G7交通大臣会合の共同宣言
G7交通大臣会合が2016年9月23・24日、自動運転の普及をテーマに軽井沢町で開かれました。そして、24日に「自動車及び道路に関する最新技術の開発・普及」と「交通インフラ整備と老朽化への対応のための基本的戦略」の2つのテーマに関する共同宣言が採択されました。
自動運転に関しては、「自動車の自動運転技術の早期実用化について相互に協力し、リー ダーシップを発揮していく」として、次のようなことが述べられています。
〇 国際標準化の推進、データ保護・サイバーセキュリティの確保、法的課題への対応、研究の調整に関連する課題
〇 重要な研究課題であるヒューマン・マシーン・インターフェース、インフラ及び社会的受容性の分野ついて詳しく検討するためのワーキンググループの設置
〇 自動車の実証実験及び実用化のための基準及び条件
〇 国境を越えた相互運用性の促進と消費者ニーズに合致する自動運転技術に関する規制枠組
〇 自動運転技術に対する 潜在的な規制障壁と国際的に調和した未来志向の規制その他の措置
〇 車両やインフラへの不正アクセスを防止し、個人のプライバシーや個人情報を保護するためのガイドラインやその他の措置の適時の整備や定期的な更新の必要性
〇 安全な通信を確保するための周波数の取り扱い
(http://www.mlit.go.jp/common/001146628.pdf G7長野県・軽井沢交通大臣会合宣言 自動車及び道路に関する最新技術の開発・普及 平成 28 年 9 月 24 より要約)
朝日新聞の報道では、「完全自動運転」を加速したい米国と、慎重な日欧との差が大きく、世界共通の走行ルールづくりに向けた指針の作成は見送ったとのことです。ですが、自動運転車の普及にはどこの国でも販売できるようにするための統一されたルール、車両規格の国際標準化が必要ですので、今後、アメリカや欧州・日本との駆け引きが気になるとこです。また、石井啓一国土交通大臣の会見では、人間と機械の役割分担や国際基準のルール作りに課題があるとし、検討を進めていくワーキンググループを設置するとのことです。
DOTの15項目
G7交通大臣会合の開催の数日前(2016年9月20日)、アメリカ運輸省(Department of Transportation、DOT)は19日、自動車メーカーなどに向けて、自動運転の開発に関する規制指針(ガイドライン)を公表しました。自動運転車が備えるべき性能として、障害物の発見や対処法、自動運転システムの故障といった不測の事態への備え、サイバー攻撃からの防御、個人のプライバシーの保護、倫理面など15の項目が盛り込まれています。
アメリカでは運転免許の交付や交通ルールの策定などは各州に委ねられていることが多く、報道では、このことが自動運転車の開発・普及にとって障害となる可能性があるとして、今回の指針(ガイドライン)によってそうした問題を解決しようということが狙いの一つとしてあるようです。また、規制の方向性を示すことで開発を促進するとともに、規制作りで日本や欧州に先んじるということもあるようです。そのため、今回の指針(ガイドライン)に法的な拘束力はありませんが、運輸省は順守することを求めているとのことです。
ところでアメリカ運輸省(Department of Transportation、DOT)がガイドラインの中で示している15項目の「安全評価基準(safety assessment)」は大きく「横断的なエリア」と「オートメーション機能」に分かれており、それぞれ次の項目となっています。
横断的エリア
Data Recording and Sharing
Privacy
System Safety
Vehicle Cybersecurity
Human Machine Interface
Crashworthiness(耐衝突性)
Consumer Education and Training(消費者教育とトレーニング)
Registration and Certification
Post-Crash Behavior
Federal, State and Local Laws
Ethical Considerations(倫理的配慮)オートメーション機能
Operational Design Domain
Object and Event Detection and Response
Fall Back (Minimal Risk Condition)(退縮運転)
Validation Methods(Federal Automated Vehicles Policy 「Accelerating the Next Revolution In Roadway Safety」NHTSAより)
テクノロジー系ニュースサイトのRecodeには、この15項目の中に、以下の点が含まれると記しています。
・ How and where the car is supposed to operate. (自動運転車がどのように、どこで運用される想定となっているか。)
・ How the car detects and responds to oncoming objects. (自動運転車が接近してくる対象物をどう検知し、対応するか。)
・ How the system responds in case of a software failure. (自動運転車のソフトウェアに不具合が生じた場合、システムはどう反応するか。)
・ How it was tested and validated. (自動運転車はどう実験・検証されたか。)
・ How it protects user data. (自動運転車はユーザーデータをどう保護するか。)
・ How it records and shares data. (自動運転車はデータをどのように記録・共有するか。)
・ How it is programmed to address ethical dilemmas on the road.(自動運転車は路上での倫理的なジレンマに対応するためにどうプログラムされているか。)
(http://www.recode.net/2016/9/19/12981404/self-driving-regulations-dot-anthony-foxx-nhtsa より)
日欧の国際ルールづくり
自動運転技術に関する基準等に関して、日本は国連自動車基準調査世界フォーラム(WP29)の傘下にある「自動運転分科会」において、イギリスとともに共同議長を務め、議論を主導しています。また、自動操舵専門家会議においては、ドイツとともに共同議長を務め、高速道路での自動操舵を可能とするための基準改正を進めており、報道では日本とドイツが高速道路の走行に関する基準を挺身し、早ければ2017年3月に採択する見通しとのことです。
この専門家会議には。EUや韓国などが参加していますが、アメリカ、カナダ、中国は参加していません。
(http://www.mlit.go.jp/common/001095588.pdf 自動運転に関する動向について 平成27年7月6日 自動車局 技術政策課 より)