デジタル連結世界

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デジタル連結世界

「デジタル連結世界」英語ではDigitally Connected Worldと言うようですが、その言葉からおおよその意味は理解できますが、あまり聞きなれない言葉かもしれません。ネット検索でも、ぴったりとヒットする数はあまりありません。
ところで、先月、伊勢志摩サミットが行われましたが、それに先立って、10のテーマでさまざまな閣僚会合が国内各地で行われ、香川県高松市では1995年以来21年ぶりに情報通信大臣会合が開催されました。会議にはG7各国の他に欧州委員会、オブザーバのITU、OECDなどが参加し議論が行われましたが、その中で「デジタル連結世界」という言葉が何度も使われています。

会合の成果として、3つの成果文書をまとめたことが挙げられていますが、その文書の一つは「デジタル連結世界憲章」です。「デジタル連結世界」とは、ICT インフラとサービスの世界的な普及によって、人とモノがいつでもどこでもグローバルかつシームレスに連結する世界であり、「デジタル連結世界憲章」はそうした世界の実現までの10年~15年を見据えた基本理念や行動指針をとりまとめたものと言えます。

記者会見の中で、成果文書は取り組みの第一歩に過ぎず、具体的な行動を推進し、世界をリードすることがG7の使命であるとして、日本の具体的な取組について述べています。一つはAIが社会経済に革命的な変化をもたらすものであるとして、人類の繁栄につなげていくために、AIの社会経済への影響や、その開発原則について議論をすすめていくこと。二つ目にサイバーセキュリティ対策のため、ネットワークの脆弱性を客観的に評価する「測定基準」を開発することなどを挙げています。

デジタル連結世界憲章

憲章には、「デジタル連結世界に向けた目的」として、「社会の繁栄」「イノベーションを通じた経済成長」「持続可能かつ包摂的な成長」が、「基本原則」として「ⅰ人権の促進と保護」「ⅱ情報の自由な流通の促進と保護」「ⅲマルチステークホルダー・アプローチの支持」「ⅳデジタル連結性及び包摂性の強化」が、「G7ICT 戦略」として「ⅰICTへのアクセス向上」「ⅱ情報の自由な流通、プライバシーの保護及びサイバーセキュリティを促進するための国際連携の強化」「ⅲイノベーションの促進」「iv. ICT の活用による地球規模課題及び機会への取組」「v. 包括的な国際連携、国際協力の強化」が挙げられ、4ページにわたって記されています。

この憲章に記された理念の実施に係るアクションプランにあたるのが「G7 情報通信大臣共同宣言」です。ここでは当面の行動戦略として、2020年までに新たに15億人をインターネットに接続することを目指すこと、世界規模での ICT インフラ、製品及びサービスの、質及び価格の手頃感の向上、IoT、人口知能(AI)などの新たなICTの登場を踏まえた、イノベーションの推進、ICTの活用による、健康医療、高齢化社会、女性活躍、防災など、地球規模課題への取組などについて述べられています。
(デジタル連結世界憲章 http://www.soumu.go.jp/main_content/000416965.pdf 参照)

(G7情報通信大臣共同宣言http://www.soumu.go.jp/main_content/000418726.pdf 参照)

日本の提案

総務省の報道資料によれば、この会合において、「AIネットワーク化が社会経済に与える影響の分析を国際機関も含めた連携を通じて実施し、AIの開発原則の議論へとつなげていくことを提案」したとのことです。大臣の記者会見においても「人間がAIを安心して安全に使いこなすことができるよう、AIの開発に当たり留意すべき事項をまとめた「AI開発原則」の考え方を示し、国際的議論を加速すべき事を提唱しました」とありました。
日本から提案した「AI開発原則」とは、現在「AIネットワーク化検討会議」で協議され、4月15日に中間報告として出された「AIネットワーク化が拓く智連社会(WINSウインズ)―第四次産業革命を超えた社会に向けて―」で示されている以下の内容です。

① 透明性の原則

AIネットワークシステムの動作の説明可能性及び検証可能性を確保すること

ア  アルゴリズムのブラックボックス化の回避
イ  AIの特性に応じた自己説明能力の付与
ウ  獲得表象の記号化及び解読のための技術の在り方の検討
エ  動作の記録及び確認のための技術の在り方の検討
オ  AIの特性に応じたオープン化の推進

② 利用者支援の原則

AIネットワークシステムが利用者を支援し、利用者に選択の機会を適切に提供するよう配慮すること

ア  個人の合理的選択を支援する機能(ナッジ等)の実装
イ  人間の認知能力の補完
ウ  ユニバーサル・デザインの確保

③ 制御可能性の原則

人間によるAIネットワークシステムの制御可能性を確保すること

ア  制御可能性に関するリスク評価
イ  制御可能性の設計及び実装
ウ  制御可能性マネジメント

④ セキュリティ確保の原則

AIネットワークシステムの頑健性及び信頼性を確保すること

ア  セキュリティに関するリスク評価
イ  セキュリティの設計及び実装(セキュリティ・バイ・デザイン)
ウ  セキュリティ・マネジメント(予防、検出、対応、システムの復旧、継続的な保守、レビュー及び監査等)

⑤ 安全保護の原則

AIネットワークシステムが利用者及び第三者の生命・身体の安全に危害を及ぼさないように配慮すること

ア  安全に関するリスク評価
イ  安全保護の設計及び実装(セーフティ・バイ・デザイン)
ウ  安全マネジメント(予防、検出、対応、継続的な保守、レビュー及び監査等)

⑥ プライバシー保護の原則

AIネットワークシステムが利用者及び第三者のプライバシーを侵害しないように配慮すること

ア  プライバシー影響評価
イ  プライバシー保護の設計及び実装(プライバシー・バイ・デザイン)
ウ  プライバシー・マネジメント(予防、検出、対応、継続的な保守、レビュー及び監査等)

⑦ 倫理の原則

AIネットワークシステムの研究開発において、人間の尊厳と個人の自律を尊重すること。

ア  AIへの機械倫理の実装の在り方の検討
イ  Brain Machine Interface (BMI) 等により人間の脳とAIの連携を図る際の、人間の尊厳と個人の自律の尊重の在り方の検討

⑧ アカウンタビリティの原則

AIネットワークシステムの研究開発者が利用者等関係するステークホルダーに対しアカウンタビリティを果たすこと。

ア  研究開発者による情報提供
イ  関係するステークホルダーとのコミュニケーション

(中間報告書 AIネットワーク化が拓く智連社会(WINS)―第四次産業革命を超えた社会に向けて― 平成28年4月15日 AIネットワーク化検討会議 より)

ちなみに、AIネットワーク化検討会議では、知識・情報(「知」)に着目した従来の社会像の次に目指すべきものとして、智慧(「智」)の連結に着目した「智連社会」(Wisdom Network Society: WINS)を構想するとしています。それは第4次産業革命を超えた社会像で、AIがAIネットワークシステムと共存し、智のネットワークを構築することにより、あらゆる分野におけるヒト・モノ・コト相互間の空間を越えた協調が進展し、もって創造的かつ活力ある発展が可能となる社会であるとしています。

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(中間報告書 AIネットワーク化が拓く智連社会(WINS)―第四次産業革命を超えた社会に向けて― 平成28年4月15日 AIネットワーク化検討会議 より)

 

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