デジタル教科書

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デジタル教科書

文部科学省の『「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議』において、「デジタル教科書」の導入に向けた議論が進んでいます。予定では、平成28年春~夏頃に中間まとめを出すことになっています。マスコミの報道によれば、検討会議は4年後を目途に全国の小中学校と高校にデジタル教科書を導入する方針で固まったようで、デジタル教科書の導入に当たっては、子どもに1台ずつ端末を用意し、教科によってはデジタル教科書だけを使った履修も認めるそうです。

4年後の導入については、遅すぎるのではないかという意見もあります。韓国では2008年に導入実験を始め、2015年で全国での導入完了となっています。アメリカでは、2004年に教科書発行者は小学校~高等学校までの教科書デジタルデータを全国教材アクセシビリティ規格 (NIMAS)のファイル形式で、全国教材アクセスセ ンター(NIMAC)に納めるよう規定され、障害のある子どもは無料でデータを使用できるようになりました。シンガポールでは2008年にFutureSchools@Singaporeプロジェクトを開始し、さらに2012年にはデジタル教科書を配布しているようです。デジタル教科書に関して日本は後進国だと言われています。

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(2015 ACTION PLAN デジタル教科書教材協議会DiTT より)

「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議での協議の内容

検討会議では大きく2つのことが協議されています。一つは「教科書の意義、形態など、教科書の基本的な在り方に関すること」2つ目は「デジタル教科書の教育効果及びそれを踏まえた制度的な位置付けや費用負担の在り方」です。

具体的には、「紙と電子媒体の違い、発達段階の違い、教科の特性等の考え方」「児童生徒の健康面への配慮」「依存症や有害情報へのアクセス等の懸念」「様々なコンテンツと検定の関係」「安定的なデジタル教科書の供給方法」「導入・活用のコストと費用負担」「著作権法制上の取扱い」「学校・家庭におけるネットワーク環境」など多岐にわたっています。

デジタル教材とは

「デジタル教科書」とは、コンテンツ、ビューアー、OS、ハードウェアのうち、コンテンツのみを指すのか、それともすべてを指すのか、その定義や位置付けはまだ定まっていないようですが、一般的には、紙媒体の教科書コンテンツをタブレットやノートPCで表示・操作し、PCで実現可能な各種機能が追加されたものでアクセシビリティ対応のものという理解が多いようです。デジタル教科書教材協議会(DiTT)(※1)が2016年2月に公表した「教育情報化推進法案」では、デジタル教科書を「児童及び生徒の学習の用に供するため文字、図形、音声又は映像を組み合わせたものに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラム」と定義しています。

(※1)DiTT (Digital Textbook and Teaching)は「デジタル教科書教材協議会」の略で、デジタル教科書の実現を目指して活動する協議会です。2010年から活動を始めています。2016年2月に、Dittが考える「教育情報化推進法案」公表しています。

デジタル教科の標準化

デジタル教科書を導入するに当たって、ファイル形式や機能の標準化が必要になります。文部科学省では「デジタル教材等の標準化に関する企画開発」として、EPUBをプラットフォームとしています。総務省では「教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究」において、HTML5をプラットフォームとしています。

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(電子教科書の現状 Status of Digital Textbooks 田村 恭久TAMURA Yasuhisa1  https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/57/5/57_307/_html/-char/ja/ より)

教科書会社を中心に13社で構成されたデジタル教科書の開発に関わるコンソーシアム「CoNETS(コネッツ)」(※2)は、昨年の3月に教科書出版12社のデジタル教科書を一貫した操作性で使える共通プラットフォーム「CoNETS」を発表しています。複数の出版社をまたいで、インターフェイスを統一したデジタル教科書です。CoNETSのデジタル教科書のフォーマットはEPUB3を採用しています。

デジタル教科書の仕様の策定に関しては、各国で行われており、アメリカではIEEEがActionable Data Bookプロジェクトを2011年にスタートさせ、各種調査を実施しています。ヨーロッパでは欧州標準化委員会(CEN:European Committee for Standardization)が2012年にeTernityプロジェクトを発足させています。他にも米国を中心とするeラーニングの団体IMS Global Learning ConsortiumのICEプロジェクトやIDPF/IMS/W3C(※2)の3団体のEDUPUB Project、ISO/IEC JTC1/SC36の(※3)e-Textbook Projectなどがあります。

そんな中で主流になりつつあるのがEPUB3のようです。EPUB3はロイヤルティーフリー、著作権管理が可能、DAISYのアクセシビリティ(※5)の機能がすべて含まれているといった特徴があります。その他にも、縦書き・ルビが可能、コンテンツ編集・修飾が容易、Active Learning・反転学習などの学習ツールとの連携が容易、EPUB3はHTML5をベースにしているため利用技術が普及が容易などの特長があります。

(※2)教科書出版社12社と日立ソリューションズからなるデジタル教科書を推進するためのコンソーシアムで、デジタル教科書・教材の標準化を目指した共通プラットフォームの開発、ビューアとコンテンツの分離、標準化の成果として、教科や学年、発行者を超えた教科間連携の実現の3つを目標とし、デジタル教科書のスタンダードをめざすしています。

(※3)W3C(World Wide Web Consortium)はWWW で利用される技術の標準化をすすめる団体、IDPF(International Digital Publishing Forum)は米国の電子出版業界の標準化団体です。

(※4)ISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)は電気・通信及び電子技術分野を除く全産業分野(鉱工業、農業、医薬品等)に関する国際規格の作成を行う国際標準化機関。IEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)は電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関です。

(※5)DAISY(Digital Accessible Information System)は、視覚障がいや学習障がい害、知的障がい等、様々な障がいに対応する情報技術の国際標準規格です。アクセシビリティ(accessibility)は、利便性をあらわしますが、特に、障がいを持つ人や高齢者などハンディを持つ人などにとって、どの程度使いやすいかを表すことが多いようです。

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