日本の科学研究失速?

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Nature Index 2017 Japan

イギリスの科学雑誌「ネイチャー」は、日本の科学研究の現状を特集した特別版「Nature Index 2017 Japan」を2017年3月23日に発行しました。それを受けて、各マスコミが日本の科学技術の失速あるいは停滞という見出しで報道していました。
毎日新聞は「日本科学停滞、8%減 政府の支出手控え、原因」、朝日新聞は「日本の科学研究この10年で失速」、読売新聞は「論文数減少 日本の科学研究が失速…英誌警鐘」とのタイトルで報道していました。NHKも「英科学雑誌 日本の科学研究の失速を指摘」と詳しく報道していました。

学術誌への論文掲載数の減少

「Nature Index 2017 Japan」によれば、自然科学系の学術誌(68誌)に掲載された日本の論文数は、2012年の5212本から2016年には4779本と433本も減少しています。率では8.3%の減少です。対照的に中国とイギリスの伸びが目立っています。中国は47.7%、イギリスは17.3%も伸びています。
そして、日本のシェアは2012年に9.2%ありましたが2016年は8.6%と低下しています。アメリカも2012年と比べれば約6%低下していますが、2014年からは回復傾向にあるようです。

11分野で減少

「Nature Index 2017 Japan」はWeb of Science(WoS)(※1)を取り上げ、中国が、2005年から2015年にかけて300%近く増加し、シェアも2005年の約13%から2015年には約20%に増やしているのに対して、日本やアメリカはシェアを落とし、アメリカは2005年の約26%から約22%へ、日本は8.4%から5.2%に低下していることを示しています。掲載されているグラフでは、韓国は2005年の約2%から2015年には4%近くまで伸びており、日本との差は僅かとなっています。

また、2005年から2015年にかけて索引付けされた出版物の数は、すべての分野で増加しているのに対して日本は、ほとんどの分野(14の研究分野のうち11分野)で減少し、増えているのは医学、数学、天文学の3つの分野だけとなっています。「Nature Index 2017 Japan」では特に、「深刻な減少」という表現で、減少の大きいものとして生命科学&分子生物学、コンピュータサイエンス、免疫学を挙げています。歴史的に日本の強い分野であった材料科学、機械工学、物理などの減少も顕著に表れています。

nature_002_Rhttp://www.nature.com/nature/journal/v543/n7646_supp/fig_tab/543S10a_G4.html より)

オランダの出版社エルゼビアのデータベースScopus(※2)についても取り上げ、2005年から2015年にかけて世界総論文数は80%増加し、中でも中国は約180%も増加しているのに対して、日本はわずか14%の増加にとどまり、全論文中で日本からの論文が占める割合も7.4%から4.7%へと減少しているとしています。日本のこうしたシェアの低下、影響力の低下について、エルゼビアのAnders Karlsson氏は記事の中で、人口減少、研究者数の減少、研究投資の平準化をその要因として挙げています。

(※1)Web of Scienceは、クラリベイト・アナリティクス社(Clarivate Analytics)が提供する引用文献情報のインターネットオンラインデータベースです。トムソン・ロイターのIP & Science事業が前身です。

(※2)Scopus(スコーパス)は、オランダ・アムステルダムを本拠とする国際的な出版社であるエルゼビアが提供する世界最大級の抄録・引用文献データベースです。

衰退の要因

日本の科学研究の衰退については今回のネイチャーの指摘の以前から言われていたことでもあり、改めてそのことをデータで示したということかもしれません。ネイチャーも指摘しているように、日本の留学生の減少、科学への投資の停滞、研究者の待遇などがそのことの要因となっているようです。
留学生の減少については、アメリカへの留学生数は1990年代がピークでその後減り続け、2015年では約19000人でした。これは、ピーク時には43000人でしたから約45%まで減っていることになります。
若い研究者の雇用についても、短期契約で雇用されている40歳以下の研究員の数は、2007年から2013年の5年間で倍以上になるなど恵まれた環境にはありません。
少子化も要因として挙げられていますが、それよりも各国が科学研究への投資を毎年増やしている中で、日本の投資は増えていないことが、相対的に日本の科学研究の力を低下させている大きな要因のように思います。

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