ソーシャルセンサー

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WorldRiskReport2016

bosai_002_R地球温暖化現象は、様々な異常気象を引き起こすとも言われています。東北や北海道に大きな被害をもたらした台風10号の今までにない進路や恐怖さえ感じる最近の尋常ではない雨の降り方などはその一つの表れかもしれません。統計上も日本における大雨の発生数が長期的に増加傾向にあり、特に、災害につながる可能性がある「日降水量100mm~200mm以上」の豪雨が増加しているといいます。

ところで、先日、国連大学から2016年版の「WorldRiskReport2016」が発表されました。地震、台風、洪水、干ばつ、海面上昇の5種類の災害で自然災害の脅威にさらされている国民の数、災害の影響を受けやすいスラムの居住者数や貧困層の割合、災害が起きても対処できる医師や病院の数、政府の汚職度合い、保険の加入率、公衆衛生への支出、森林管理の状況、識字率などの28項目の指標を分析したものです。

それによると日本は、国民が自然災害によって被害を受けるリスクが171各国中17番目に高くなっています。主な欧米の先進諸国は、アメリカ127位、イギリス131位、アイスランド166位、スウェーデン162位、スイス155位、フランス152位、ドイツ147位などとなっており、先進諸国の中では日本は極めてリスクが高い国といえます。日本は地震などの「自然災害に見舞われる可能性」だけなら世界で4位と一際リスクの高くなっていますが、インフラ整備や対処能力、適応能力などが評価されて脆弱性では順位では低くなり、総合して17位となっています。

国連大学によると、2015年の1年間に世界中で災害が346件発生し、ほぼ1億人が被災し、22,000人以上が死亡、665億ドルの経済的損失があったとのことです。

ソーシャルセンサー

日本においては、東日本大震災以降、地震や津波に限らず様々な自然災害に備える心構えや被害を最小限に減らす減災に基づく行動の重要性が広く浸透するとともに、IoT、人工知能、ビッグデータなどの最新のテクノロジーを活用した防災・減災の取組みも普及しつつあるようです。

また、これまでは防災の取組みと言えば、例えば土砂災害ならば、ワイヤセンサや地盤振動をとらえる振動センサのような「物理センサ」などで災害発生の前兆をとらえる技術開発の方に重きがあったように思います。最近は、SNSなどの個人や民間からの情報提供を「ソーシャルセンサー」と位置づけ、ユーザーによって感知された情報を防災に生かす取り組みが注目されています。

bosai_004_R(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/bousai/dai5/siryou7.pdf より)

ソーシャルセンサーはその性質上、物理センサによって得られた情報に比べ信頼性は劣りますが、災害を受けている地域がどのような切迫した状況になっているかを把握するツールとして活用できると期待されています。

bosai_003_R(http://www.nilim.go.jp/lab/scg/sns/sns.htm より)

とは言え、「必ずしも正確な情報が流通しているとは限らない」「場所の情報が含まれていない場合がある」「情報流通量が少ないことが想定される」「土砂災害は規模・形態が様々で、検知には自ずと限界がある」などの課題はあります。

ソーシャルセンサーの事例

〇 富士通研究所

富士通研究所は、過去の複数の災害で投稿されたつぶやきを分析し、「目撃・観察」、「伝聞」、「報道・アナウンス」などに分類し、AIの機械学習の手法によって伝聞やうわさに基づく不正確な情報を除くシステムを作りました。
災害の場所は、つぶやき中の地名だけでなく、同じ地名であっても方言などからその場所を特定するようです。今後は行政機関で活用される見通しとのことです。

〇 国土技術政策総合研究所

国土技術政策総合研究所と富士通研究所は、つぶやきとレーダーの雨量データなどを組み合わせて、避難勧告の判断を支援するシステムの研究を進めています。つぶやきから現場の切迫した住民の心理状態も把握でき、住民への避難勧告を判断する際の参考にできるとのことです。
また、国土技術政策総合研究所砂災害研究室では、豪雨時に何気なくつぶやかれる「Tweet」を分析することによって、これまで行政として把握することが難しかった「地鳴り」「土臭い」などの土砂災害の前兆現象をいち早く把握し、自治体等に提供するための技術開発を行っています。

〇 ヤフー

SNSではありませんが、ヤフーは、熊本地震時の人の動きのデータを分析し、政府や自治体が指定する避難所以外に人が集まっている場所を特定する技術を開発しています。これによって、行政が指定する避難所以外の緊急避難所を早期に特定し、支援物資の配送計画に役立てられるとのことです。
人口密度を表示する地図は、地図アプリ「ヤフー!地図」の混雑度を推定する機能を活用し、施設の混雑状況だけでなく、施設周辺の混雑度もヒートマップとして色で表現しています。
平常時の熊本県の人口密度の分布と、熊本地震が発生した以降の平均の人口密度の地図の差分から混雑度を色に分けて示すとともに混雑状況の推移をグラフ化することもできるようです。

さらに、「myThings」と「Yahoo!防災速報」と連携させることで、Yahoo!防災速報が地震情報、津波予報などの通知を受信すると、myThingsであらかじめ設定されたスキームを実行するということを可能にしました。例えば、「iRemocon」と組み合わせることで、「地震情報を受信したら、部屋の電気やテレビを自動でつける」「地震情報を受信したら、必要な情報などを家族にメールする」というスキームを事前に登録できとのことです。また、シャープの「BOCCO」や「ともだち家電」と組み合わせて、「津波予報を受信したら、BOCCOやともだち家電が発話して通知する」といったことにも対応するそうです。

スッポター制度

アメリカでは、ボランティアが気象情報を観測して報告する「スポッター」という制度があります。民間の人たちの投稿をもとにリアルタイム性の高い気象情報を集めています。「スポッター」はだれでもなれるわけではなく、消防士や警察官、などの専門家以外に、18歳以上で気象情報に関するトレーニングを受け、地域の気象台に登録されたボランティアとなっています。

スポッター制度を、日本でも導入しようという動きもあるようですが一足早く、ウェザーニュースがよく似た仕組みを導入しています。スマートフォンアプリで現在地の空の様子を写真に撮影して報告できる「ウェザーレポート」です。このような気象庁の情報、民間企業の情報、市民のリアルタイム性のある情報を組み合わせ防災につなげようという試みが日本でも起きてくるのではないかと予想されます。

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