第5次産業革命

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第5次産業革命

経済産業省の「産業構造審議会2020未来開拓部会」が2016年11月に発表した平成27年度報告書~The Japan Way~において「経済社会構造の離散化と第5次産業革命の萌芽」との見出しで、「第5次産業革命」という言葉が出てきます。
また、産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会の「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流〔スマートセルインダストリー時代の幕開け〕中間報告書 平成28年7月」には、次のような記述があります。

・・・・・こうした技術革新は、人口問題、食糧問題、資源エネルギー問題、高齢化社会といった現代社会が直面する課題への解決策になりうるという点で、「第5次産業革命」とも言うべき新たな社会変革を生み出す可能性を有している。
http://www.meti.go.jp/press/2016/07/20160714001/20160714001-2.pdf より)

両資料から、経済産業省が考えるところの「第5次産業革命」とは、ビッグデータや人工知能(AI) による「第4次産業革命」と最新のバイオテクノロジーの融合により、健康・医療から、工業、エネルギー、農業まで起きる大きなパラダイムシフトといえそうです。報告書ではそれを、「スマートセルインダストリー」と表現し、スマートセルインダストリーを、「最先端の情報処理技術とバイオ技術の活用により機能がデザイン・作製された“賢い”生物細胞である「スマートセル」が創出する新たな産業群」と定義しています。

スマートセルインダストリー

「スマートセル」が創出する新たな産業群としては、「生体内で機能を発現させる」分野として医療・ヘルスケアなどです。「昨日物質を取り出して利用する」分野としては工業(ものづくり)、エネルギー、農畜水産業などです。

工業(ものづくり)においては、化石資源に依存した高いエネルギー消費を伴う物質生産から、再生可能資源を利用した常温・常圧の省エネルギー型物質生産へ、生物にしか合成できない物質が工業プロセスとしての生産へといった変化が起き、また、資源の枯渇懸念が解消されるとしています。「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流~スマートセルインダストリーの実現に向けて~平成29年2月経済産業省生物化学産業課」では、例えばバイオプラスチック、人工クモ糸、機能性化学品などをあげ、化学産業プロセスからの転換の例として「ブタンジオール(高機能プラスティックの原料)」、生産困難な物質の生産(新産業の創出)」としては「アルテミシニン(抗マラリア剤)」を例として示しています。

すでに具体的な製品の開発も進んでおり、例えば、三菱化学は植物由来のバイオプラスチックを複数開発してきていますが、その一つである「DURABIO®」は、光学特性、耐久性、耐候性、表面硬度などの面で従来の石油由来のものより優れた機能を有し、すでに複数の自動車メーカーに提供しています。

人工クモ糸に関しては、Spiberが鉄鋼の4倍の強度があり、ナイロン以上の伸縮性があり、しかも耐熱性が300度を超えるという人工合成クモ糸繊維「QMONOS」の研究開発を進め、2015年には世界で初めて人工合成クモ糸繊維を用いて量産ラインで製造されたアウターウェア「MOON PARKA®」のプロトタイプを発表しています。また、2016年のパリモーターショーで発表されたLEXUSのコンセプトシートに「QMONOS」が使用されました。

農業生物資源研究所は2014年に、クモの糸の遺伝子を組み込んだカイコを用いて「クモ糸シルク」の生産に成功しています。切れにくさは鋼鉄の約20倍とのことです。

JBグループでは、タマムシの発色機構を応用してステンレスのスプーンやコップの作製に成功しています、現在200色近く再現できるとのことです。色素を使ったかが塗装ではありませんので退色はありませんし、リサイクルの容易になります。身の回りの金属製品にも応用が広がれば発色方法を一変するかもしれません。

bioeconomy_001_R(バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流~スマートセルインダストリーの実現に向けて~平成29年2月経済産業省 生物化学産業課 http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/juyoukadai/nourin/5kai/siryo3.pdf より)

バイオエコノミー

OECDが2009年に発表した「2030年に向けてのバイオエコノミー:政策課題の設定」で、バイオテクノロジーが経済生産に大きく貢献できる市場(産業群)として“Bioeconomy”という考え方を提唱しています。バイオテクノロジーを用いた経済活動です。このときの報告書では、2030年のバイオ産業市場が全GDPの2.7%(約200 兆円)になると予測しています。内訳は健康分野が25%、農業分野が36%で、もっと大きいのが工業分野の39%です。

各国でバイオエコノミーに関する戦略が始まっています。アメリカでは「National Bioeconomy Blueprint」(2012年)、「Federal Activities Report on the Bioeconomy 」(2016年)を発表し2030年に10億トンのバイオマスを用い、石油由来燃料36%を代替や170万人の雇用と2,000億ドル(約23兆円)の市場創出などを挙げています。NRC(全米研究評議会)では技術開発ロードマップを2015年に策定し、実際にDARPA において、2020年までに1000物質を創出ことを目指して技術開発プロジェクト「Living Foundries Project 」などが進められています。

EUでは「Innovation for Sustainable Growth: A Bioeconomy for Europe」(2012年)を発表し、2030年までに石油由来製品の30%を生物由来に、EUにおける輸送燃料の25%を生物由来にそれぞれ置換することを挙げています。イギリスでも 「Biodesign for the Bioeconomy」(2016年)を発表していますし、ドイツでは「National Research Strategy BioEconomy 2030」(2011年)、フィンランドでは「Sustainable growth from Bioeconomy」(2011年)などを発表し、バイオエコノミーの加速に向けた取組を開始しています。

 

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