ヒューマンオーグメンテーション

5743928_R

ヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation)学

Augmentationとは増強、増大、添加物といった意味があり、ヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation)は、日本語では「人間拡張」と言っています。
人間のさまざまな能力(知的能力、身体能力や健康、心の充足感の拡張など)をテクノロジーによって強化する新たな学問領域として、東京大学大学院情報学環教授の暦本純一はヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation)を提唱しておられます。

ソニーから東京大学への寄付講座として、「ヒューマンオーグメンテーション(人間拡張)学」を、東京大学大学院情報学環で推進していくとの発表が2017年3月にありました。ヒューマンオーグメンテーション(人間拡張)学の開拓を通じて、産業界と教育界を活性化させ、未来を創る人材の育成と強化に繋げていくことを狙いとしているとのことです。6月1日には、第1回公開セミナー「知覚の拡張」を開催しています。

(東京大学大学院情報学環・学際情報学府イベント http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/event/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E5%AD%A6%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC-1-%E3%80%8C 参照)

では、人間の何を拡張するのかでしょうか。前述のように知的能力だけでなく、知覚能力、認知能力、身体能力、存在感、さらには身体システムなど様々な能力が拡張の対象となっています。そしてそれらの能力を拡張するための技術も、AR・VR、ロボティクス、人工知能、ヒューマンインターフェースなど広範囲にわたっています。

Sonyのニュースリリース(2017年3月13日)によれば、ヒューマンオーグメンテーションについて、次のように述べています。

「・・・人間とテクノロジー・AIが一体化し、時間や空間の制約を超えて相互に能力を強化しあう、IoA(Internet of Abilities:能力のインターネット)という未来社会基盤の構築を視野に入れた、最先端の研究を体系化していく学問領域」
(SONY ニュースリリース https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201703/17-0313/ より)

ヒューマンオーグメンテーションは黎明期?

アメリカの調査会社ガートナーが毎年発表している「先進テクノロジーのハイプ・サイクル」の2017年版が8月23日に発表されました。その中でヒューマンオーグメンテーションは「黎明期」に位置付けられていました。図では、ディープラーニング・機械学習・自律走行車などは「過度な期待のピーク期」にありますが、ヒューマンオーグメンテーションはそこまではまで距離があるようです。

ところで、ガートナー社ハイプ・サイクルの説明の中で、企業がデジタル・エコノミーで成功する3つの大きなトレンドとして「どこでも人工知能 (AI) となる世界」「透過的なイマーシブ・エクスペリエンス (没入型の体験)」「デジタル・プラットフォーム」を挙げています。このうちの「透過的なイマーシブ・エクスペリエンス」の重要なテクノロジの一つとして、ヒューマンオーグメンテーションが挙げられています。2016年のハイプ・サイクルでも、ヒューマンオーグメンテーションが「透過的なイマーシブ・エクスペリエンス」の重要なテクノロジとして挙げられていました。

2015年のハイプ・サイクルでは、(アナログ、Web、E-Business、デジタル・マーケティング、デジタル・ビジネス、オートノマスの6つのビジネスモデルを示して、オートノマスにおけるテクノロジーとしてヒューマンオーグメンテーションを挙げています。

2014年のハイプ・サイクルでは、「SMART」という用語を使って、S(Sensor Networks and the Internet of Things)、M(Maker Machines)、A(Augmented Humans)、R(Robotics)、T(Thinking Machines)の5つのテクノロジ・トレンドを挙げています。

ガートナー社のハイプ・サイクルにヒューマンオーグメンテーションという言葉が登場したのは2010年が最初です。その時は「黎明期」で期待度も一番下に位置付けられていました。今も「黎明期」ですが、8年ぐらい経過して、期待度は真ん中ぐらいまでになってきていますが、他のテクノロジの進展に比べるとややその変化は少ないようにも感じます。

ヒューマンエンハンスメント(Human Enhancement)

ヒューマンエンハンスメントということばがあります。Enhancementは強化という意味ですので、ヒューマンエンハンスメントは「人間強化」と言われています。

強化と拡張と少々ニュアンスは違いますが、ヒューマンオーグメンテーションもヒューマンエンハンスメントも人間の認識能力および身体的能力の向上をという点で同義語のような使い方をすることもあるようです。科学技術振興機構から出されている「研究開発の俯瞰報告書(2015)」でも「・・・、健常人の身体行為の増強(オーグメンテーション、エンハンスメント)」「・・・、健常成人に対する身体行為の増強や知的情報活動の支援をする開発が進む(エンハンスメント、オーグメンテーション)・・・」といった使い方がされています。また、ヒューマン・エンハンスメントの方がヒューマンオーグメンテーションより目的が明快な表現であるというとらえ方もあるようです。

ヒューマンオーグメンテーションというと、前述のソニーのニュースリリースのように電子・機械的手法による人間の能力の拡張や強化といったイメージがあります。ヒューマンエンハンスメントではそれに加えて生物・化学的手段(薬物投与や遺伝子操作)などによる拡張・強化も含まれ、人工眼内レンズ、人工内耳、義手・義足、パワーアシスト・スーツ、人工臓器、BMI(ブレイン・マシン・インタフェース)、アンチエイジングなどもその対象となります。「サイボーグ(cyborg)」に近いイメージです。実際に、

・・・・サイボーグ技術は人間のエンハンスメントを目的とした手段であり、サイボーグ技術とエンハンスメント技術は同意語のように用いられる・・・
(NPO法人市民科学研究室http://archives.shiminkagaku.org/archives/2008/03/post-52.html より)

という説明もあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です