誰でも参加できるIETF
IETF(The Internet Engineering Task Force)はインターネットで利用される技術の標準化を策定している組織ですが、誰でも参加できる極めてオープンなボランティア的な団体です。とは言っても、その影響力は大きく、インターネットの基本的な技術はIETFによって開発され、改良されて今日に至っています。実際の作業は、メーリングリスト上で行われ、策定された標準仕様は最終的にはRFC(Request For Comments)などとして発行されます。また、会議は年3回行われ、2015年11月には横浜でも開催されます。
IETFの始まりは1986年ですが、当初は研究者だけのこじんまりとしたものでした。その後民間ベンダーも加わり徐々に組織も大きくなったようです。事務局はバージニア州レストンにあり、RFC(Request For Comments)の発行などを行っています。現在はISOC(Internet Society)からの支援で運営されています。
ISOC(Internet Society)はISOC は下図のような組織形態になっています。IRTF(Internet Research Task Force)は、インターネットの全体のアーキテクチャや議論の方向性を決定するIAB(Internet Architecture Board)の下にあり、同列には、インターネットのプロトコル,アプリケーションなどの長期的課題を研究するIRTF(Internet Research Task Force)、アドレスやドメイン名の管理などをするICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)があります。
IETFには100以上のワーキンググループがあり、それらは次の8つのエリアに分類されています。エリアにはエリアディレクタがいて、各エリアのWG(Working Group)を統括しています。
General (gen, 統括的技術エリア)
Applications Area (app、アプリケーションエリア)
Internet Area (int、インターネット技術エリア)
Operations & Management Area (ops、運用管理技術エリア)
Routing Area (rtg、経路制御技術エリア)
Security Area (sec、セキュリティ技術エリア)
Transport Area (tsv、転送プロトコル技術エリア)
User Services Area (usv、ユーザーサービスエリア)
(通信ソサエティマガジン№24〔春号〕2013より)
RFCとは
先に仕様はRFC(Request For Comments)として発行と述べましたが、「Request For Comments」を日本語にすると「コメントを募集!」と言ったところでしょうか?当初はコメントを仰ぐ性格の文献としてスタートしていたようです。ですが、今は内容を徹底的に吟味していますので、当初の暫定的という性格はなくなっています。しかし、RFCという言葉はそのまま使われているようです。
RFCは「標準トラックRFC」と「非標準トラックRFC」に分かれており、標準トラックRFCはさらに標準化への提唱(Proposed Standard)、標準化への草稿(Draft Standard)、標準(Standard)の三つの種類に分類されます。また非標準トラックRFCは、情報(Informational)、実験(Experimental)、履歴(Historic)、現状( Best Current Practice)等に分類されます。RFCは、原則として作られた順に番号が付けられています。
RFCのリストの記述の見方
(インターネットはこうして創られている~IETFの仕組みhttp://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/ietf2009/20091028_324722.html より)
IETFとIoT
((株)GClue IoTの規格標準化動向とデバイスWebAPI 佐々木陽 より)
近年のIETF では、「センサネットワークのIP(Internet Protocol)化」、「IoT」、「スマートグリッド」などにおいて、新しい技術が次々と提案されています。IoT関連では6Lowpan(RFC6568)やRPL (IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks: RFC6550)などが2012年に標準化が完了しています。「新世代ネットワークおよび将来網の国際標準化動向」という情報通信研究機構ネットワーク研究本部西永望氏のPIF(超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会)講演の資料では、次のようにIETFのWGの活動を紹介しています。
〇 6lowpan WG: IPv6 over Low power WPAN(Internet area)
センサーノードなどの低電力/低能力なノードにおけるIPv6仕様
〇 nvo3 WG: Network Virtualization Overlays(Routing area)
10万以上のサーバー上で稼働する数百万VMから構成されるData Center Virtual Private Network (DCVPN)) solutionの提供
〇 pimWG: Protocol Independent Multicast(Routing area)
1対多/多対多通信を実現するmulticast経路制御プロトコル仕様
〇 alto WG: Application-Layer Traffic Optimization(Transport area)
P2Pをベースとした網における「better-than-random initial peer selection」によるservice discoveryやpath optimizationに対するsolution提供
(新世代ネットワークおよび将来網の国際標準化動向(PIF講演)情報通信研究機構ネットワーク研究本部 西永望より)