー噴射する栽培方法です。
(ニューヨークだより2016 年4 月「米国における農業とIT に関する取り組みの現状」八山 幸司 参照)

〇 AeroFarms

ベンチャー企業のAeroFarms 社は年間30 回の収穫と最大90 万トンの生産が可能であるという世界最大規模の植物工場を立ち上げました。栽培では、温度、湿度、二酸化炭素、酸素などのデータを監視し、リアルタイムでハーバード大学やMIT に送られ、機械学習などを使用して植物の成長の予測分析を行っています。
(ニューヨークだより2016 年4 月「米国における農業とIT に関する取り組みの現状」八山 幸司 参照)

〇 ルートレック・ネットワークスの「ZeRo.agri」

異業種の電機などの大手企業がこぞって植物工場に参入する中で、ルートレック・ネットワークスの「ZeRo.agri」は中小規模の施設園芸農家を対象にした、ICTと養液土耕栽培を組み合わせたシステムです。
ハウス内の各種測定データ(土壌水分量、土壌EC値、地温、日射量、温度、湿度)、目標土壌水分量データ、培養液供給量データは、クラウドに集約され独自のアルゴリズムで点滴装置を制御します。
タブレット端末に表示されるグラフから状況を確認することができ、画面をなぞるだけで培養液量を変更することができます。
このシステムによって、化学肥料の与え過ぎによる環境汚染を最小限に抑えることで、さらに、植物工場のような大掛かりな設備を必要としませんので、コストがかなり低く抑えることができます。

plant_factory_005_R(http://www.zero-agri.jp/about/ より)

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