ヘテロジニアス・ネットワーク

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ヘテロジニアス・ネットワーク

ヘテロジニアス(Heterogeneous)は、「異質の、異種の」という意味です。ちなみに反対語は「同質の、均質の」という意味のホモジニアス(homogeneous)です。
ヘテロジニアス・ネットワーク(heterogeneous network)は、デジタル大辞泉では次のように説明しています。

種類・規格・送受信範囲が異なる無線通信を組み合わせ、効率のよい通信環境を実現すること

また、「NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol. 23 No. 2」には、

電力の違うノードがオーバレイするネットワーク構成。従来の基地局に対し、より送信電力の小さいピコ基地局、フェムト基地局、Wi-Fiなど複数テクノロジーが混在、連携、統合化したネットワーク
(https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol23_2/vol23_2_000jp.pdf より)

と説明されています。
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会技術企画部会の「技術ナビゲーション2015」では、

・・・セルが異なる携帯電話の基地局を混在させるほか、無線LAN、WiMAXなどをまとめて扱えるよう通信資源の配分を効率よく行うことで、安定した高速大容量の通信を可能とする。(http://www.ciaj.or.jp/ciaj-wp/wp-content/uploads_sec/2016/08/tech_navigation2015.pdf より)

と記されています。

ヘテロジニアス・ネットワークと5G

このヘテロジニアス・ネットワーク(Heterogeneous Network)は、5Gを支える技術、5Gの技術的キーワードとも言われています。

5Gは、「超高速(eMBB: enhanced Mobile Broad Band)」「多数同時接続(mMTC: Massive Machine Type Communications)」「超低遅延・高信頼(URLLC: Ultra Reliable and Low Latency Communications)」を基本コンセプトとしています。

具体的には、2時間の映画を3秒でダウンロードできる最高伝送速度10Gbps (現行LTEの100倍)、ロボット等の精緻な操作をリアルタイム通信で実現可能な1ミリ秒程度の遅延(現行LTEの1/10)、自宅部屋内の約100個の端末・センサーがネットに接続可能な100万台/km²の接続機器数(現行LTEの100倍)です。こうした要件を支える主要技術の一つがヘテロジニアス・ネットワークというわけです。

5Gの場合、800MHz、2GHzなど既存の周波数帯に加え、6GHz以下の周波数帯やミリ波などの6GHz以上の周波数帯など、多種多様な周波数帯を活用し、NR(New Radio)、LTE、WiFiなど様々な無線アクセス技術で構成されています。まさに“異種混合の通信ネットワークです。

heterogeneous_001_R(情報通信審議会情報通信技術分科会新世代モバイル通信システム委員会報告概要(案)「新世代モバイル通信システムに関する技術的条件」のうち「LTE-Advanced等の高度化に関する技術的条件」新世代モバイル通信システム委員会 http://www.soumu.go.jp/main_content/000496315.pdf より)

ヘテロジニアス・ネットワークは5Gで初めて使用される技術というわけではありません。LTE-Advancedにおいても、広いエリアをカバーするマクロセルの無線トラフィックを、送信電力が小さく狭いエリアをカバーするピコセル、フェムトセルにオフロード(負荷を軽減)する仕組みとしてヘテロジニアス・ネットワークが使われています。ところでヘテロジニアス・ネットワークは、略してHetNetと表現することも多いようです。

ミリ波

5Gはミリ波に特化しているかのような誤解もあるようですが、前述のようにミリ波も含めて多種多様な周波数帯で構成されています。

ミリ波とはマイクロ波の中の30GHz以上の高い周波数帯を指し、1波長の長さが1~10mmの電波のことです。遠赤外線に近く、電波と光の境界領域とも言えます。従って、性質も光に近くなり、直進性が強くものに遮られやすいという特徴があります。空気中の水分による減衰も大きいのですが、伝送情報量が非常に多いという特徴を持っています。

このミリ波を5G用に使おうというわけですが、具体的にどの周波数帯を使うかはまだ決まっていません。国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は5G用候補周波数として、24.25GHzから86GHzまでの11帯域を検討しているようです。米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)は、28 GHz、37 GHz、39 GHz、64 GHz~71 GHzを5G用周波数として提案しています。韓国は平昌オリンピックで28GHz帯を活用した5Gのトライアルを計画しています。欧州は24.5 GHz~27.5 GHz、中国は43.5 GHz以下を検討しているようです。

heterogeneous_002_R(NICT NEWS http://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/0605/research/ より)

5G NR

5G NR (New Radio)は、5G独自の技術と言えますが、大まかな方針や技術はあるようですが正式なものではありません。標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)が2017年3月に発表したスケジュールでは、Non-standalone(NSA)5G NRの標準化完了を2018年3月、Standalone(SA)5G NRの標準化完了を2018年9月としています。

最大通信容量はノイズの多さの影響を受け、使用する周波数の帯域幅に比例するという「シャノンの定理」「通信容量のシャノン限界」といわれるものがあります。そこで5G では、LTE との互換性のない新たな無線技術が検討されています。具体的には、数百MHz以上の広周波数帯域への対応やミリ波などの高い周波数帯への対応、超低遅延を実現する無線フレーム構成等の新たな無線技術などです。

heterogeneous_003_R(情報通信審議会情報通信技術分科会新世代モバイル通信システム委員会報告概要(案)「新世代モバイル通信システムに関する技術的条件」のうち「LTE-Advanced等の高度化に関する技術的条件」新世代モバイル通信システム委員会 http://www.soumu.go.jp/main_content/000496315.pdf より)

NTTドコモの資料「3GPPにおける5G NR (New Radio)関連検討状況」では、もっと具体的に次のようなことを挙げています。

〇 高速化、大容量化に関連する主な技術
・広い周波数レンジへの対応、広域帯への対応、Scalable numerology、新たなチャンネル符号化、Massive MIMO
〇 低遅延化に関連する主な技術
・Short TTI(Transmission Time Interval)、Fast HARQ-ACK
〇 RAN-CNアーキテクチャ
〇 Multi-Connectivity
〇 フロントホールのオープンインタフェース化等

(3GPPにおける5G NR (New Radio)関連検討状況平成29年4月27日(株)NTTドコモ より)

 

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