デジタルツイン(Digital Twin)

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注目度増すデジタルツイン

デジタルツイン(Digital Twin)への注目度が高まっているようです。三井物産戦略研究所が2017年1月に公表した「戦略研レポート 2017年に注目すべき4つの技術・イノベーション」でも、デジタルツインが取り上げられています。そこではデジタルツインによって、本格的なDDM(Direct Digital Manufacturing)時代の到来、新たな市場に挑戦する企業を増やすトリガー、マス・カスタマイゼーションの有力なソリューション、VR/AR 技術を融合させた新しい体験価値の提供などの可能性があるとしています。一方で、デジタルデータの不正取得による偽デジタルツインなどの課題も指摘しています。

また、ガートナーが2016年10月に発表した「2017年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」にもデジタル・ツインが挙げられています。2017年8月に発表した「先進テクノロジーのハイプ・サイクル:2017」では、3つのメガ・トレンドのうちの「デジタル・プラットフォーム」を実現する主要テクノロジーの一つとして、デジタルツインが挙げられています。

調査会社MarketsandMarketsが2017年8月31日に発表したレポート「デジタルツイン市場:エンドユーザ毎(航空宇宙・防衛、自動車・交通運輸、家庭・商業、電気電子・機械製造、エネルギー・公益事業者、医療、小売り・消費者製品)、地域毎―2023年までの市場予測」では、デジタルツイン市場は年平均成長率(CAGR)37.87%で成長し、2023年に156億6000万ドル(約1兆7500億円)に達するとしています。

科学技術振興機構のJ-STAGEの2017年8月1日公開の「集会報告 CeBIT 2017(国際情報通信技術見本市)」では、3月にドイツのハノーバーで開催されたCeBIT 2017の展示内容で目立ったものとして2点取り上げています。その一つが SAP社デジタルツインで、アディダス社のシューズをタブレット上で自分好みにカスタマイズする「マイアディダス」というサービスについて取り上げています。マイアディダスでは、消費者の好みとするデータが工場に伝送され、タブレットには、出来上がりまであと何分という表示され、さらに、「店舗用」、「顧客用」、「トレーナー用」、「工場用」などのメニューがって共有可能なデータを活用できるというものです。

デジタルツインとは

デジタルツイン(Digital Twin)は、現実の製品や工場などを、デジタルデータをもとにサイバー空間にそっくりそのままに構築(再現)するものです。日本経済団体連合会が2016年に発表した報告書「新たな経済社会の実現に向けて ~「 Society 5.0Society 5.0」の深化による経済社会革新」では、次のように説明しています。

CPS (Cyber Physical System)においては、 現実世界の多様かつ大量データをサイバ空間に上げ、システム上に現実世界を模したミュレーョン空間構築すること
(新たな経済社会の実現に向けて ~「 Society 5.0Society 5.0」の深化による経済社会革新 2016年4月1日一般財団法人日本経済団体連合会 より)

ANSYS社の「ANSYS Advantage ISSUE 1/2017」では特集としてデジタルツインが取り上げられています。その中でデジタルツインを次のように説明しています。

企業が特定の製品に関して所有しているすべてのデジタル情報と、稼働中の製品からライブで送られてくる運用データを組み合わせたものです。
http://www.ansys.com/-/media/ansys/ja-jp/pdf/ansys_advantage/2017-v11i1/advantage-issue1-2017-jp-web.pdf より)

デジタルツインはいつから?

デジタルツインという言葉は、前述の三井物産戦略研究所のレポートではアメリカのDARPA (国防高等研究計画局)の造語といわれていると記されています。

Michael Grieves氏の「Digital Twin: Manufacturing Excellence through Virtual Factory Replication」では、次のような記述があります。

The concept of a virtual, digital equivalent to a physical product or the Digital Twin was introduced in 2003 at my University of Michigan Executive Course on Product Lifecycle Management (PLM).
(Digital Twin: Manufacturing Excellence through Virtual Factory Replication http://innovate.fit.edu/plm/documents/doc_mgr/912/1411.0_Digital_Twin_White_Paper_Dr_Grieves.pdf より)

デジタルツインと同等の仮想的なデジタルの概念は、2003年にミシガン大学プロダクトライフサイクルマネジメント(PLM)のエグゼクティブコースでMichael Grieves氏が使っていたということのようです。

Aras Newsletter(日本語版) 2017年5月号では、デジタルツインという用語は、2002年にミシガン大学のMichael Grieves教授が作ったものとあります。

現在のデジタルツインにつながる概念としては2011年頃にNASAが次世代航空機の開発において提唱した論文が最初と言われています。

デジタルツインとCAE、デジタルスレッド

サイバー空間でシミュレーションを行い、物理世界にフィードバックするということは以前から行われており、デジタルツインはテクノロジーあるいは概念として特に目新しいものではないと言われています。

製造業では開発した製品の耐熱性や耐衝撃性などをテストする際、バーチャル環境でテストするCAE(Computer Aided Engineering)が使用されていました。CAEは日本語では「計算機支援工学」あるいは「コンピュータ支援設計」とも言われているようですが、設計した製品をコンピュータ上でシミレーションする技術です。

デジタルツインは、CAEの製造業の製品テストという製造設計工程の枠にとどまらず、マーケティング、さらには経営の意思決定の分野へと広がっているものと言えます。

デジタルスレッド(Digital Thread)は、製造業における設計、商用化、製造、サービス、運用の全てをつなぐ、あるいは製造ラインやサプライチェーン全体の状況を、産業機器ごとに管理されていたデータをつなぎ合わせてリアルタイムで把握する仕組みと説明されています。

PTCのCEOであるJames E. Heppelmann氏は、2016年12月に開催された「PTC Forum Japan 2016」での講演において、フィジカルな製品から、IoTによって得たデータとその分析結果生み出されるのが「デジタルツイン」で、アバターとも表現しています。そして、フィジカルの世界とデジタルの世界を覆うように、全てをつなげるのがデジタルスレッドと説明しています。

バーチャル・シンガポール(Virtual Singapore)

バーチャル・シンガポール(Virtual Singaporeは、国土全体を3Dモデル化し、建物や土木インフラなどの属性情報(材質、換気方式、日照時間など)を付与し、実際のシンガポールの状態や動き(リアルタイムなデータ)を各種センサーやカメラ画像などで取り込み、デジタルデータで再現した『ツイン・シンガポール』です。シンガポール国立研究財団(NRF)が主導し2018年の完成を目指しています。都市が時間とともにどのように発展・進化するのを3Dで視覚化し、産学官民が様々な目的に使えるようにすることを目指しています。
例えば、VRを使った都市計画、携帯電話の電波の伝搬解析、災害時の避難シミュレーション、スマホを使った商業施設の案内、認知症の高齢者の捜査などいろいろな活用が想定されています。
バーチャル・シンガポールには、Virtualize(仮想化)、Visualize(可視化)、Venturize(商業化)の3つのコンセプトがあり、V3と呼んでいるようです。

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http://www.2014.csdm-asia.net/IMG/pdf/Virtual_Singapour_Part_1.pdf より)

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