シリセン・トランジスタ

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シリセン製トランジスタ

Nature Nanotechnolgy誌3月号で、テキサス大学コックレル校のデジ・アキンワンデ(Deji Akinwande)教授の研究チームによって、Silicene製トランジスタが作成されたことが報告されました。

silicon_001シリセン(silicene)とはシリコン(ケイ素)(silicon)がハニカム格子状に結晶を組んだグラフェン状物質のことです。グラフェンとは、原子1個分の厚みしかないハニカム構造の炭素シートのことですが、元素周期表では炭素は14族元素だということはお分かりだと思います。

そこで、研究者たちは同じ14族元素であるケイ素(silicon)でも原子1個分の厚みしかない原子シートを作れるのではないかと考えました。そして、もしそれを使った電子素子をつくれれば、超高速コンピュータや究極の超小型コンピュータが実現できるのではと期待したわけです。

今回の発表は、性能的には初歩的な段階であり、素子の寿命も数分ということですので実用化にはまだまだ時間がかかりそうです。ですが、夢の実現に一歩近づいたことは確かなようです。

〇 バンドギャップ

半導体素子の構築にはバンドギャップが存在しなければなりません。バンドギャップとは電子が存在することのできない領域(禁制帯)のことです。導体にはバンドギャップがありません。代表的なものは鉄、銅、銀、金、アルミニウムなど金属系の物質です。電子が簡単に移動できるため、電気を通すことができます。逆に絶縁体はバンドギャップが大きく電子が移動できません。ですので電気が流れません。代表的な物質としては油、ガラス、ゴム、セラミックなどです。一方「半導体」はバンドギャップが小さく、「半導体」に不純物を混ぜることで電子や空孔の流れを制御することができます。半導体素子のオン・オフ、論理演算はこのバンドギャップの存在によって可能となっています。

実はグラフェンは半金属で、バンドギャップが存在しないのです。そのため、トランジスタに適さないとされていました。一方、シリセンはバンドギャップの導入が可能なのです。ということで、シリセンが注目されるようになったわけです。シリセンという名称が考えられたのは2007年ですから、わずか7年余りでシリセン製トランジスタができたというのは驚異的なことかもしれません。

〇 扱いにくいシリセン

夢のような物質であるシリセンですが、実は非常に面倒な物質でもあるのです。まず、作成に手間がかかるということです。

グラフェン(原子1個分の厚みしかない炭素シート)は非常に簡単に得ることができます。それは、グラファイト(黒鉛)の構造が、亀の甲状の層状物質で層毎の面内は、強い結合ですが層と層の間は、弱い結合(ファンデルワールス力)なため、層状にはがれるという性質のためです。ですので粘着テープを貼ってはがすという簡単な手順でグラフェンを得ることができます。しかし、ケイ素にはそうした構造がないため、作成が非常に複雑な工程が要求されるのです。

また、シリセンは空気中では非常に不安定だということです。仮にシリセンで作成したシートを基盤に写しトランジスタを作ろうとしても、そうしている間に(数分で)劣化してしまうのです。従っていかにシリセンを保護しながらデバイス加工まで持っていくかが大きな課題でもあるのです。

〇 シリセンの時代に向けて

夢の材料ですが、扱いの難しいシリセン。しかし着実に研究は進んでいます。

(1)北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科のアントワーヌ・フロランス助教、ライナー・フリードライン准教授、尾崎泰助准教授、高村由起子准教授らは、世界で初めて「シリセン(Silicene)」をシリコンウェハー上に作製し、その構造と電子状態との関係を解明することに成功しています。(国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学http://www.jaist.ac.jp/news/press/2012/post-322.html)

(2)東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の高橋隆教授、一杉太郎准教授、菅原克明助教は、豊田中央研究所の中野秀之主任研究員らの研究グループと共同で、グラフェンを越えると期待されている新材料シリセンの層間化合物CaSi2を合成し、その電子状態の解明に世界で初めて成功しました。その結果、シリセンが見かけ上の質量がゼロとなる電子状態を持つことが明らかとなりました。この成果は、超高速電子デバイスへの応用が期待されているシリセンの基盤電子状態の理解と、その材料設計および機能開拓に大きく貢献するものです。(東北大学http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2014/12/press20141222-03.html)

 

(執筆中)

 

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