ニューラルレース

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ニューラルレース(Neural Lace)

ニューラルレースは、スコットランドSF作家イアン・M・バンクス(Iain M. Banks)が「カルチャーシリーズ」の中で用いている言葉で、そのシリーズの「Look to Windward」(2000年出版)の中で、脳とコンピュータをつなぐインターフェースとして登場するようです。

このニューラルレースという言葉を使って、イーロン・マスク(Elon Musk)氏は、脳にAIレイヤーを加えることで人間とAIの共存のあり方を変える技術としてその構想を語っています。
イーロン・マスク(Elon Musk)氏は2016年6月のVox Media’s Code Conferenceで、人間が人工知能のペットになるのを避けるために、脳に知性のデジタル層を追加する必要があると語っています。人とAIとの融合といったところでしょうか。さらには、それは頭蓋骨を切り刻むことによって挿入されるものである必要はなく、頸静脈を通して挿入できるとも語っているようです。

2017年3月には、構想を実現させるための新会社「Neuralink」を立ち上げています。各種報道を見ると、Neuralinkは、はじめはてんかんや重度のうつ病、パーキンソン病などの症状を和らげる脳内電極の開発や脳で考えたことを言語化せずにダイレクトに伝達できるようにするための体内に埋め込むAIチップの開発などに取り組みようです。そして、将来的には脳内チップをAIシステムに接続することで人間の能力を増幅させるというニューラルレースを実現させようという構想のようです。

2017年2月にドバイで開催された「世界政府サミット(World Government Summit)」にイーロン・マスク(Elon Musk)氏も参加して発言しています。ニューラルレース(Neural Lace)に関する発言としては、CNBCの記事によれば、時間とともに生物インテリジェンスとデジタルインテリジェンスの密接な融合が進むが、問題は人間のアウトプットの遅さであると指摘したうえで、「脳に対する広帯域幅のインターフェースが実現できれば、人間と機械のインテリジェンスは共生できるようになる」と述べています。

NESD

ニューラルレースに似た発想はイーロン・マスク氏だけではありません。情報通信審議会技術戦略委員会の報告書案によれば、DARPA(米国防高等研究計画局)は、人間の脳の神経回路とデジタルデバイスを接続する「Neural Engineering System Design(NESD)」という研究プロジェクトを2016年に立ち上げています。これは4年間の研究で、総額6000万ドルの研究開発費が計上されています。コンピューターと人間の脳をつなぐ「ダイレクト皮質インターフェース」と呼ばれており、具体的には次のような開発です。

人間の脳とデジタルの世界で、信号処理及びデータ転送帯域幅を提供できる、人体に埋め込むことができるほど小型で、100万個の神経に接続可能なブレイン・マシン・インターフェース(Brain Machine Interface:BMI)の開発(AI・脳研究WG報告書案 平成28年5月 情報通信審議会技術戦略委員会 AI・脳研究WG より)

DARPA(http://www.darpa.mil/program/neural-engineering-system-design)によれば、埋め込むデバイスは1立方センチメートル以下の生体適合性デバイスです。コインを2つ背中合わせに重ねたようになっています。

BMI

ニューラルレースによく似たものにBMI(ブレーン・マシン・インターフェース)があります。文部科学省の脳科学研究戦略推進プログラムでは、「脳情報を利用することで、脳と機械を直接つなぐ技術(インターフェース)」と説明しています。もう少し詳しく「脳と機械との間で、手足などの器官を通さずに直接的に情報の授受を行う技術」(みずほ情報総研)という説明もあります。

一般的には脳波を捉え、その信号を手がかりにパソコンや機械などを操作する技術で、「念じて動かす技術」などとも言われることがあります。ですが、脳から機械を操作する場合だけでなく、機械から脳へ情報を入力する場合もBMIに含まれるようなので、必ずしも「念じて動かす」だけがBMIとは言えないようです。

BMIにつながるような研究は古くから行われえていましたが、盛んになったのは2000年ごろからのようです。日本では2007年に「イノベーション25」という長期政策にBMIが盛り込まれ、いくつかのプロジェクトが動き始めて研究が本格化してきたようです。当初はロボットアームを動かすといったものでしたが、現在ではALSなどの難病の患者や脳卒中などで手足が自由に動かない患者などの治療やリハビリなどでも活用が広がっています。

neural_lace_001_R(平成27年度BMI(Brain Machine Interface)分野における技術動向調査分析 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 知的財産部 2016年2月 より)

BMIと同義語のようにして用いられるものにBCI(ブレインコンピュータインタフェース)があります。ただ、BMIとBCIを区別する立場と区別しない立場があるようですし、BMIも含めてすべてをBCIとして表現している場合もあります。

BMIは、被験者の頭に電極を突き刺して直接的に電位を侵襲的手法であるの対して、BCIは、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)、近赤外分光法,脳波計測など、被験者にダメージを与えない非侵襲的手法とする説明や、脳と機械のダイレクトな情報伝達がBMIで、接続先がコンピュータの場合がBCIというで説明もあります。

ニューラルレースについても、BMI/BCIは別物というより、BMI/BCI によって脳を支援し、人の能力を増強しようというもの、つまりBMI/BCIの一部というとらえ方がされているようです。

 

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