量子コンピュータって何?

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量子コンピュータの話題

量子コンピュータが一般紙のトップ記事に

最近、量子コンピュータがよくマスコミなどで取り上げられるようになってきました。2017年11月20日付けの朝日新聞では、一面トップ記事で取り上げていました。
2017年6月に第6回の量子アニーリングに関する国際会議「「Adiabatic Quantum Computing Conference 2017」(AQC2017)が日本で開催されましたが、NHKではその様子を、かなり時間を割いて報道していましたし、9月4日の「視点・論点」や9月28日の「くらし☆解説」でも量子コンピュータを取り上げていました。
また、IT関連の専門サイトでは、米ロッキード・マーチンがステルス戦闘機の開発に利用したり、グーグルが人工知能(AI)の研究に応用したりしているカナダのD-WAVE社の量子コンピュータを、日本のデンソーが渋滞解消に向けた実証実験に使用するというニュースやタイヤの合成ゴムを手掛ける化学大手のJSRがIBMの量子コンピュータを試験導入するといったニュース、IBMが動作可能な50量子ビットのプロトタイプ構築に成功したといったニュースなど、日々量子コンピュータの進展を伝える報道されています。

日本の量子コンピュータ研究開発環境

関心は日々高まってるようですが、日本における量子コンピュータ研究開発の環境は、欧米や中国に比べ2周遅れとの指摘もあります。さらに、文部科学省が次年度の概算要求で、新規事業として「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」とし、革新的光・量子技術(量子シミュレータ・量子コンピュータを含む量子情報処理、 量子計測・センシング、極端パルスレーザー及び次世代レーザー加工)の実現に向けて約32億円を盛り込みましたが、欧米と比較して1桁少ないと今後の日本の状況を危惧する声もあるようです。

量子コンピュータの方式

量子コンピュータといっても、いくつか種類(方式)があるようです。Web上の記事では、量子ゲート(量子回路)型(方式)と量子アニーリング(量子焼きなまし)型(方式)の2種類に分けて説明しているケースが多いようです。もう少し詳しく、量子コンピュータを「量子ゲート方式」と「量子イジングマシン方式」に分け、量子イジングマシン方式をさらに「量子アニーリング方式」と「レーザーネットワーク方式」に、「量子ゲート方式」を「超電導量子ビット型」「スピン量子ビット型」と分けたり、汎用性を有するものを「チューリングマシン型」と分類した説明もあります。

また、量子ゲート方式をデジタル型、量子アニーリング方式やレーザーネットワーク方式をアナログ型の量子コンピュータと呼んで区別することもあります。

量子アニーリング方式

よく話題になるD-WAVE社の量子コンピュータは量子アニーリング方式です。2000量子ビットを搭載するD-wave 2000Qというマシンが販売されています。米国の国家情報長官室(Office of the Director of National Intelligence)による「情報先端研究プロジェクト活動(IARPA)」の中でMITなどが進めている「Quantum Enhanced Optimization(QEO)」プロジェクトも量子アニーリング方式の量子コンピュータです。
量子アニーリング方式は、1998年に東京工業大学の西森秀稔教授らが論文で提案した手法で、組み合わせ最適化問題に特化し、D-wave 2000Q のように、実用の域に達しつつあるようです。量子アニーリングは、統計物理のシミュレーションで扱われるモデルの一つであるイジングモデル(Ising model)利用して計算するものです。

量子ゲート方式

IBMやMicrosoft、Googleなどが研究している量子コンピュータは量子ゲート方式のタイプです。量子ゲート方式は1980年代から研究されてきており、量子アニーリング方式よりも歴史は長いようです。ゲート式の量子コンピュータは、素因数分解を得意としており、実現すると現在のスーパーコンピュータでは困難な素因数分解もができてしまうため、世界のインターネットセキュリティが破れ、ネット上の取引の安全性などが損なわれてしまうとも言われています。

