インダストリー4.0とOPC-UA

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インダストリー4.0 実現戦略

opc_004_Rドイツの「インダストリー4・0」の推進団体「インダストリー4.0 プラットフォーム事務局」が、4月に技術文書「Umsetzungsstrategie Industrie 4.0 Ergebnisbericht der Plattform Industrie (インダストリー4.0 実現戦略 プラットフォーム・インダストリー4.0 調査報告)を発表しました。翻訳版は8月に日本貿易振興機構(ジェトロ)より出されています。

同事務局は連邦政府のIndustrie4.0構想を受けて、ITや電気、機械工業などの業界団体で立ち上げたものですが、その後、エネルギー省や教育研究省、労働組合、研究所などが加わって新たな「インダストリー4.0 プラットフォーム」事務局に再編されました。そして今回、インダストリー4.0 の実現のために「インダストリー4.0 実現戦略」をまとめました。およそ100ページ近い膨大なものです。

(「インダストリー4.0 実現戦略 プラットフォーム・インダストリー4.0 調査報告」2015 年 8 月日本貿易振興機構(ジェトロ)ベルリン事務所 海外調査部 欧州ロシア CIS 課 より)

インダストリー4.0は、「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)」に基づく、新たなモノづくりの姿を目指すものです。少々乱暴な言い方かもしれませんが、IoTによって生産の効率性あげるということに留まらず、製造現場をスマート工場とし、それらをネットワークでつなぐことで国全体が大きなスマート工場として機能させていくこととを目指していると言えるかもしれません。

そうしたインダストリー4.0を進展させていくための核心となる重要項目として「研究と革新」「リファレンスアーキテクチャ・標準化・規格化」「ネットワーキングされたシステムの安全性」「法的環境条件の整備」を報告書の中であげています。そして、それぞれの重要項目の詳細とロードマップも示しています。

〇 研究と革新の分野

・ 価値ネットワークを横断する水平統合

・ ライフサイクル全体を通じて終始一貫したエンジニアリング

・ 垂直統合とネットワーキングされた生産システム

・ 職場環境に配慮した新たな労働インフラ

・ 分野横断的技術の継続的開発

〇 リファレンスアーキテクチャ・標準化・規格化

・ 規格・標準を用いて、ソリューションに制約を与えることのないリファレンスアーキテクチャを作成し、それを確立する

〇 ネットワーキングされたシステムの安全性

・ 典型的な価値連鎖の例に即して、水平方向(顧客・納入業者)および垂直方向(企業内)のネットワーク内における確実なITセキュリティを保証するための理論的な考察

・ 反復プロセスによって具体化を行い、研究および標準化という側面も盛り込むことで、インダストリー4.0のリファレンスアーキテクチャ作成

〇 法的な環境条件

・ 新たな生産プロセスや水平方向のビジネスネットワークを法に準拠した形で構成

・ 契約法(自動化された価値連鎖における動的な契約締結)や企業データの保護、デジタル財の取り扱い、賠償責任の問題、個人関連情報の取り扱い

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(「インダストリー4.0 実現戦略 プラットフォーム・インダストリー4.0 調査報告」2015 年 8 月 日本貿易振興機構(ジェトロ)ベルリン事務所 海外調査部 欧州ロシア CIS 課 より)

OPC-UA

「研究と革新の分野」の中に「垂直統合とネットワーキングされた生産システム」とあります。従来、制御系ネットワークは基幹系ネットワークとつながることを前提として構築されているわけではありません。工場内でさえ工程ごとに様々な通信規格が混在するというのも珍しくありません。

そこでインダストリー4.0では、2015年4月のハノーバーメッセにおいて、工場内の制御ネットワークとIT系ネットワークの接続としてOPC-UAを推奨通信規格とするインダストリー4.0コンポーネントが定められました。

工場内で使用されるネットワークは、使用場所やネットワーク上を流れる情報などによってさまざまな階層的に分類されます。盤内、装置内などの機器・I/O 制御に用いられるセンサネットワーク、PLCと種々のフィールド機器(センサやアクチュエータ)の間で通信を行いリアルタイムで制御するフィールドネットワーク、主に複数のPLC間で同期をとったり、生産ラインを構築したりするための制御ネットワークなど、呼び名はまちまちですがこうした工場ネットワーク層があります。そして、EtherNet/IP、PROFINET、CC-Link IE、国内では、FL-netやMECHATROLINKなど様々な仕様の通信規格が使われています。インダストリー4.0の推奨するOPC-UAは、こうした規格とは違い、完全にオープンな標準規約で、特定のベンダーに依存しないことやセキュリティや通信の信頼性で評価されたようです。

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(http://www.kuramo.co.jp/catalog/fa/data_fa_11.pdf より)

インダストリー4.0では、リアルタイム性を必要としないところは既設のEthernetで十分とし、インダストリー4.0の普及を進めることも念頭に、乱立している制御系のネットワーク規格を無理に統一しないという方策をとっています。複数の異なる通信規格を図の③で物理的に単一のEthernetケーブルにカプセル化してまとめる仕組みとなっているためです。ただし、フィールドネットワークでは、従来の通信規格を使ってもよいのですが、OPC—UA対応の通信ができる口をもうける必要があるようです。

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(「インダストリー4.0 実現戦略 プラットフォーム・インダストリー4.0 調査報告」2015 年 8 月 日本貿易振興機構(ジェトロ)ベルリン事務所 海外調査部 欧州ロシア CIS 課 より)

OPC-UAは、もともとマイクロソフトが開発したプロセス制御向け規格のOLE/ COM/ DCOMから発展したものです。COM(Component Object Model)やDCOM(Distributed Component Object Model)を利用して制御システムを連携させる仕様「OPC(OLE for Process Control)」を基盤になっています。プラットフォームに依存せず、高速応答性に劣るもののセキュリティーレベルが高く、メーカーやOSを問わず、垂直方向・水平方向ともに柔軟に通信ができることが特徴と言えます。また、工場内だけでなく、MESやERPまで含めたシームレスな情報ネットワークを構築できるとのことです。

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(http://image.slidesharecdn.com/openstandards-keytosuccessforindustry4-141022035401-conversion-gate02/95/open-standards-key-to-success-for-industry-40-12-638.jpg?cb=1414109816 より)

OPC Foundationでは、どんな装置でも階層やメーカーによらずシームレスな通信できることが求められる「インダストリー4.0」において、このOPC-UAは必須の規格として普及活動に力を入れているようです。

 

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