車載ネットワーク

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ECU(Electronic Control Unit)と車載ネットワーク

近年の自動車には、車の先進技術を支えるECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる電子制御ユニットが多数搭載されています。エンジン制御ECU、トランスミッション制御ECU、エアバック制御ECUなど様々な装置においてECUがなくてはならないものとなっています。

2017年5月の富士キメラ総研の発表では、自動車1台当たりのECU搭載数は、2016年で平均21.6個、2025年には30.4個になるとしています。エリア別にみると、日本とEUが他エリアより多く、日本だけに限ればその数はもっと多いようで、平均して50~60個とも言われています。高級車では100個を超えるとのことです。
また、その市場規模は、2016年が8兆1,435億円で19億7,095万個、2025年は13兆9,175億円、36億3,866万個と予測しています。(富士キメラ総研2017年5月17日 PRESS RELEASE第17042号参照)

車に電子制御が使われるようになったきっかけはマスキー法と呼ばれる自動車排気ガス規制法とも言われています。マスキー法は1970年に成立し、1970年の後半には電子制御のエンジンを搭載した車が登場しています。その後、電子制御の対象が広がり、それと共にECUが開発され、その数も増えてきたようです。

当初はポイントツーポイント配線システムで車載電子装置間の接続を行っていましたが、ECUが増加するにつれて、互いにデータを転送して分散・協調制御する必要が生じ、1983年ごろからドイツのBosch社で車載ネットワークの開発が始まりました。そして、1990年にメルセデスベンツ Sクラスに車載ネットワーク「CAN(Controller Area Network)」が初めて搭載されました。このときはエンジン、オートマチック、エアコンでの採用であったそうです。

車載ネットワークには、前述のCANのほかにもLIN(Local Interconnect Network)、FlexRay、MOST(Media Oriented System Transport)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)などいろいろあります。それらは、ドアや電動シート,インテリジェント・キー,エアコンなどボディ系システムにはCAN、ボディ系のサブバス及び一部制御系としてパワーウィンドウ、ミラー調整、ドアロックなどにはLIN、エンジンやパワーステアリング、ブレーキ、自動変速機などにはFlexRay、情報通信系システムにはMOSTという具合に、目的や特徴に応じて使われています。

CAN (Controller Area Network)

CANとはController Area Networkの略称です。1989年にBosch社により開発され、ISOで国際的に標準化されたシリアル通信プロトコルです。CAN はOSI参照モデルのうち、物理層とデータリンク層を規定しています。物理層の構成によって最大125K〜1Mbps 程度の速度で通信できます。CANは40m、125Kbpsなら最長500mまでの配線が可能です。また、2本の配線を使い差動式という信号伝達方式によってノイズに強く、信頼性や故障検出機能に優れていることから自動車内の通信だけでなく工場におけるオートメーション機器の制御にも使われています。

特徴としては、前述の比較的長距離の伝送が可能でノイズ耐性に強いという他に、低コスト、省配線、柔軟なノードの追加・削除、高い通信レート、優れたエラー検出機能とハンドリング機能、優先順位に応じたバス・アクセス(通信線へ情報を送信すること)などいろいろ挙げられます。

(株)ヴィッツの技術情報では、CANの特徴を通信速度の他に次の5つを挙げています。

・すべてのECUがマスターとして振る舞うマルチマスター方式を採用。
・CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance )方式による、優先順位に応じたバス・アクセス。
・ライン型のバス・トポロジを採用。
・差動電圧送信を利用して耐ノイズ性能を向上。
・エラー検出機能とエラー時のハンドリング機能を装備。
http://www.witz-inc.co.jp/technology/can/index.php より)

2008年のMONOistでは次の7つを挙げています。

・ライン型構造
・マルチマスター方式
・CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)
・IDを使用したメッセージ・アドレッシング
・耐ノイズ性に優れた物理層
・エラー検出メカニズム
・データの一貫性
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0806/16/news124.html より)

一般社団法人日本自動車研究所の「平成27年度戦略的イノベーション創造プログラム(自動走行システム):V2X等車外情報の活用にかかるセキュリティ技術の研究・開発プロジェクト」では、次の6つを挙げています。

・ライン型構造
・マルチマスター方式
ブロードキャスト方式
・拡張CSMA/CD
・IDを使用したメッセージ・アドレッシング
・不具合抑制
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2016fy/000459.pdf より)