レーザーネットワーク方式

レーザーネットワーク方式は日本独自の量子コンピュータで、内閣府による「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の量子コンピュータの研究プロジェクトとして国立情報学研究所(NII)、NTT、東京大学などが研究しているものです。ループ状の光ファイバーに光の粒を大量に入れ、この光の粒が「0」であると同時に「1」でもあるという「重ねあわせ」を応用することで超高速の計算を行うものです。理論としては20年以上前からあるものだそうです。

QNN(量子ニューラルネットワーク)

2017年11月20日に発表のあった「量子ニューラルネットワーク(QNN)」では、互いに仲のいい悪いの人間関係がある2000人を仲の悪い人が最も少なくなるよう2つのグループにわけという「組み合わせ最適化問題」をわずか0.005秒以下で解くことに成功したとのことです。これは理化学研究所のスーパーコンピュータ「Shoubu(菖蒲)」と比べ、100倍の速度になるとのことです。

また、QNNは、2000までの組み合わせならどんな問題でも解くことができ、D-WAVEは実際には60以下であり、解ける問題の規模はD-WAVEの30倍以上であり、さらにD-WAVEは絶対零度に近い0.015Kの極低温(-273°C)にする必要がありますが、QNNは、光を使うため室温で動作するため扱いやすさという点でもD-WAVEよりすぐれているとの説明がなされています。また、消費電力も今回の試作機では単位時間当たり1キロワット程度と極めて少なということも強調されていました。

ちなみにスーパーコンピュータ「京」を動かすには、年間でおよそ一般家庭2万5千世帯分に相当する電力を消費が必要で、次世代スパコン「ポスト京」では、今の技術の延長だと「原発1基分」の電力が必要になるそうです。量子コンピュータは、省エネルギー・環境問題の面でも期待できるものと言えます。

QNNは、主に長さ1kmのリング状の光ファイバー、光増幅器、半導体チップFPGAからなります。光増幅器をオン・オフすることで多数のOPOパルスというものがを生成し、この中に解きたい問題に対応する相互作用をFPGAから加えると、多数回の周回の後にOPOパルス群は全体として最も安定となる位相の組み合わせをとり、これが問題の答えとなるという仕組みだそうです。(分かったような分からないような??)

(JSTプレスリリース共同発表「量子ニューラルネットワークをクラウドで体験~量子を用いた新しい計算機が使えます~」平成29年11月20日 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20171120/ 参照)

一方で、D-WAVEやQNNはコンピュータではなく、実験装置ではないかというという意見もあるようです。

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(JSTプレスリリース共同発表「量子ニューラルネットワークをクラウドで体験~量子を用いた新しい計算機が使えます~」平成29年11月20日 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20171120/ 参照)

量子コンピュータが高速なのは?

従来のコンピュータでは、情報は0か1のどちらかで表されます。この情報処理の単位をビットと呼びます。一方量子コンピュータでは0か1かと同時に0でも1でもある状態を作ることができます。重ね合わせと呼ばれる現象です。このような量子コンピュータで扱う情報最小単位を量子ビット(キュービット:Qubit (Quantum bit))と言います。
従来のコンピュータでは、3ビット分の情報を処理には8通り(000、001、010、011、100、101、110、111)の処理が必要です。これが30ビット分になると2の30乗、約10億(1,073,741,814)通りとなります。しかし、量子コンピュータでは、例えば、量子ビットが3あれば8通りの計算を、量子ビットが30あれば約10億通りの計算を1度に処理することができます。

2011年にD-Waveの一号機を買ったのは、アメリカの航空機メーカー「ロッキード・マーティン」ですが、戦闘機の制御プログラムの誤りや欠陥を取り除く作業バグ取り使用し成果を上げたとの報道があります。
6月の国際会議を伝えていたNHKニュースでは、フォルクスワーゲンが北京の交通渋滞でのタクシーの最適なコースに量子コンピュータが活用されている事例を紹介していました。量子コンピュータは、自動運転や画期的な新薬の開発、人工知能などその応用は広い分野にわたると期待されています。

 

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