プログラミング教育

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文科省の有識者会議

2016年5月13日に文部科学省の「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」の第1回の会合が行われました。この有識者会議は、小学校でのコンピュータープログラミング教育の必修化に向けて、その課題や授業の方法などを検討するもので、「みんなのコード」の利根川裕太代表理事や情報教育第一人者である東北大学大学院教授の堀田龍也氏、「東ロボくん」のプロジェクトを率いる国立情報学研究所新井紀子氏、ドリトルの開発者である大阪電気通信大学の兼宗 進氏など16名からなります。プログラミング教育の必修化については、先に行われた産業競争力会議で示された新成長戦略にも盛り込まれており、そこでは小学校から研究者までの体系的な人材プログラムの必要性として、平成32年度から小学校のプログラミング教育の必修化などが提案されています。
ところで、この文科省の有識者会議の趣旨は、文科省の資料によれば次のようなことが挙げられています。

〇「第4次産業革命」ともいわれる、進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会の在り方を大きく変えていく・・・そのような社会的変化の中でも、子供たちが自信を持って自分の人生を切り拓き、よりよい社会を創り出していくことができるよう、必要な資質・能力をしっかりと育んでいくことが求められている。
〇・・読解力、論理的思考力、創造性、問題解決能力などは、・・・これからの時代においてもその重要性が変わることはない。これらに加えて、情報や情報技術を問題の発見・解決に活用していく力(情報活用能力)の重要性も高まっている。
〇プログラミング教育には、・・・意欲的な取組が広がりつつある一方で、学校教育として実施する場合に・・・解消されるべき課題も多い。・・・次世代に必要な資質・能力を、学校と地域・社会の連携・協働の中で育むことができるよう、・・・小学校段階における資質・能力の育成とプログラミング教育の在り方について検討を行う。

(小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成と
プログラミング教育に関する有識者会議 平成28年4月19日より)

今回の会合では、各報道を見ると「小学校では楽しみながらコンピュータに慣れ親しむ内容にすべき」、「ほとんどの小学校教員はプログラミング教育の経験がないため、研修体制の構築が必要」という指摘や、「ディープラーニングを構築するには数理的な考えが重要で、こうした人材を育成するためには小学校段階で人工知能を使いこなせるための教育が必要」、「将来はさまざまな職業がコンピュータにとってかわられる。こうした状況を防ぐには、小学校段階でプログラミング教育の学習機会を設け、ICT関連の知識を身に付ける必要がある」といった意見が出されたようです。

文科省の資料「教育課程の改善に向けた検討状況」では、今後整理が必要なポイントとして次の8つを示しています。
・学校教育として実施するプログラミング教育の意義とは(社会教育と同様の進め方でよいか)
・子供たちにどこまでの力を育むことを目指し、何を実施すればよいのか
・時代とともに技術が変化しても生かせる能力を身に付けるための在り方とは
・どの教科等で、どのように実施すればよいか
(各学校における子供たちの姿や地域の実情、ICT環境の違いなどを踏まえた在り方)
・どのようなICT環境が最低限求められるのか
・民間などの外部リソースを学校教育にどのように生かしていくか
・日本のカリキュラムに合った教材開発の在り方とは
・社会教育における多様な学習機会にどのようにつなげるか
(多様な才能をどのように伸ばしていくか)

今後、有識者会議ではこうしたことを踏まえながら、「第4次産業革命」が教育に与える影響、小学校段階で育成すべき資質・能力と効果的なプログラミング教育の在り方、効果的なプログラミング教育を実現するために必要な条件整備等について検討を重ねていくようです。

ただ、実際に小学校にプログラミング教育を導入するにあたって、外国語教育(英語)を設けるために苦肉の策として総合的な学習の時間を削減して時間数を生み出したように、新たな教科を設置する余裕はありません。従って、新教科をつくるのではなく理科や算数などの教科の中に盛りこめれるものと思われます。また、有識者会議は「小学校段階における・・」と小学校に限定しているようですが、文科省としては、中学、高校におけるプログラミング教育の拡充も進める方向でいるようです。

各国のプログラミング教育

文部科学省平成26 年度・情報教育指導力向上支援事業として「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」が行われています。調査対象国は英国(イングランド)、エストニア、フランス、ドイツ、フィンランド、イタリア、スウェーデン、ハンガリー、ポルトガル、ロシア、アメリカ合衆国(カリフォルニア州)、カナダ(オンタリオ州)、アルゼンチン、韓国、シンガポール、上海、香港、台湾、インド、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの23の国と地域です。

それによれば、調査時点において小学校段階でプログラミング教育を普通教科として単独で実施している国はないようです。ただ、情報教育・などの中でコンピュータサイエンスなどの中で、英国(イングランド)、ハンガリー、ロシアなどが必修としています。中学校段階で必修となっているのは、英国(イングランド)、ハンガリー、ロシア、香港で、選択科目としているのは韓国とシンガポールとなっています。高等学校段階では、ロシア、上海、イスラエルが必修、英国(イングランド)、フランス、イタリア、スウェーデン、ハンガリー、カナダ(オンタリオ州)、アルゼンチン、韓国、シンガポール、香港、台湾、インド、南アフリカが選択科目となっています。
韓国では、5,6年生の「実科」においてICTリテラシーを中心として情報教育が必修となっていますが、プログラミング教育は中学校の一般選択の「情報」で行われるようです。
オーストラリアのビクトリア州でプログラミング教育を含む科目「Digital Technologies」を2015 年から導入を開始し、2017 年には州内全ての学校での実施を予定しているようです。1,2年生ではハードウェア、ソフトウェアの利用方法の認識、3,4年生ではビジュアルプログラミングの使用、5,6年生では分岐処理、繰り返し処理等を学習することになります。

イギリス(必修)

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エストニア(選択)

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ロシア(必修)

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文部科学省平成26 年度・情報教育指導力向上支援事業「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」より

プログラミング教育に用いられれる言語

プログラミングを体験してもらうことで、コンピュータへの興味・関心を高めてもらおうと「Hour of Code Japan(※1) こどもの日 1万人プログラミング」が、5月5日に日本マイクロソフト本社の東京メイン会場をはじめとして全国110か所の会場でワークショップが開催され、1万人以上の子供たちが参加したそうです。
プログラミングは、日本語で「まえにすすむ」などと、キャラクターの動きを示すことばが書かれたブロックを画面上で選んで、組み合わせていくもので、ブロックをドラッグアンドドロップしてプログラムを書くことができる「Blocky」というものです。ウェブブラウザ上で動作し、パソコンでもタブレットでも利用できます。
小学校段階でプログラミング教育が導入された際に用いられる言語は、おそらく低・中学年やカリキュラムの初期段階では「Blocky」のようなものになるのかもしれません。総務省の「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書(平成27年6月)には、プログラミング教育に用いられる主な言語が掲載されています。

program_004_R総務省の「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書(平成27年6月)より

(※1)Hour of Codeとは、米国の非営利活動法人「Code.org」が主唱する子ども向けのプログラミング教育推進活動で、2013年1月にパルトヴィ兄弟により設立されました。同団体はHour of Codeのウェブサイトを通して、子どもがドリル形式でプログラミングを学べる教材「Code Studio」を無償で公開しています。

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