ニューロモーフィック・チップ

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ニューロモーフィック・チップ

2014年8月にIBMが「トゥルーノース(TrueNorth)」と名付けた「ニューロモーフィック・チップ(Neuromorphic Chip)」を開発したことを発表しました。(『サイエンス(Science)』オンライン版)。ニューロモーフィックチップ(Neuromorphic chip)とは、脳の構造を模したコンピューターチップで、インテル、クアルコムなど企業をはじめ、様々な企業・研究所で研究が進められています。

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(http://www.nikkei.com/content/pic/20141222/96958A9F889DE5EBE4E1E3E7EBE2E3E1E3E3E0E2E3E6E2E2E2E2E2E2-DSXZZO7963168013112014000000-PN1-13.png より)

2012年にIntel 社が独自の設計を公開し、IBMの発表の前年の2013年には、スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)とスイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)の研究チームがニューロモーフィック・チップを開発したと発表しました。しかし、それらは実験室レベルであるのに対して、IBMの発表したニューロモーフィック・チップは工場生産が可能な形態であるという点で画期的なもののようです。

ニューロンモデルを用いたコンピューティングは、既存のコンピュータ上でシミュレートするニューラルネットワーク(神経回路網)が浸透していますが、IBMが開発したのは、脳のニューロンとシナプスを物理的に模した構成のニューロシナプティック・コア、つまり、これまでソフトウエアとして実現されてきたものを半導体上の集積回路ハードウエアとして再現したもので、まさに「人工頭脳」の第一歩と呼べるものかもしれません。

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(http://www.extremetech.com/extreme/187612-ibm-cracks-open-a-new-era-of-computing-with-brain-like-chip-4096-cores-1-million-neurons-5-4-billion-transistorsより)

IBM 社の「TrueNorth」

人の脳は、約1000億個にも上る「ニューロン」と、それらが接合する「シナプス」からなる複雑で巨大なネットワークです。ニューロンはシナプスを通じて化学的信号をやりとりして情報を処理するわけですが、このネットワークは無秩序に張り巡らされているわけではありません。神経細胞は、種類によって形も働きも違っており、種類ごとに集まり層構造をつくっています。このことによって、秩序だった神経回路が構築され、情報の伝達はより効率的になっているわけです。

また、脳が経験によって新しいことを学習すると、シナプスでの信号の伝わりやすさ(結合強度)が変化します。「可塑性」と呼ばれるシナプスの性質によるもので、ニューロン間の接合の強さ(シナプス荷重)を変化させるこのことを「ヘッブの法則」と呼び、脳が学習を行う基盤とも言えます。

こうした脳内の神経活動をシミュレートして演算処理を行うマイクロチップがIBMの「トゥルーノース(TrueNorth)」と言えます。「TrueNorth」は、100万本のニューロン、2億5600万個のシナプスに相当する54億のトランジスタを搭載していますが、ニューロンの数ではまだ昆虫程度の脳でしかありません。

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(IBM http://www.ibm.com/smarterplanet/jp/ja/brainpower/pdf/ja_jp_IBM-SyNAPSE-Infographic_J.pdf より)

今あるコンピュータはフォン・ノイマン方式と呼ばれ、情報を処理するCPUと保存するメモリーに分かれています。記憶装置にデータとプログラムを内蔵し、入出力バスでつながれた演算装置でプログラムを実行するということ行っています。しかしながら、「ボトルネック現象」によって速度が遅くなるという問題を抱えています。TrueNorthは非ノイマン型のアーキテクチャを採用し、一般的なプロセッサのようなメモリーからプログラムを逐一読み込むという必要はありません。

また、TrueNorthは、例えば、物体認識のために学習したニューラルネットのパラメータを組み込めば、後は画像データを入力するだけで、チップは物体の種類や座標を出力してくれます。IBMはこのチップに、建物の上から撮影したカラー映像(400×240ピクセル、30フレーム/秒)を入力し、歩行者5人、自転車乗り1人をリアルタイムに追跡することに成功したと発表しています。

さらに、この「TrueNorth」は省電力で、通常のマイクロプロセッサが1平方cm当たり50~100Wの電力を消費するところ、20mWしか消費しないといいます。前述の実証実験では63mWだったそうです。

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(IBM http://www.ibm.com/smarterplanet/jp/ja/brainpower/pdf/ja_jp_IBM-SyNAPSE-Infographic_J.pdf より)

このチップは米国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)の「SyNAPSE(Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics)」プログラムのコアとして進められているもので、5段階の内の第ゼロ段階、第1段階、第2段階、第3段階に約5,300万ドルを助成を受け、今はCornell Tech、iniLabs などと共同研究を進めています。ちなみに、チップの製造には、高密度オン チップ メモリと電力漏れの少ないトランジスタからなるサムスン電子の28ナノメートルプロセス技術が使われています。

このプロジェクトは2008 年から始まり、少なくとも2016 年まで続く計画のようで、最終的には、人間の脳と同じ体積、機能、消費エネルギーをもつシステムを構築するとなっています。「100億個のニューロンと100兆個のシナプス」「電力を僅か1キロワットしか消費せず、体積も2リットル未満」とIBMは目標を示しています。現在は5段階のフェーズの3段階を終えたところのようです。

こうした研究は欧州連合でも行われており2013年にHuman Brain Project(ヒューマン・ブレイン・プロジェクト)を立ち上げています。その予算は10年間で16億ドルに及びます。欧州の進めているニューロ・システムはアナログ回路を基盤としており、より実際の脳に近いものです。すでに、1枚のシリコンウエハーに20万個のニューロンと5000万個のシナプスを搭載したニューロ・コンピューティング・システムの稼働に既に成功しています。

その他にも、米Qualcommは既に、Zerothを搭載した自らナビゲーションの判断を行うことのできるロボットのデモを行っていますし、スタンフォード大学の「Neurogrid」や英マンチェスター大学が進める「Spinnaker」などもあります。

このテクノロジーは応用について、IBMは「公衆安全、視覚障害者のための視覚支援、在宅医療モニタリング、運輸」などを挙げています。チップが完成すれば、目と耳を持つ知的なロボットも可能になり、自動運転も飛躍的に進歩するでしょう。味覚や臭覚を持ったり物体の認識がより精密になったりすることで果物のなどの識別に使えるようになる可能性もあります。モバイルデバイスがユーザーの行動を予測する、ウエアラブル端末で病気を診断する、さらにはチップを移植して視力を回復したり認知症を改善したりするということも可能になるかもしれません。

 

(執筆中)

 

1件のコメント

  1. チャッピー型人工知能のプロセスを、ニューロモ―フィック半導体化出来れば???それは、脳に似た機能となる!!!

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