CANは、仕様としては1Mbpsまで規定されていますが、車載環境下で使用されるのは500kbpsまでに留まっているようです。そこで、帯域不足の課題を解決するために2012年3月にBosch社が提唱したのがCAN FD(CAN with Flexible Data Rate)です。2015年12月にはISO標準仕様として公開されています。
CAN FDは転送可能なデータ長を最大8 バイトから64 バイトに拡張され、CANでは通信速度は最大1Mbpsでしたが、CAN FDでは最大8Mbpsとのことです。

LIN (Local Interconnect Network)

LINは1999年に「LINコンソーシアム(2000年に設立された欧州の標準化団体)」が公開した車載ネットワーク規格です。CANほどの高速性や多様性、安全性を求めない例えばドアミラー、パワーシート、エアコン、ドアロック、照明などいわゆるボディ制御で使用されています。CANと併用する使い方が一般的です。

LINはOSI 参照モデルのうち、物理層、データリンク層、トランスポート層、アプリケーション層の4 階層が規定されています。バージョン2.0以降ではトランスポートプロトコル(TP)および診断も規定されています。

CANより廉価で、データエラー検出、ノード障害検出にすぐれているものの、低速であり最大16ノードまでなどのデメリットもあります。
LINの特徴としては、(株)ヴィッツの技術情報では、通信プロトコルにUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)を採用している他に次の4つを挙げています。

・マスターが通信を制御するマスター/スレーブ方式を採用。
・シングル・マスター方式を採り、バス上に1つだけ存在するマスター・ノードが通信スケジュールを管理。そのため通信の衝突を起こさない。
・ライン型のバス・トポロジを採用。
・最大データ伝送速度は20kビット/秒
http://www.witz-inc.co.jp/technology/lin/index.php より)

FlexRay

ECUの増大とともに通信量も膨大になり、CANやLINの通信量・通信速度では対応できなくなり、より高速性と信頼性を実現するネットワークプロトコルが求められるようになりました。そこで、2000年に「FlexRayコンソーシアム」が組織され、BMW社Byteflightを参考にFlexRay仕様の策定が進められました。2002年にVersion 1.0がリリースされ、2006年に初めてBMW社が市販車でFlexRayを採用しました。

これまでケーブルや油圧などで制御していた機能をモータやアクチュエータなどに置き換えて電子制御によって実現する技術をX-by-wireと呼んでいます。Steering by WireやBrake by Wireなどがあります。こうした技術では、CANの1Mbpsでは間に合わず、FlexRayはこうした用途での使用も狙いとしてあったようです。

FlexRayは転送速度が10Mbps(現在は最大20Mbpsとのことです。)、複数のトポロジ対応した柔軟なネットワーク構成、ネットワークの完全二重化などの高信頼・冗長性、高精度のメッセージ遅延制御、Fixed TDMAとFlexible TDMAの2種類の通信方式に対応、バスガーディアン(通信コントローラが故障した場合などに、不正なデータ送信を検出し、伝送路を保護するために通信を遮断)による相互監視、優れた通信同期機能などの特徴があります。

can_001_R(車載LAN動向 2008 年09 月05 日 株式会社 ルネサステクノロジ マイコン統括本部 自動車事業部 自動車応用技術第三部 http://swest.toppers.jp/SWEST10/minutes/S3-c-material.pdf より)

CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)

CXPIはデンソーが開発した日本発の規格で、JSAE、SAEで規格化され、2019年のISOでの標準化を目指しています。通信プロトコルはOSI 参照モデルのうち、物理層、データリンク層、アプリケーション層の3 階層で構成されています。

CANやLINでは技術的コスト的に適用が難しい分野のHMI(Human Machine Interface)関連の多重通信化を目指しているようで、LINに比べて応答性が高く、ワイパーやライトなどの瞬時に応答が必要な領域での利用が期待されています。
(株)サニー技研の「CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)概要」には、CXPIの特徴を次のように挙げています。

・マスタノードが通信バスへクロックを提供する事によって、システム内の通信クロックを同期
・変調方式はPWMを採用し、ビットごとの同期合わせが可能
・衝突検出が可能
・イベント送信と定期送信を選択可能
・通信バスは1線
・通信速度は最大20Kbps
・データは通常フレームで12バイト、バーストフレームで255バイトまで送信可能
・エラー検知はCRCを採用
http://sunnygiken.jp/product/cxpi-tool/ より)

(執筆中)

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