自動運転と乗り物酔い

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自動運転の効果

自動運転の実現による効果(メリット)として、国土交通省の「オートパイロットシステムに関する検討会(2013年)」が報告書の中で、「渋滞の解消・緩和」「交通事故の減少」、「環境負荷の軽減」「高齢者等の移動支援」「運転の快適性の向上」などを挙げています。内容が重なる部分もあるかもしれませんが、他にも「安全性の向上(高齢者ドライバーの操作ミス等による事故防止など)」「高密度な隊列走行等による社会的な生産性の向上」「移動性の高い社会への進化」「ドライバー不足の解消」といったことも効果として挙げることができます。

「自動運転」は、安全性・円滑性・快適性、さらには社会の「生産性」をも大きく改善するものと期待されています。ここでは、「快適性」について取り上げてみます。

快適性

ところで、車の運転というのは、長距離になればなるほどストレスを感じるものです。運転中のドライバがストレスを感じる要因としては、交通量、走行速度、車線幅、路面状況、道路標識、信号、天候などの様々な外的な要因、さらにドライバーの運転技能や心身の健康状態、車両の状態などもあります。これらが複合的に働いて運転手はストレスを感じることになります。

運転時のストレスをRRI(心拍間隔)で調べた研究報告もありますが、運転時はストレスが高い傾向にあることを示しています。また、自動車で旅行する際の満足度を調べた調査でも、「自動車の運転は疲れる」という回答が上位にあります。自動運転が実現されれば、こうした運転負荷を大幅に軽減することができ、長距離の移動でも疲労が少なく移動することができるようになると期待されています。

自動運転によってドライバーが煩わしい運転から解放され、搭乗者になることは非常に快適なように感じますが、自分で運転していれば酔わないのに他の人の車に乗ると乗り物酔いをするという人は意外に多く、そうしたドライバーにとっては快適どころか不快を味わうということになりかねません。あまりこうしたことは自動運転の議論の中で問題にされることが少ないようですが、一部の専門家からは、自動運転によって車酔いが増えるのではという指摘があります。

Motion Sickness

 motion_sickness_001_Rミシガン大学の交通研究所のマイケル・シバク(Michael Sivak)教授とブランドン・スコットル(Brandon Schoettle)教授が、2015年4月に発表した「Motion Sickness in Self-Driving Vehicles(自動運転による乗り物酔い)」という短い論文があります。

この論文はアメリカ、中国、インド、日本、イギリス、オーストラリアのドライバーを対象に、自動運転車で自動運転中に何をするのかを訪ね、その結果から自動運転による乗り物酔いについて言及したものです。

自動運転になったら何をするかという問いに対しては、そもそもそういった車には乗らないという回答も多いのですが、そうした回答を除くと道路を見ているが最も多く、インドと中国は3割程度ですが、その他の国は約半数になっています。その次に多いのは本を読んだり、家族と会話をしたり、テレビを見たり、仕事をしたりとなっています。日本人では道路を見ているの次に多いのは「睡眠」となっています。

本を読んだり。テレビを見たり、パソコンに向かって仕事をしたりと聞いただけで車に酔いそうですが、乗り物酔いが発生するメカニズムは、バランス感覚、視覚、運動機能の3つと関連しており、脳が錯覚を起こして気持ち悪くなってしまいます。この論文では、乗り物酔いの要因となる視覚入力の範囲や凝視の方向、姿勢などとの関係から、調査対象となった国ごとの乗り物酔いのなりやすさを下図のように示しています。

motion_sickness_002_R(Motion Sickness in Self-Driving Vehicles http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.1001.6169&rep=rep1&type=pdf より)

この表では、自動運転車に乗っているアメリカの大人の6〜10%、日本人では4~8%が頻繁にある程度の運動酔いを経験すると予想しています。そして、アメリカ人の大人の6~12%、日本人では4~8%が中程度または重度の乗り物酔いを経験するとしています。
もっとも酔いやすいのはインド人となっており、8~17%が中度又は重度の乗り物酔いになるとしていますが。これは自動運転車の中でテレビを見たり仕事をしたりする割合が、他の国と比べて高くなっていることが原因のようです。

また、自動運転車による乗り物酔いを最小化するための車両の設計についても述べています。窓ガラスを大きく作ることやゆったりとリクライニングできる座席、視線がほぼまっすぐ前に焦点を当てるように方向付けられたディスプレイ、車両の動きと同期して表示画像の位置を制御し、車両の加減速によって生じる乗員頭部の動きを制御することで、車両の動きに対して安定しているように見えるビデオの提供などを挙げています。
(Motion Sickness in Self-Driving Vehicles http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.1001.6169&rep=rep1&type=pdf 参照)

Uberの車酔い防止システム

Uberも自動運転による乗り物酔いを軽減するということに関心があるようです。最近、Uberが「SENSORY STIMULATION SYSTEM FOR AN AUTONOMOUS VEHICLE(自律車両のための感覚刺激システム)」という特許を出願しているというニュースがありました。特許の出願そのものは2017年7月のようです。

Uberが出願しているシステムはさまざまな刺激を用い、加速・減速・方向転換といった自動車の動きの変化を乗客に伝えることで車酔いを防ぐというもので、振動するシートと動くシート、身体の顔や他の部分を標的とする空気の流れ、音声による聴覚的刺激、乗客の気分を抑えるライトバーとディスプレイ表示による視覚的な刺激などを使用する予定です。
こうした刺激は、センサが捉えた走行車両の加速や減速、方向転換などの情報を分析し、AIが適切な刺激を選択するとのことです。

motion_sickness_003_R(FreshPatents.com http://images1.freshpatents.com/imageviewer/20170253254-p20170253254 より)

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