ストレージクラスメモリー

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ストレージクラスメモリー

コンピューターに使われているメモリには、CPUのレジスターやキャッシュメモリーとして使われるSRAM、メインメモリとして用いられるDRAM、ストレージに利用されるNAND型フラッシュメモリ(※1)などがあります。NAND型フラッシュメモリはHDDより速いとはいえDRAMと比べるとアクセス速度に大きなギャップがあり、データ処理のボトルネックになっています。

そこでこのギャップを埋める高速な次世代メモリの開発が活発化しており、このような次世代メモリは「ストレージクラスメモリー(SCM)」と呼ばれています。

SCM(Storage Class Memories)を、メモリとストレージの両方の特徴を併せ持つ技術として、NAND 型フラッシュメモリより高速であり、低消費電力かつ長寿命で容量単価がDRAMと同等以下の不揮発性メモリとしてIBMが最初に提唱したようです。
SCMといってもいくつも種類があり、それぞれに特徴があってアクセス速度や容量にも差があります。

scm_001_Rhttps://www.rambus.com/blogs/mid-when-memory-and-storage-converge/ より)

(※1)NAND(ナンド)は、Not AND の略で、SDカード、USBメモリ、SSD としてパソコンのメイン記憶装置などに使われています。DRAMは、電子の状態を保持するために一定時間毎にリフレッシュを行う必要がありますが、このメモリではそうしたことが必要ないので不揮発性メモリと呼ばれています。1987年に東芝で開発されました。また、NAND型フラッシュメモリの記録方式には、SLC(Single Level Cell)、MLC(Multi Level Cell)、TLC(Triple Level Cell)があります。
NAND型フラッシュメモリのほかに NOR型フラッシュメモリという種類もあります。

SCMの種類

SCMにはMRAM:Magnetoresistive RAM)、抵抗変化型メモリ(ReRAM:Resistic RAM)、相変化メモリ(PRAM:Phase Change RAM/PCM:Phase Change Memory)、強誘電体メモリ(FeRAM:Ferrolectric RAM)、スピン注入型磁気メモリ(STT-MRAM:spin transfer torque-MRAM)、カーボンナノチューブメモリなどがあります。

scm_002_R(NEDO Ⅱ ストレージ・メモリ技術分野http://www.nedo.go.jp/content/100085068.pdf より)

それぞれ次のような特徴があります。

〇 MRAM(Magnetoresistive RAM)

記憶素子に磁性体を用いた不揮発性メモリで、高速アクセスで集積度が高く、書き換え耐性、高温(100℃)での動作が可能などの特徴があります。
TRM素子(トンネル磁気抵抗:Tunneling Magneto Resistance)を用いて読み出し、書き込みを行ういます。原子移動等がないため書換え回数は無限といわれています。この分野では日本が研究をリードしていましたが、大容量化の可能性が見えてきたことからアメリカや韓国でも国家プロジェクトとして開発に参入してきています。

〇 STT-MRAM

スピン注入磁化反転と呼ぶデータ書き換え技術を用いたMRAMです。MRAMにはその構造上メモリセルのシリコン面積が大きくなると問題がありますが、スピン注入型においては、メモリセルのシリコン面積が3分の1から4分の1と小さく微細化を進められる特徴があります。
MRAMが微細化が進むと書き換えに必要な電流が大きく膨れ上がるのに対し、STT-MRAMでは逆に、微細化するほど省電力になるという特徴もあります。

〇 ReRAM(Resistic RAM)

ReRAMは、金属酸化膜を金属電極で挟んだサンドイッチのような構造をしており、従来の一般的な不揮発性メモリに比べてシンプルな構造となっています。書き換えと読み出し以外は電力を必要としません。フラッシュメモリの1万倍での高速書き換えが可能といわれています。
RRAM は、電圧パルスの付加により抵抗値が大幅に変わるCMR ( Colossalmagnetoresistive)と呼ばれる材料を記憶素子に用いているそうです。

〇 PRAM(Phase Change RAM)/PCM(Phase Change Memory)

PRAMはPCMやPCRAM、OUM(Ovonic Unified Memory)とも呼ばれます。同一物質の結晶状態とアモルファス状態(※2)による抵抗変化を利用したもので、具体的にはDVD用材料と同じカルコゲナイト合金を使います。光学記録ディスクでの書き換えにはレーザ光による熱を用いますがPRAM ではジュール熱を利用します。カルコゲナイド合金は加熱と冷却によって結晶状態とアモルファス状態のどちらかで安定するという性質があり、結晶状態の低抵抗状態、アモルファス状態の高抵抗状態にデータに対応させています。
カルコゲナイド合金は、10nmまで微細化しても相変化の性質を失わないため、高密度化・大容量化がしやすいと言われています。また、構造がDRAMと似ているため、DRAMの製造ラインを使用が可能であり、材料のカルコゲナイトは光ディスクで使用しているため扱いが容易であるといった利点があるようです。

(※2)アモルファスとは、結晶構造を持たない物質の状態のことを言います。
固体では、原子が規則正しく並んだ結晶と呼ばれるものと、原子が不規則に配列したアモルファス(非晶質)と呼ばれるものの2種類があります。

〇 FeRAM

強誘電体の残留分極電荷を利用した不揮発性メモリです。構造がDRAM に似ており、DRAM の延長線上の技術からDRAMと同等の不揮発性メモリへの期待が高まった時期がありましたが、商業化はされているものの、キャパシタの品質のばらつきや劣化の問題などから本格的な普及に課題もあるようです。
読み書き速度や書き換え回数はDRAMと同等レベルですが、書き換え耐性が他の次世代メモリよりやや低いと言われています。
FeRAMには基本型とされる「1T1C型」や「Chaim FeRAM」「1T FeRAM」「6T4C FeRAM」「Matrix FeRAM」などがあります。

(※3)誘電体に電圧をかけても電流が流れないため誘導分極という電荷の偏りが生じます。一部の誘導体の中には、加える電圧をゼロにしても分極したままのものがあります。このような特殊な誘電体を強誘電体と呼ばれます

〇 カーボンナノチューブメモリ

2016年の8月に富士通セミコンダクターとアメリカのNanteroがカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube)を記憶材料とする次世代の不揮発性メモリの商品化に向けた共同開発を行い、2018年末までにこの不揮発性メモリを内蔵するSoCを商品化するという発表がありました。
カーボン・ナノチューブは、人の髪の毛の50,000分の1ほどの直径の円筒状の形をし、炭素結晶の並び方によって、金属性のものと半導体性のものがあり、シリコンに代わる半導体材料として期待されています。
不揮発性、大容量、低消費電力、高速な読み出し・書き込み、高速ランダムアクセス、書き換え可能回数の上限が大きい、熱耐性が強いといった特徴があります。

次世代メモリの市場規模

2017年1月に富士キメラ総研が発表した半導体デバイスの世界市場調査によると、次世代メモリーの2015年の市場規模は274億円で、NANDの3兆6660億円にに比べる非常に小さな規模となっています。しかし、前述のカーボンナノチューブメモリの商品化の発表や、パナソニックは2017年2月に次世代半導体メモリーReRAM(抵抗変化式メモリ)を2019年から量産するという発表もあったように、2020年には923億円と2015年に比べて3.4倍に拡大すると見ています。

MarketsandMarketが2015年1月に発表した調査では、次世代メモの世界市場は2014年以降、年平均成長率で38.28%の成長を続け、2020年に370億ドルに達すると予測しています。

scm_003_R(株式会社 富士キメラ総研Press Release http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/170117_17002.pdf より)

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