EC-GSM-IoT
EC-GSM-IoTはLPWA (Low Power Wide Area)のセルラー系の規格の一つです。3GPPが「NB-IoT(Narrow Band-IoT)」「eMTC(Enhanced Machine Type Communications)(「LTE-M」を3GPPではeMTCと呼んでいます)とともに2016年6月のRelease 13で仕様を定義したものです。ちなみにRelease 14は2017年7月となっています。
(欧州における移動通信システムの研究開発と標準化に関する動向 平成29年3月 国立研究開発法人 情報通信研究機構(欧州連携センター https://www.nict.go.jp/global/4otfsk000000osbq-att/a1489129305757.pdf より)
NB-IoTは固定通信向けで、eMTC(LTE-M)は移動通信(低・中速)向けです。そして、EC-GSM-IoTは、GSM/EDGEをIoT向けにしたものです。
GSMとEDGE
GSMは、Global System for Mobile Communicationsの頭文字をとったもので、ヨーロッパやアジアなど多くの国で使用されている携帯電話通信方式で、2Gの携帯電話において世界標準となっています。ETSI(European Telecommunications Standards Institute・欧州電機通信標準化協会)によって標準化されました。
EDGEは、Enhanced Data GSM Environmentの略で、GSM方式をベースにして開発されたGSMの後継に当たる通信規格です、GSMでは最大9.6kbpsのデータ通信でしたがEDGEでは最大473.6kbpsのパケット通信が可能となっています。いずれにしても、EC-GSM-IoTは少々古い技術をもとにしているとも言えそうです。日本ではGSMのサービスが提供されていませんので、EC-GSM-IoTもあまり話題にはならないようです。
EC-GSM-IoTと通信事業者
国立研究開発法人情報通信研究機構(欧州連携センター)が2017年3月に発表した「欧州における移動通信システムの研究開発と標準化に関する動向」によれば、下表のように移動通信事業者が採用しているLPWA向けの通信技術ではNB-IoTが一番多く、EC-GSM-IoTはフランスのオレンジのみとなっています。
(欧州における移動通信システムの研究開発と標準化に関する動向 平成29年3月 国立研究開発法人 情報通信研究機構(欧州連携センター https://www.nict.go.jp/global/4otfsk000000osbq-att/a1489129305757.pdf より)
本書では、オレンジがEC-GSM-IoT を採用する理由についえ、LTE網がまだ十分に展開されていないアフリカなどの地域で利用することを予定しているとしています。
EC-GSM-IoTの仕様
なお、NB-IoTやeMTCと比較した仕様は下図のようになっています。
(3GPP Standards for the Internet-of-Things http://www.3gpp.org/images/presentations/3GPP_Standards_for_IoT.pdf より)
周波数帯がGSM帯で、バンド幅はチャンネルあたり200KHz、変調方式はGSMK(Guassian filtered minimum shift keying)で、オプションで8PSK (Phase Shift Keying、位相偏移変調)となっています。
多重化方式はTDMAとFDMAの両方、通信方式はHD(Half-Duplex)とFDD(Frequency Division Duplex)、想定電池寿命は5Whの電池で10年となっています。
通信距離は、33dBmクラスの場合164dBで約15km、省電力機構はPSM(Power Saving Mode)とext. I-DRX となっています。その他、1つの基地局で最大5万台程度までデバイスを接続可能となています。