EVの競争力
2017年6月、ドイツのコンサルティング会社ローランド・ベルガー(Roland Berger)と自動車研究機関fka(Forschungsgesellschaft Kraftfahrwesen mbH Aachen)が、第2四半期の電気自動車の国別(ドイツ、フランス、イタリア、米国、日本、中国、韓国の7か国)競争力を比較調査した報告書「E-mobility Index Q2 2017」を発表しました。
競争力は、Technology(技術)、Industry(産業)、Market(市場)の3つの要素からなり、それらを合わせた総合指数では、中国が11.2で1位、アメリカが10.6で2位、ドイツが9.4で3位、日本とフランスが8.3で4位、韓国が5.8で6位、イタリアが1.1で7位となっています。日本は技術面と産業面で3位となっていますが、市場で5位となっています。それに対して中国は、技術面では5位ですが、産業で1位、市場でもフランスと並んで1位となっています。
(E-mobility Index Q2 2017 https://www.fka.de/consulting/studien/e-mobility-index-2017-q2-e.pdf より)
第1四半期では1位が日本で、2位が中国、3位がアメリカ、4位がドイツとなっていました。ですので、わずかの期間で日本は中国、アメリカ、ドイツに抜かれてしまったということになります。特に日本の場合は第1四半期の「市場」が5.0であったのに対して第2四半期には2.5まで落ちています。技術面でも第1四半期が2.6でしたが第2四半期は2.5に下がっています。
2017年6月に国際エネルギー機関(IEA)は、2016年の世界の電気自動車(EV)の販売に関するレポート「Global EV outlook 2017」を発表しました。それによれば、EVは前年比で60%増の約200万台になり、その内40%は中国が占めたとのことです。EVの比率が高い国としては、ノルウェーが29%、オランダが6.4%、スウェーデンが3.4%としています。
(Global EV outlook 2017 https://www.iea.org/publications/freepublications/publication/GlobalEVOutlook2017.pdf より)
また、IEAは、EVの今後の普及の予想として、2020年までに900~2000万台、2025年までに4000~7000万台と見ています。
EVを巡る各国の動き
2017年7月6日にフランスのマクロン政権が2040年までにフランス国内でのガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止すると発表しました。パリ協定の目標達成に向けた政策の一つのようです。20数年先の目標とは言え、フランスでのガソリン車・ディーゼル車のシェアは95.2%とのことですので、かなり思い切った政策かもしれません。
2016年ドイツでは連邦議会は、2030年までに内燃エンジンの車の販売を禁止するという決議案を採択しています。法律ではないので拘束力はありません。いわば議会から政府への要望といったところです。
オランダでは、2025年以降ガソリン車とディーゼル車の新たな販売を禁止する法律が審議されているというニュースもあります。ノルウェーでも2025年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止し、グリーン・エネルギーを利用した自動車にすべて切り替える方針を、与野党間で合意したとの報道があります。
Newsweekは2017年6月7日付けの記事で、インド政府が2030年までに、ガソリン車およびディーゼル車の国内販売を禁じ、インドで販売される自動車を電気自動車のみに制限する方針を明らかにしたと報道しています。
中国は、2017年3月に開催した自動車投資の管理に関する会議において、ガソリン車やディーゼル車の生産への新規投資の禁止や動力電池のコア技術と充電施設の促進といった方針が示されました。中国では2016年に、自動車メーカー13社の乗用車生産資格を取り消しており、内燃エンジンの車の生産抑制に動いています。
EVを巡る企業の動き
VWグループは、2025年までに30車種以上のEVを投入し、EVの年間販売台数を最大300万台に増やすとともに新車販売に占めるEVの比率を現在の1%から25%まで高めることを2016年に発表しています。
同じようにBMWは2025年までに15~25%をEVかPHEVにすることを目標に2020年以降にEV14車種、PHEVを14車種投入する計画のようです。ダイムラーも同様の計画を発表し、2022年までに10車種以上のEVを投入する計画のようです。
ポルシェは2023年頃までに50%を電気自動車にすると発表し、2019年にはポルシェ初のEV「ミッションE」を投入するとしています。
ボルボも先日、2025年までにすべての車をEVおよびハイブリッド車にするという方針を発表しています。そして2019年から2021年にかけて5種類のEV及びHVを発売するとしています。
その他にも、2018年から2019年にかけて、日産が新型リーフ(1回の充電で最大550km)、アウディがe-トロン・クワトロコンセプト(1回の充電で最大500km)、BMWがi5(1回の充電で最大450km)、ジャガーがI-PACE(1回の充電で最大500km)、メルセデスベンツがEQ(1回の充電で最大500km)などを発売する計画のようです。
自動車は、一気EVにシフトしようとしているようです。